和食を科学する料・理・理・科

理想のカブの煮物とは?

2021.10.15
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連載:和食を科学する料・理・理・科

独特の繊維感があって、風味も繊細。秋口から炊合せなどの煮物には欠かせないカブですが、柔らかな食感に煮上げつつ、煮崩れさせず、中まで味を染み込ませるには…。「特に、飾り庖丁を入れて美しい姿を楽しんでいただく菊かぶらなどの仕立てでは、煮崩れは禁物。やわらかくなりすぎると形が保てないので、気を使いますね」と、芦屋『京料理 たか木』店主の高木一雄さん。そこで今回は、野菜の煮物のメカニズムを、農学博士の川崎寛也先生にご説明いただきながら、新たな方法を模索。下茹での必要は? その時の温度は? 浸して味を浸透させるか、はたまた、煮るのか。8つのアプローチで仕上げたカブの煮物を食べ比べ、検証した後、生まれた新作とは?

文:中本由美子 / 撮影:香西ジュン
高木一雄さん(兵庫・芦屋『京料理 たか木』店主)

1972年、大阪生まれ。料理教室を営む母の影響により、料理の道へ。大学在学中に老舗料亭『大和屋』で修業を始め、『京大和』でさらに研鑽。2005年、『京料理 たか木』をオープンする。バンコクやモルディブの日本料理店の監修や、海外や国内のシェフとのコラボ、商品開発なども積極的に手掛ける。イギリス留学の経験もあり、柔軟で、ワールドワイドな視点の持ち主。

川崎寛也さん(農学博士)

1975年、兵庫県生まれ。京都大学大学院農学研究科にて伏木亨教授に師事し、「おいしさの科学」を研究。「味の素㈱」食品研究所上席研究員であり、「日本料理アカデミー」理事。「関西食文化研究会」での基調講演でも活躍している。専門は、調理科学、食品科学など。

“冷ます作業が味を染み込ませる”は誤解!?

高木一雄(以下:高木)
僕ら和食の料理人は、野菜の煮物は「冷ましていく過程で味が入る」と教わっています。
でも、実は僕はカブの煮物を炊いていないんですね。下茹でして合わせだしに浸けているんです。
それで充分、芯まで味が染み込んでいくので…。
川崎寛也(以下:川崎)
煮物は、加熱によって野菜の細胞膜が壊れ、そこに調味料の味が入っていくのですが、これは高温であるほど促進されます。
冷ます過程でももちろん味は入りますが、「味を染み込ませるために、冷ますという作業が必要」ではない
んですね。料理人さんたちは、そこをよく誤解されているようで…。
高木:
というと、冷まさなくても味は染み込む? 冷ます必要はない、ということでしょうか。
川崎:
極端に言えば、そうです。
味を染み込ませるスピードは高温で煮た方が早い。ただ、ここで問題になるのは煮崩れです。
例えば、高温でカブを煮ていくと、味は芯まで染みていきますが、煮崩れしてしまうでしょう。
高木:
見た目だけでなく、食感も悪くなりますよね。
川崎:
そこで「冷ます」という過程が大事になってくるんです。
ある程度のところまで高温で煮る。その時点では芯まで味が染みていないけれど、冷ましていく過程でじわじわと味が入っていく。昔の料理人は経験からこの火入れを編み出したんですね。
とはいえ、味が入っていく力は、高温で煮ている時よりは、冷めていく過程の方が弱い。ですから「冷ますという作業自体が味を染み込ませる」わけではない、とご説明したんです。
高木:
今日は、カブの煮物でいろいろ実験したいと思っています。
僕の理想は、中まで味がしゅんでいて、とろけるような食感。見た目は煮崩れしていない状態です。
川崎:
高木さんが実践している、下茹でしてから、合わせだしに数時間浸けておく、というのはいい方法です。
それ以外に、食感をキープする方法として幾つか試してみたいことがあるので、比較実験してみましょう。
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