里芋・小芋(子芋)のレシピ7選|煮物、衣被、揚げ物などプロの料理
秋から冬に旬を迎える里芋。中でも親芋のまわりにできる小芋(子芋)は、ねっとりとした食感と風味を生かし、煮物や揚げ物など、さまざまな日本料理に仕立てられます。WATOBIではこれまで、料理人による里芋・小芋のレシピを数多く紹介してきました。今回はその中から、定番の煮転がしや衣被(きぬかつぎ)をはじめ、白煮(はくに)、ポテトサラダ、揚げ団子など7品を厳選。小芋を色白に煮上げるコツや、持ち味を生かす煮方、揚げることでコクを加えるなど、プロならではの技と発想をご紹介します。2026年9月25日(旧暦八月十五夜)は「芋名月」とも呼ばれ、里芋を供える習わしがあります。秋の献立に、ぜひ取り入れてみてください。
里芋と小芋(子芋)の違いとは?
「里芋」と「小芋(子芋)」は別の種類の芋ではありません。里芋は、地中にできる親芋を中心に、そのまわりに子芋、さらに子芋から孫芋が育っていきます。この親芋のまわりにできる小さな芋が「子芋」で、「小芋」とも書かれます。
品種によって、親芋を食べるもの、子芋や孫芋を食べるもの、どちらも食べるものがあり、一般に「里芋」として流通しているものの多くは子芋や孫芋です。日本料理では、小ぶりで形の整ったものを煮物や衣被などに使うことが多いです。
里芋・小芋(子芋)のレシピ7選
煮る、蒸す、揚げるなど、調理法によってさまざまな表情を見せる里芋。ここからは、料理人ならではの技と発想が光る7品をご紹介します。
里芋の持ち味を生かした「石川早生と占地のころ煮」——大阪『日本料理 雲鶴』
撮影/福本 旭
里芋の定番料理といえば、煮物や煮転がし。大阪・東天満『日本料理 雲鶴』の島村雅晴さんが考えたのは、「料理屋の煮転がしとは何か」を突き詰めた一品です。
使うのは、大阪の伝統野菜である石川早生(いしかわわせ)。一晩陰干しして少ししんなりさせてから、布巾でこするように皮をむき、カツオ昆布だしで約30分下煮します。そこへ調味料を加え、さらに約20分。煮汁が1/3量くらいになったら完成です。
一般的な含め煮とは異なり、ポイントは煮汁を子芋の中まで染み込ませすぎないこと。口に入れた瞬間は、表面にまとわせた甘辛い煮汁をしっかりと感じ、噛み進めると中から子芋本来の風味が広がります。
「煮物=中まで味を含ませる」と考えがちですが、素材そのものの味を残すために、あえて表面に味をとどめる。料理屋ならではの発想が光る煮転がしです。
同じ煮汁を煮詰めて大黒シメジに絡ませ、舌で潰せるほど柔らかく炊いた大豆と盛り合わせれば、秋の収穫を思わせる炊合せになります。
▼「石川早生と占地のころ煮」の材料・詳しい作り方を見る
色白に煮上げる「小芋の白煮」と「子芋海老あんかけ」——大阪『さか本』
撮影/福本 旭
北新地の割烹『さか本』の元大将・坂本靖彦さんは、色が白く、繊細な味わいの石川小芋の持ち味を生かすため、醤油色を極力付けず「白煮(はくに)」に仕立てます。
小芋は八方むきにし、まず米の研ぎ汁で下茹で。ぬめりを取り除いてから、カツオ昆布だし、塩、みりんで約45分、とろ火でじっくり煮ます。
ポイントは、淡口醤油を最初から加えないこと。煮上がりの直前にほんの少し落とすことで、醤油の風味を加えながら、小芋の白さを保ちます。また、醤油に頼らず深い味を付けるため、煮汁をひと煮立ちさせたところで追いガツオをするのもポイント。煮上げた後は、そのまま数時間置いて味を含ませます。
美しく煮上げるため、竹串は盛り付けで下になる底側から刺すこと。煮崩れを防ぐため、落とし蓋も木製ではなく紙を使います。こうした細かな仕事の積み重ねが、料理屋らしい端正な白煮につながります。
この白煮は、そのまま食べるだけでなくアレンジも自在。片栗粉を付けて揚げだしにしたり、煮魚に添えたりすることもできます。
中でも『さか本』で人気だったのが「小芋海老あんかけ」です。
白煮にした小芋に片栗粉を付け、180℃の油で揚げて香ばしさをプラス。活けの車エビ、銀杏、百合根、キクラゲを吸い地でさっと煮て、吉野葛でとろみを付けたあんをかけます。
ここでも大切なのは、小芋の白さを生かすこと。あんも淡口醤油を控え、塩を主体に調味します。白く上品な小芋と、揚げた衣の香ばしさ、車エビの旨みが一体となった、割烹らしい一品です。
▼「小芋の白煮」の材料・詳しい作り方を見る
▼「小芋海老あんかけ」の材料・詳しい作り方を見る
3種の酒肴に仕立てた「変わり衣被」——大阪「辻󠄀調理師専門学校」
撮影/東谷幸一
小さな子芋が手に入ったら、ぜひ試したいのが「衣被(きぬかつぎ)」です。 衣被とは、小さな里芋を皮付きのまま蒸したり茹でたりして、塩や醤油などを付けて食べる料理。特に、収穫期に入って間もない小さな子芋に向いています。
基本の作り方は至ってシンプル。直径3.5cmほどの小さな子芋の底を少し切り落とし、蒸気の上がった蒸し器で強火で約20分蒸し、塩を振ります。
「辻󠄀調理師専門学校」の大引伸昭先生が提案した「変わり衣被」では、この素朴な料理を酒肴へとアレンジ。
合挽き肉、舞茸、ショウガを炒め、赤だし用味噌と白味噌を合わせた「肉きのこ味噌」、酒盗を酒で煮て卵黄と合わせた「煎り酒盗」、ラッキョウの甘酢漬けとマヨネーズに木の芽やスダチを利かせた「和風タルタル」の3種類をのせます。
肉きのこ味噌にはケシの実、煎り酒盗には刻んだバターを添えて。素朴な衣被が、一転して現代的な酒肴になります。
▼「変わり衣被」の材料・詳しい作り方を見る
煮て、揚げた里芋で作る「里芋とエビのポテトサラダ」——大阪『食堂 燈』
撮影/福本 旭
ジャガイモではなく、里芋で作るポテトサラダです。
大阪・北新地『食堂 燈』の南本文正さんは、里芋をあらかじめ八方だしで煮含め、注文が入ってから揚げることで、料理屋らしい一品に仕立てます。
まず里芋を下茹でし、カツオ昆布だし、酒、みりん、薄口醤油で15分ほど煮て、そのまま冷まして味を含ませます。
提供直前に大小に切り分けて片栗粉を付け、エビと共に油へ。大きく切った里芋は揚げたてをマッシュし、摺りたてのワサビとクレソンを加えて。そこへ小さく切った里芋とエビを合わせ、塩と薄口醤油をほんの少し加えます。
器に盛って穂ジソをたっぷり添えれば、温かく、爽やかな香りのある「料理屋のポテサラ」の完成。八方だしを含んだ里芋のねちっとした食感、揚げ油のコク、エビの甘み。そこにワサビとクレソンの青々しい香りが、爽やかな印象をもたらします。
▼「里芋とエビのポテトサラダ」の材料・詳しい作り方を見る
ゴボウのすり流しに揚げた里芋を添えた「大地の恵みのごぼうと里芋」——東京『日本料理 若林』
撮影/土居麻紀子
東京・青山『日本料理 若林』の若林浩次さんが秋冬の先付に仕立てたのは、ゴボウの濃厚なすり流しと、揚げた里芋を組み合わせた温かな一品です。
里芋は皮をむいて下茹でし、ぬめりを取ってから、カツオ昆布だし、薄口醤油、みりんで約15分炊き、そのまま煮汁に漬けておきます。提供直前に片栗粉を付けて揚げることで、表面はカリッと香ばしく、中はほっくりとした食感に。
合わせるすり流しにも、しっかり工夫が。玉ネギ、ニンジン、セロリを太白ゴマ油で炒め、薄切りのゴボウを加えます。水を加えて煮詰め、再び水を足すという工程を繰り返し、野菜の旨みをゴボウに戻すように加熱してからミキサーへ。
さらに、焼いた鯛の頭をカツオ昆布だしに加えて取った「鯛だし」と合わせることで、ゴボウの力強い香りに深みを加えます。
濃厚でなめらかなゴボウのすり流しに、香ばしく揚げた里芋。モロヘイヤの緑と黒七味を添えた、寒くなる時季にうれしい一品です。
▼「大地の恵みのごぼうと里芋」の材料・詳しい作り方を見る
中からウニが現れる「雲丹入り子芋のとろろ被け」——『㐂川』創業者・上野修三氏
撮影/東谷幸一
大阪の名料理人、『㐂川』創業者・上野修三氏が提案するのは、子芋のねっとりとした質感を余すところなく生かした一品です。
石川早生などの小芋は、早採りならではの初々しい風味があり、加熱すると柔らかく、滑らかな舌触りになります。上野氏が大切にするのは、皮と身の間にある粘り気。六方や八方に厚く皮をむくのではなく、布巾で表面をしごくようにして皮を取ります。
米の研ぎ汁で下茹でした後、カツオ昆布だしに塩、淡口醤油、みりん、酒を合わせた淡口八方地で約40分煮ます。そして、ここからが料理屋らしい遊び心。煮上げた子芋の底をくり抜き、ウニを詰めます。くり抜いた子芋の一部は輪切りにして蓋に。残りは裏漉ししてすり鉢ですり、山芋のとろろを加えます。子芋と山芋とろろの割合は、およそ3:2。昆布だしで啜れる程度までのばし、淡口醤油と塩で味を調えます。
器にウニを忍ばせた子芋を盛り、その上から子芋のとろろをたっぷりと。一見すると、子芋にとろろをかけた素朴な料理。ところが箸を入れると、中からウニが現れます。
素材の持ち味を生かしながら、食べ手を驚かせる。浪速割烹らしい遊び心が詰まった子芋料理です。
▼「雲丹入り子芋のとろろ被け」の材料・詳しい作り方を見る
月見にちなんだ「子芋と海老の枝豆団子」——大阪『浪速割烹 㐂川』
撮影/福本 旭
大阪『浪速割烹 㐂川』の上野 修さんが、月見をテーマに仕立てた4色の揚げ団子。椎茸やミョウガ、おのみを加えた鶏団子、干し帆立の旨みを利かせた帆立とトウモロコシの団子、栗と銀杏の団子、そして子芋と海老の枝豆団子を盛り合わせます。
子芋の団子は、十五夜が「芋名月」、十三夜が「豆名月・栗名月」と呼ばれることから着想。塩蒸しした子芋を芯にして枝豆の生地で包み、小エビを所々にあしらって、秋に咲く萩に見立てています。4色を美しく見せるため、鶏団子以外は片栗粉をまとわせ、150℃で色を付けずにじっくりと揚げるのもポイントです。
4種の団子をまとめるのが、鮒ずしの飯を利かせたジャガイモのピュレ。ジャガイモは油でコンフィにして持ち味を閉じ込め、鮒ずしの飯を加えて、発酵由来の風味と酸味をアクセントに。昆布だしや淡口醤油、みりんで味を調え、大阪菊菜のピュレで鮮やかな緑色に仕上げます。芋や豆、栗など秋の実りを盛り込み、月見の風情を料理屋らしい遊び心で表現した一皿です。
▼「子芋と海老の枝豆団子」の材料・詳しい作り方を見る
里芋は、ただ柔らかく煮含めるだけでも十分においしい食材です。一方で、白く端正に煮る、あえて味を染み込ませない、揚げて食感を加える、とろろにする、別の食材を中に忍ばせるなど、料理人の手にかかると、その持ち味はさまざまな形で引き出されます。
定番の煮物から秋の献立、酒肴まで。里芋・小芋(子芋)の料理を考える際に、7人の料理人の技と発想をぜひ役立ててみてください。
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