上野修三の古典

【レシピ付き】淡口ダレの蒸し煮造りと、河内晩柑の淡口蜜煮で、合鴨ロース煮を二様にアレンジ

大阪発祥の合鴨は、上野修三さんが修業時代から慣れ親しんだ素材の一つ。定番のロース煮を様々に工夫し続けてきました。その往年のレシピを、合鴨ガラのだしと淡口醤油でさらに色よく、品よくブラッシュアップしたのが今回の2品。香味野菜と蒸し煮にし、その蒸し汁にトマト風味を付けたタレで勧めるのは「蒸し煮造り」。フレンチの鴨のオレンジソースのアレンジ版は、河内晩柑の淡口蜜煮を合わせた「合鴨のざぼんソース」。御年90歳の最新作をご覧あれ!


上野修三(うえのしゅうぞう):昭和10年、大阪・河内長野生まれ。1965年、『㐂川(きがわ)』を創業。なにわの伝統野菜を発掘するなど、大阪らしい料理を追求し、浪速割烹のカタチをつくる。60歳で開店した『天神坂上野』は伝説の割烹として名を馳せた。2024年11月に「上野修三の仕事 うすくち醤油で仕立てる浪速割烹204品」(クリエテ関西)、2026年2月に「おぼえがき 大阪和食文化の歴史のはなし」(西日本出版)を上梓するなど、御年90歳ながら、なにわの食文化を綴る随筆家として活躍中。

聞き書き:中本由美子 / 撮影:宮本 進

目次


大阪で生まれた合鴨の定番といえば、ロース煮

合鴨は、野生の真鴨と家畜のアヒルを掛け合わせた交配種だす。かの太閤はん(豊臣秀吉)は琵琶湖の真鴨が好物やったそうで、安土桃山時代に大阪の農家に鴨の飼育を奨励したのが始まりと聞きますな。昭和40年頃までは、大阪が一大生産地やったんでっせ。

私の修業先の仕出し店『川喜』の真ん前にも鶏屋がおましてネ。看板には「かしわ」「ひる」とあった。昭和の頃、合鴨は大阪で「ひる」と呼ばれたんですな。

合鴨は主に抱き身(胸肉)を使いますな。定番はロース煮。今回ご紹介する2品は、そのアレンジ版だす。昔はウスターソースやケチャップを加えた天だしで炊いてましてん。それを鶏ガラだしベースにしたのが私流やったけど、合鴨だしの方が持ち味が深まると思い付いてネ。孫の上野翔平(『浪速割烹 㐂川』勤務)に任せてみたら、なかなか品のいいだしが取れましたな。まずは、そのレシピをご紹介しまひょ。

合鴨だしの引き方

合鴨のガラは脂身が少なくて、あっさり上品なだしが取れますな。洋風の味付けがよぉ合うから、香味野菜と共にコンソメ風に煮出してみました。香味野菜は皮や切れ端をうまいこと活用しておくれやす。今回は、ニンジンと玉ネギ、セロリでやりましたけどネ。キャベツの外葉やキノコの軸を加えてもよろしいな。

鴨は鶏と違って赤身の肉やからネ。ガラといえど、ちょっと血の匂いがありますねん。ボコボコ沸かすと臭みが出るから、ポコポコくらいの火加減で優しく1時間かけて煮出しておくれやす。

合鴨だしの引き方

【材料】

合鴨のガラ……2羽分(470g)
塩……適量
昆布……25g
水……1500ml
ニンジン(皮)……30g
玉ネギ(ヘタと切れ端)……70g
セロリ(葉と細い茎)……30g

【作り方】

<合鴨だしを取る>

合鴨のガラに塩をして一晩おく。
①を霜降りし、水洗いする。
鍋に②と昆布・水・香味野菜を入れて、ひと煮立ちさせる。ポコポコ沸く程度の火加減にし、1時間煮出して漉す。

上野修三さん作・合鴨の蒸し煮造り

合鴨の蒸し煮造り——淡口醤油+香味野菜のタレにトマト風味を

『川喜』に勤めていた頃に、「合鴨香菜蒸」という料理を考案しましたんや。レシピはこの連載でもご紹介してますねん。
→「合鴨香菜蒸」の記事はコチラ

濃口醤油と酒、みりんで味付けした鶏ガラだしに漬けて蒸し上げたものやけどネ。これを、合鴨だしと淡口醤油で、持ち味を深めて、ぐっと品よく仕立て直したんが今回の一品だす。常温で肉のお造りみたいに食べても美味しい。そこで名付けたのは「蒸し煮造り」。

合鴨は中心部をロゼ色に仕上げるのが肝要だす。私流は、まず香味野菜入りの淡口幽庵地に1時間漬けますねん。

合鴨の蒸し煮造りの浸し地

この淡口幽庵地ごと低温で5分ほど煮てから、蒸し器で6分加熱する。そのまま5時間くらい漬けて、味をしっかり含ませるって寸法だす。

漬け汁を煮詰めて造りのタレにするワケやけど、ここでもう一工夫。今でも『㐂川』の合鴨ロースは、焼きと蒸しの2種おましてネ。焼きの方は、調味にカレー粉やケチャップを使うんだす。古臭いって思いなさる? でもネ、この昭和テイストが懐かしゅうて受けるんでっせ(笑)。

というワケで、今回のタレにはケチャップの代わりにミニトマトを加えましてん。合鴨ガラのだしと淡口醤油は品のいい取合せやから、大正解でしたな。これで令和の味になったって、そりゃちょっと言い過ぎですかな(笑)。

合鴨の蒸し煮造りのタレ

合鴨の蒸し煮造りのレシピ

【材料(合鴨ロース1枚分)】

合鴨ロース……1枚(正味350g)
●淡口幽庵地
│合鴨だし……165ml
│淡口醤油……15ml
│酒……15ml
│みりん……15ml
│セロリ・玉ネギ・ニンジン(みじん切り)……各20g
淡口醤油・みりん……各適量
ミニトマト……6個
水溶き吉野葛……適量
セロリ・玉ネギ・ニンジン(千切り)……各適宜
ディル・和辛子・粒マスタード……各適量

【作り方】

<合鴨ロースを焼く>

合鴨ロースの分厚い脂を切り落とし、スジを掃除し、皮目に針打ちをする。
フライパンで皮目からじっくり焼く。脂が出たらこまめに拭き取る。皮目にしっかり焼き色が付いたら返し、表面を軽く焼き固める。
80℃くらいの湯に潜らせて脂抜きし、さらに吊るして余分な脂を徹底的に落とす。

合鴨の下処理

<合鴨ロースを香味野菜と蒸し焼きにする>

深バットに淡口幽庵地を入れ、③を1時間漬ける。
鍋に④を淡口幽庵地ごと移し、75℃で5分煮る。
⑤を煮汁ごと④の深バットに戻し、蒸気の上がった蒸し器で6分加熱して8割がた火を通す。時々上下を返しながら、そのまま煮汁に5時間漬けて味を含ませる。

合鴨の蒸し煮造りの手順

<仕上げる>

⑥の漬け汁を軽く煮詰め、淡口醤油・みりんで味を調える。湯むきしたミニトマトを入れて風味を移すように軽く煮詰め、水溶き吉野葛で少しとろみを付けてタレとする。
セロリ・玉ネギ・ニンジンを千切りにして合わせ、剣として器に盛る。⑥の合鴨ロースを平造りにして盛る。⑦のトマトを添え、ディルをあしらう。
和辛子と粒マスタードを同割で合わせて添え、⑦のタレをかける(または添える)。

上野修三さん作・合鴨のざぼんソース

合鴨のざぼんソース——河内晩柑の淡口蜜煮で初夏の味に

ざぼんと言うたら文旦のことやけどネ。皮下の白いワタのところに爽やかな芳香があって、砂糖漬けにして食べますわな。母の郷里が鹿児島やったこともあって、私ゃ、子供の頃、この砂糖漬けが大好物でしたんや。

ハナシは変わって、法善寺横丁で『㐂川』のカウンターに立っていた頃、フレンチのシェフと親しくさせてもろてましてネ。「鴨のオレンジソース」って古典的な料理がおますやろ。それを私流に合鴨でアレンジしてお出ししてましてん。

オレンジよりも、ざぼんの方が和食向きやし、面白いと、閃いたのが今回の一品。とはいえ、文旦はもう時季外れや。そこで、晩生(おくて)種の河内晩柑に目を付け、調べてみたら別名は「夏文旦」。ほなら、ざぼんソースと謳っても間違いではおまへんやろ。

河内晩柑の表面の皮だけを薄くむいてネ。その下の分厚いワタを棒切りにして、蜜煮にしますねん。そこに淡口醤油をぽとっと入れるのが今回のミソ。色を付けずに、持ち味をぐっと深めてくれるんでっせ。果肉を煮上がりに加えると、爽やかですな。

河内晩柑の淡口蜜煮の手順

合鴨ロースの火入れは「合鴨の蒸し煮造り」と同じ。酒を白ワインに変えてますけどネ。蒸し煮にしてから5時間ほど漬け置き、その漬け汁ごと合鴨ロースを温めて、そぎ切りに。残った汁にざぼんの淡口蜜煮を合わせ、とろっとかけたら完成だす。

合鴨のざぼんソースのレシピ

【材料(合鴨ロース1枚分)】

合鴨ロース……1枚(正味350g)
●河内晩柑の淡口蜜煮(作りやすい量)
│河内晩柑の皮……150g
│水……240ml
│砂糖……80g
│淡口醤油……12ml
│河内晩柑の果肉……60g
●淡口幽庵地
│合鴨だし……165ml
│白ワイン……15ml
│淡口醤油……15ml
│みりん……15ml
塩・淡口醤油・水溶き吉野葛……各適量
アスパラガス・オランダガラシ……各適量

【作り方】

<河内晩柑の淡口蜜煮を作る>

河内晩柑の表面の皮だけを薄くむく。尻側に十字の切り込みを入れて分厚い皮を外す。
①の分厚い皮を熱湯に入れ、半透明になるまで茹でる。
②をマッチ棒より少し太めの棒切りにし、流水に5時間さらして苦味を抜く。
③に水・砂糖を合わせて30分ほど煮る。淡口醤油を加えて10分煮て火を止め、河内晩柑の果肉を合わせ、2時間ほどおいて味をなじませる。

ざぼん淡口蜜煮

<合鴨ロースを蒸し煮にする>

「合鴨の蒸し煮造り」手順①~③の要領で下処理した合鴨ロースを、淡口幽庵地に1時間漬ける。
⑤を淡口幽庵地ごと鍋に入れ、75℃で5分煮る。
⑥を煮汁ごと深バットに移し、蒸気の上がった蒸し器で6分煮る。時々上下を返しながら、そのまま煮汁に5時間漬けて味を含ませる。

合鴨の蒸し煮

<仕上げる>

アスパラガスを塩茹でし、3等分に切る。
⑦を漬け汁ごと鍋に移し、沸かさないように温めてから合鴨ロースを引き上げる。
⑨の煮汁に河内晩柑の淡口蜜煮200gを加え、淡口醤油で味を調える。ひと煮立ちさせて火を止め、水溶き吉野葛で軽くとろみを付ける。

合鴨ざぼんソース手順

⑨の合鴨ロースをそぎ切りにし、器に重ねて盛る。⑧とオランダガラシを添え、⑩をかける。

ヒガシマル醤油の超特選丸大豆うすくち吟旬芳醇、特選丸大豆うすくちしょうゆ超特選丸大豆うすくち吟旬芳醇(左)
国産原料を100%使用。丸大豆しょうゆと米糀の二段熟成で、まろやかな味わいに。400ml。
特選丸大豆うすくちしょうゆ(右)
国産原料を100%使用。淡く上品な色合いと、おだやかな香りで素材を生かします。500ml。

■問合せ:ヒガシマル醤油㈱ お客様相談室 ☏0791-63-4635(受付時間9:00~17:00、土・日曜・祝日・年末年始・夏期休暇を除く)www.higashimaru.co.jp

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