大阪『本湖月』うつわ十二カ月

豪華絢爛、一月を彩る美術品級の名器と料理

お正月から始まる一月の器は、一年の中で最も華やかなものが使われます。いわれのある縁起物を用い、普段以上に美しさ、お祝いの趣きを演出。『本湖月』では、美術品級の名器を揃え、新年を寿ぐもてなしでお客様を迎えます。ご主人、穴見秀生さんに料理人として、数寄者として、新春の器への想いを語っていただきました。

文:西村晶子 / 撮影:竹中稔彦

先付——ゆずり葉、根つきの松の器で、幸多き一年を願う

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お正月の器は、見た目の美しさだけでなく、長寿や幸運を願って縁起をかつぐものが数多くあります。このゆずり葉の器もその一つです。子孫繁栄を表した縁起物で、新芽が出てくるまで古い葉が落ちないという特徴から、親から子へ受け継ぐこと、家が代々続くことを願うものとされています。

こちらは樂 十三代・惺入(せいにゅう)の作品で、器の姿、緑の色が素晴らしく、手持ちのものの中で最も好きな器の一つですね。この器は店の火事の時にすべて失ってしまったのですが、どうしても欲しくて同じものを10客探してもらい、手に入れたもの。焼け跡から一客だけ丸焦げになったものを見つけ、それは今も大切に手元に置いています。

ゆずり葉皿は他に永楽さんのものも持っていて、こちらの方がひとまわり大きくて使い勝手はいいサイズなんです。どちらも使っていますが、このゆずり葉皿はトップオブザトップですね。品がよくて、高貴で、器としてこれ以上のものはなかなかないと思います。

土器(かわらけ)に根引きの松を描いた引き盃もお正月の時だけに使うものです。かわらけは神事の御神酒(おみき)に使われる器で、根引きの松はお正月に歳神様をお迎えする依代(よりしろ)として飾られるもの。根がついていることから、地に足がつき、成長するようにという願いが込められています。この器は『𠮷兆』さんがお持ちだったもので、白井半七の作です。
折敷もお正月ですから、独楽(こま)盆に。代ははっきりしませんが、村瀬治兵衛の古いもので、抑えた色合いが器と調和がとれ、気に入ってます。

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