「瓢亭」野菜料理のデザイン

【レシピ付き】大根2品——野趣を楽しむ大根揚げ煮&甘さを引き出した大根餅

年が明けるとみずみずしさと共に、甘みが増す大根。『瓢亭』では、揚げる、蒸すといったひと手間をかけることで、持ち味をアップさせます。教えていただいたのは、ハマグリの葛煮と合わせた「揚げ大根」と、ブリ大根と唐墨大根の進化形とも言える「大根餅」の2品。大根独特の甘みや香りをいかにデザインしているか、伝統の料理を当代がどのように工夫をしているか、解説していただきました。


髙橋義弘:創業450年を超える老舗料亭『瓢亭』の15代目当主。1974年、14代目髙橋英一氏の長男として京都に生まれる。東京の大学を卒業後、金沢の日本料理店『つる幸』で修業を積み、1999年帰洛。海外のシェフたちとのコラボレーションなど国内外を問わず、京都の懐石料理を伝える活動に尽力。2015年、15代目に就任し、2018年に東京店を出店。老舗の味を守りながら、時代に即した現代的な日本料理にも取り組み、新しい美味しさの提案を続けている。

文:西村晶子 / 撮影:ハリー中西

大根とカブは同じ冬の根菜ですが、カブは繊維が柔らかく、上品な甘みがあるのに対して、大根は野趣ある味わいが特徴です。そのため、カブは繊細な白身の魚との相性が良く、大根はブリやサワラなど、身の味がしっかりしたものに合いますね。

京野菜の聖護院(しょうごいん)大根を使うこともありますが、今回は一般的な青首大根を使います。無農薬か減農薬のもので身質が違うので、料理によって使い分けています。無農薬のものは筋があって肉質がゴツゴツしているので、すりおろしたり、刻んだりして使い、減農薬のものは身質がなめらかなので、姿をきれいに見せたい煮物などに使います。

また、形や大きさを揃えたい煮物は、真ん中のみずみずしくて美味しいところ、葉に近い青い部分や下部の1/4程度は、なますや大根おろしなどに使います。

『瓢亭』では大根を生で使うことは少なく、ほとんどが温かい料理です。今回、ご紹介する料理も1品は揚げ煮にしてハマグリの葛煮と合わせた炊合せ、もう1品は大根おろしと白玉粉を練って蒸す、大根餅に仕立てています。

大根揚げ煮——当日炊いて提供できる、大根の野趣を残した煮物です

hyo8956b大根揚げ煮 蛤葛煮 九条葱 柚子 器/松竹梅蒔絵漆椀

大根の煮物をもっと美味しくできないかと思い、作ったのが「大根揚げ煮」です。表面にだけ味をのせ、中には浸透させないので、煮含めたものとは違う、大根本来の持ち味が楽しめます。干し貝柱の戻し汁に昆布を入れて煮出した貝だしは大根との相性が良く、これで煮て、ハマグリの葛煮と合わせます。

大根が主役なので、食べ応えがある3㎝くらいの厚さに切ります。皮を剥く際には繊維の内側まで剥き、形を揃え、最後に面取りし、これを120℃の油の中でゆっくり揚げていきます。焼くよりも揚げる方が大根の表面がつるんとして、きれいに上がるんです。大根に色をつけたくないので、油は低温で、揚げるというより水分を抜くイメージ。竹串が中までググッと刺さるようになったら取り出します。

揚げた大根は、だしで煮出すと表面の油が抜けます。煮立ったら、調味料を順に入れ、コトコトと7〜8分煮ます。ここでも大根に色をつけたくないので濃口醤油ではなく、白醤油と淡口醤油を使います。複数の醤油を用いると、味が単調にならないんです。

当日の朝に仕込んだものをお昼に、午後に仕込んだものを夜にお出しし、大根らしい野趣やみずみずしさを味わっていただきます。少し硬さがあるので、お箸で切れるように隠し庖丁を入れ、半分に切って盛り付けます。薄くとろみのついた汁もたっぷり注いで味わっていただきます。

この記事は会員限定記事です。

月額990円(税込)で限定記事が読み放題。
今なら初回30日間無料。

残り:1982文字/全文:3475文字
会員登録して全文を読む ログインして全文を読む

フォローして最新情報をチェック!

Instagram Twitter Facebook YouTube

この連載の他の記事「瓢亭」野菜料理のデザイン

無料記事

Free Article

おすすめテーマ

PrevNext

#人気のタグ

Page Top
会員限定記事が読み放題!

月額990円(税込)初回30日間無料。
※決済情報のご登録が必要です