日本料理のことば

【レシピ付き】鶏肉と海老の酢の物 氷室仕立て

冬の氷を蓄え、夏に涼を届けた「氷室」。その情景を、「辻󠄀調理師専門学校」の大引伸昭先生が一皿に表現しました。冷製料理では香りが立ちにくいカツオだしに代わり、味の軸に据えたのは鶏だし。上品な旨みと厚みのある味わいを生かしながら、多彩な素材を一体感のある料理へとまとめ上げています。さらに、時間の経過とともに変化する味わいを見越した構成も見事。初夏の蒸し暑さを忘れさせる、涼やかな一品です。

聞き書き:阪口 香 / 料理制作:「辻󠄀調理師専門学校」大引伸昭 / 撮影:東谷幸一 / 協力:辻󠄀調理師専門学校

目次


鶏だしを軸に仕立てた「氷室」の一皿

「氷室」をテーマにした先付です。冬にできた氷を夏まで蓄え、涼を届けた情景を表現しました。

冷製の料理でカツオだしを使うと香りが立ちにくく、その持ち味を十分に生かしきれません。そこで着目したのが鶏だしです。鶏にもカツオ節と同様にイノシン酸が豊富に含まれており、昆布だしのグルタミン酸と組み合わせることで旨みの相乗効果が働きます。さらに鶏だしは上品かつ厚みのある風味で、冷製料理のベースとして適していると考えました。

この料理では、その鶏だしを味の軸に据えています。鶏だしで具材を地漬けにし、黄身酢にも鶏節を加えて旨みを補強。いわば“追いガツオ”ならぬ“追い鶏”です。さらに、ゼリーの地や、かき氷にも鶏だしを用い、料理全体に一体感を持たせました。

具材は、氷室の氷から切り出した氷柱をイメージして長方形に統一しています。低温調理でしっとりと仕上げた鶏ムネ肉、弾力のある車エビ、アスパラガスやトウモロコシ、コリコリとした岩茸など、食感や彩りの異なる素材を取り合わせました。

器には、底から黄身酢、具材とゼリー、かき氷の順に重ねています。口へ運ぶと、まず鶏だしのかき氷の冷たさとシャリシャリとした食感が清涼感を演出。食べ進めるうちにかき氷が溶けて黄身酢と混ざり合い、味わいは少しずつ変化していきます。酢をやや強めに利かせたゼリーはアクセントに、また、かき氷はしっかりと調味しているため、溶けても最後まで味の輪郭がぼやけません。

氷柱に見立てた具材と、少しずつ溶けゆくかき氷。その変化を目で、舌で楽しみながら味わっていただければと思います。

▼「氷室」の言葉のはなしはコチラ

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