大阪料理会

【レシピ付き】鯉の松笠焼 筍合わせ——『小嘉津』早川友博さん作

カリッとウロコの食感が心地よく、コクのあるタレが絡んだ松笠(まつかさ)焼は、鯉のクセをまったく感じさせない仕上がり。曽根崎の『小嘉津(こかつ)』店主・早川友博さんが、「鯉に対するハードルを下げたい!」と挑んだのは、2日熟成させて旨みを増した焼物。皮のぬめりを取り切り、熱した油をかけてウロコを立て、蒲焼きにすることで、独特の香りを極力抑えています。旬の筍を合わせた、野趣ある盛付けが目を引きます

※大阪料理会 公式サイトhttps://osakaryourikai.com/

聞き書き:中本由美子 / 撮影:福本 旭
早川友博さん(大阪・曽根崎|『小嘉津』店主)

1976年、岐阜県生まれ。ご本人曰く「超田舎育ち」。辻󠄀調理師専門学校を卒業後、大阪・北新地にて昭和27(1952)年に創業した『小嘉津』に入る。2011年、35歳で同店を引き継いで三代目となる。19年に現在の地に移転。華美に走らず、質実な日本料理の正道を行く、生真面目な職人。昔ながらの食材や古い料理にも関心が高い。

熟成させて旨みを深め、クセを抑えた鯉を、ウロコを立てた蒲焼きにしました

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昔は端午(たんご)の節句に鯉をよく食していたそうです。独特な香りがあるので、今では街中の料理屋さんで扱うことはぐっと減りましたよね。私は鯉が大好きなのですが、正直、まだうちの店でも、唐揚げにして飴煮にした「かりんとう」を前菜に添えるくらいで、他の料理でお出しすることはあまりないのですが…。

すっかり低利用魚になって、食べ手も料理人の方も鯉に対するハードルが上がってしまった。日本の大切な食文化の一つが無くなっていくのは忍びないな…と思うんです。それで、以前も大阪料理会で「鯉の味噌煮」をお出ししました。今回は第2弾で、焼物に挑戦しました。

鯉は天然ものより、養殖の方がお薦めしやすいですね。安定供給できますし、イメージも養殖の方がいいように思います。今回は、初めて鯉を召し上がる方にもお楽しみいただけるよう、独特のクセを極力抑えた蒲焼きにしています。

鯉と言えば「洗い」が定番で、鮮度がいいうちに調理するのが必須ですが、焼物にする場合は寝かせた方がいい。捌いてから2日ほど氷を当てて熟成させましたが、そうすると皮目のぬめりが簡単に取れるんです。鯉の臭みはこの皮目のぬめりにありますから、焼く前の切り身に鼻を近づけても、まったく臭わないですよ。

今回は1.2㎏の鯉を使用しました。鯉の骨は鱧のように複雑なので、骨切りしています。熱した油をかけてウロコを立てて松笠に見立て、脂を落とすように焼いてから、しっかりとタレをまとわせて焼き上げています。

内臓とアラは今回使いませんでしたが、「鯉こく」や飴煮にすると美味しいです。そろそろ私の店でも鯉のお料理をいろいろお出ししたいな、と思っています。

osa0026-1c鯉への熱量が伝わる早川さんの発表に、会員の多くが心を動かされた様子だった。「鯉の臭みをまったく感じない。素直に美味しいと思える焼物だった」という感想が大半で、畑 耕一郎会長は、「鯉のウロコがこんなに美味しいとは! この松笠焼なら、苦手な人が食べても納得。滋養強壮にいいとされる鯉をもっと見直さないといけない」と絶賛していた。

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