【レシピ付き】足赤海老太白煮 天王寺蕪 昆布醤油炊 止々呂美柚子胡椒——「貴重」広里貴子さん作
ごちそうプロデューサーとして活躍する『貴重』の広里貴子さんが、今回テーマに掲げたのは「エビの加熱」。11~2月が旬の足赤エビを様々な温度帯で加熱し、色・食感を比較しました。その中から「一番生に近い」と選んだのは50℃で90分加熱したもの。「なにわの伝統野菜」の天王寺蕪と合わせ、先付に向く一品を仕立てました。蕪葉のソースの鮮やかな緑と、同じく「なにわの伝統野菜」である止々呂美(とどろみ)柚子・堺鷹の爪(タカノツメ)で仕込んだ黄色の柚子胡椒が目を引きます。
※大阪料理会 公式サイトhttps://osakaryourikai.com/
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広里貴子さん(大阪・大正|『貴重』)
大阪市出身。ごちそうプロデューサー。辻󠄀調グループ校卒業後、同校の日本料理技術講師を9年間務め、2006年にkicho(有限会社貴重)設立。NHK連続テレビ小説の料理指導や、商品開発、料理講習など広く活躍している。海里の環境保全に努める「Relationfish」取締役兼務。https://www.relationfish.com/
50℃90分加熱の足赤エビの生っぽい食感を生かし、天王寺蕪と合わせました
今回は、大阪料理会の皆さんとエビの加熱温度についてディスカッションできたらと思い、4段階の温度で加熱した足赤エビをお持ちしました。
殻ごと太白ゴマ油と共に真空し、スチームコンベクションオーブンで加熱しました。魚介は40℃からたんぱく質が変性し始めるそうですが、40℃ではエビは赤くならないし、食中毒の心配もあるので、50℃以上で実験しました。
52℃以上になると生っぽさが失われ、60℃以上でドリップが出ます。このドリップにはうま味成分のアミノ酸も含まれているので、エビの持ち味が少し弱まります。
殻ごと食べられたら面白いなと思って100℃も試してみましたが、まだ殻が硬くて…。ですが、これが一番色はキレイでした。110℃にすると、身がボロボロになってしまいます。
私としては、赤みも少し出て、生っぽさがギリギリ残っている50℃が一番いいと思いました。ただ、今回は上手くいったのですが、何度かやっている間にエビのアクが感じられることもありました。これが課題です。
今回は50℃加熱のレアな足赤エビを先付にしました。今回からのテーマ食材である大阪産野菜の中から天王寺蕪を選んで組み合わせたのが、こちらの一品です。『西野農園』の天王寺蕪は風味が力強いので、あまり醤油味を付けずに白煮にしました。晩秋の料理として仕立てたので、焼き色を付けて香ばしく仕上げています。
天王寺蕪は葉も美味しいので、太白ゴマ油と足赤エビのミソも加えてソースに。アーモンドスライスを忍ばせたのは、エビの風味と近いと言われるので。足赤エビとのつなぎ役ですね。
エビが生っぽい火入れなので、造り醤油のイメージで昆布の醤油炊きを添えました。天には、いつも仕込んでいる止々呂美柚子の柚子胡椒を。実生柚子なので香りが強いんです。種だけ取って丸ごとペーストにし、同じく「なにわの伝統野菜」の堺鷹の爪を合わせています。この唐辛子は通常の3倍の辛味があるので、鮮烈な風味に仕上がるんですよ。
50℃90分加熱の足赤エビに、会員は皆、興味津々。半生に茹でるのとはまた違う食感という感想が多く聞かれた。「殻を剥いてから油と共に真空した方がアクは出にくいのでは?」「60℃でもっと短時間で加熱した方がよかったかも」と様々な意見が出て、活発なディスカッションが行われた。天王寺蕪の葉のソース、止々呂美柚子胡椒が好評で、作り方を細かく尋ねる会員も。
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