【レシピ付き】聖護院かぶ2品——扇面型に美しく仕立てた炊合せ&旨み・甘みを深めたかぶら蒸し
厳しい冷えに耐えながら大きくなり、実が締まって、じっくり甘みが増す聖護院(しょうごいん)かぶ。京都の名料亭『瓢亭』では、すりおろして使ったり、切り分けて炊いたりと様々な料理に使われます。今回教えていただいたのは、定番の「炊合せ」と「かぶら蒸し」の2品。独特の甘みや持ち味をいかにデザインしているか、伝統の料理をどのように工夫しているか、15代当主・髙橋義弘さんに解説していただきました。
髙橋義弘:創業450年を超える老舗料亭『瓢亭』の15代目当主。1974年、14代目髙橋英一氏の長男として京都に生まれる。東京の大学を卒業後、金沢の日本料理店『つる幸』で修業を積み、1999年帰洛。海外のシェフたちとのコラボレーションなど国内外を問わず、京都の懐石料理を伝える活動に尽力。2015年、15代目に就任し、2018年に東京店を出店。老舗の味を守りながら、時代に即した現代的な日本料理にも取り組み、新しい美味しさの提案を続けている。
底冷えのする京都には、その寒さと共に美味しくなる京野菜が数多くあります。京野菜は夏と冬に集中して多く、特に冬は根菜が豊富で、聖護院かぶは千枚漬の原料として全国に知れ渡っています。
11月後半頃から出始めるので、それまでは小カブ使います。これはこれで美味しいんですが、聖護院かぶは格別です。みずみずしくて甘みがあって、蒸しても炊いてもいい。ピークは12月で、使うのは1月いっぱいまで。年が明けると、だんだん筋が入ってくるからです。
聖護院かぶは、程よい大きさで、形が丸く、持った時に重たい実が詰まったものを選んでいます。個体差があるので風味、味わい、肉質は色々ですが、一般的には大きく育ったものは土の中に長くいたこともあって野趣がありますね。一方、ほどほどのサイズにはつるん、としたべっぴんさんが多く、絹のようにきめ細やかな肉質で、味も上品です。東京店ではよその産地のものも試したんですが、やはり肉質が細かく、炊いても、おろしても美味しい京都産のものを送ってもらっています。
カブはすりおろして使う場合と、カットして使う場合で選ぶ個体が変わります。すりおろしには、味がしっかりしている大ぶりなもの。少し繊維があって肉質はザラッとしてますが、おろしたらきめ細かくなりますからね。形や大きさを揃えて作る炊合せなどの料理には、手頃なサイズで丸形のものを選びます。形を揃えるために切り落とす部分が多いので、できるだけロスが少なくなるきれいな形がいいんです。
今回、ご紹介するのは、カットしたカブを使う「炊合せ」と、すりおろしたものを使う「かぶら蒸し」の2品です。どちらも昔からある料理ですが、素材に対する考え方も作り方も以前と変えています。昔のカブはアクが強かったり、味に雑味が多かったりしましたが、今は生産者さんの努力によって数段美味しくなっているので、持ち味をできるだけ生かすことを考えて仕立てます。
聖護院かぶの炊合せ——扇面形に切ったカブを美しく仕上げるため、蒸してから炊きます
聖護院かぶ 鶉(ウズラ) 菊菜 黄柚子 器/赤金襴手牡丹唐草鉢(二代 久世久宝作)
1品目の炊合せは、冬の定番の煮物です。
聖護院かぶは丸のままから切り分ける時、菜切り庖丁で切ると割れてしまうので、大きな両刀を使います。ある程度、小分けしてから菜切り庖丁に変え、形と大きさを切り揃えます。
最近は、炊合せにするカブもいろんな形に切ったものを見ますが、うちは昔から扇面の形。サイズや形を見ながら幅と高さを決め、食べる時に美味しく見栄えする高さは3.5〜4㎝くらい。カブの中心部分はみずみずしいので、高さを揃える時は根部や葉元に近い面を切り落とすようにします。そして角を切り落とし、最後に面取りをします。
ここまでは昔のやり方と変わりませんが、火入れは変えています。以前は、鍋に切ったカブと米、水を入れて茹で、それを水にさらしてから炊いていました。今は蒸してから炊いてます。この方が味が抜けず、形が崩れず、きれいに上がるんです。
これを八方だしで煮ます。できるだけカブの白い色を生かしたいので、醤油は薄口。多めのみりんと塩で味を決めます。これを一日置いて味を含ませるだけで十分美味しいですが、今回は鶉の吉野煮と合わせました。カブが淡泊な味なので、上品な甘みのエビや濃い味付けの鶉と合うんですね。ふっくらと煮た煮穴子とも相性が良く、お客様に人気です。
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