和食のいろは

【一覧表付き】春が旬の魚介

2022.04.05
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連載:和食のいろは

春告魚といえば、関西では桜鯛、サワラ、イカナゴ。全国的にはメバル、東北では桜マス、四国・九州ではシロウオも春の訪れを告げる魚の仲間です。さらに、早春からは貝の季節でもあります。そんな3・4月が旬の魚介を一覧でご紹介。「辻調理師専門学校」日本料理主任教授を務めた畑 耕一郎先生に、代表的な魚介の美味しい調理法も解説いただきます。プロの方も、献立を考えるために、ぜひご活用ください。

畑 耕一郎(はた こういちろう):大阪生まれ。「辻調理師専門学校」理事・技術顧問。「大阪料理会」会長。TBS「料理天国」やABC「上沼恵美子のおしゃべりクッキング」など多くのTV番組に出演。『プロのためのわかりやすい日本料理』(柴田書店)など著書も多数。

文:中本由美子 /  料理制作:大阪・北新地『割烹 味菜』 / 撮影:東谷幸一

春の魚介の特徴とは?

「3月平目は猫またぎ」。魚の好きな猫でも食べないくらい味が落ちるという意味で、関西では「3月平目はもらっても食うな」なんて言われます。3~4月は冬の魚介が盛りを終え、その多くが産卵期を迎えるため、出回る魚介の顔触れは変わります。
春の魚は、冬場のような「脂ののった」味わいというより、全体的にあっさりして上品。白身が美味しくなる季節ですね。

文字通り、春の訪れを告げる魚を「春告魚」と言いますが、昔から代表格といえばニシン。3~5月に産卵のため、かつては大挙して北海道の西岸にやって来て、大量に獲れたのですが、すっかり漁獲量が減ってしまいました。

そこで、ポスト・ニシンとして春告魚と呼ばれるようになったのが、メバルです。日本は南北に細長く、日本海、太平洋、瀬戸内などでそれぞれ揚がる魚介も違いますから、地方によって春告魚とされるものが変わってきますね。

関西ならば、くぎ煮で名高いイカナゴ。魚偏に春と書くサワラ、腹に子を持つと身体が婚姻色といってピンク色になる桜鯛も、春告魚と言っていいでしょう。

また、お雛様の頃の献立に欠かせないのが、ハマグリ。アサリにミル貝、アオヤギなど、二枚貝が次々と旬を迎えていきます。冬場から続いて、タイラギ、赤貝もまだまだ美味しい。早春からは貝の季節でもあります。

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春の魚の代表選手は?

春の和食の献立に欠かせない、代表的な魚5種。その特徴や種類、それぞれの持ち味を生かしたシンプルな調理法をご紹介。

春告魚といえば、メバル

2月頭から5月初旬までを旬とし、北海道から九州まで全国津々浦々で揚がるメバル。黒・赤・白と3種類の体色があって、それぞれ黒メバル、赤メバルと呼び分けているようですが、基本は同種。本メバルです。
ウスメバルも春に旬を迎えますが、こちらは沖メバルで、ちょっと種類が違うんですよ。

本メバルは、なんといっても煮付けが一番。姿のまま煮付けられる魚というのは、あまりないので、迫力も出ますね。相性がいいのは、新ゴボウです。本メバルには磯魚特有の匂いがありますが、新ゴボウと合わせることでまったく気にならなくなるんですよ。

メバルの煮付け淡路島揚がりの黒メバルの煮付け。『割烹 味菜』では骨と腹に隠し庖丁を入れ、昆布だしに濃口醤油、みりん、酒と砂糖少々で10分ほどさっと煮る。仕上げ直前に少し強火にして煮汁を絡めながら煮上げる。

魚偏に春で、サワラ

成長するに従って、サゴシ→ナギ→サワラと呼び名が変わる出世魚。日本中で揚がりますので、岡山ではまだ水の冷たい時季に皮付きで刺身にし、三重では秋冬の大ぶりなものを塩焼きにと、各地で一年中楽しむようになっています。

とはいえ、魚偏に春と書くサワラは、春の和食の献立には欠かせません。比較的小ぶりなものは、皮霜にしてお造りに。脂ののった大きなものは、やはり焼き物が向いています。塩焼きもいいですが、水分の多い魚なので、幽庵焼き、味噌漬け…と、調味料の塩分で水気を抜いてから焼き上げた方が美味しいですね。

お造りならば、サヨリ

体は細く、下あごが針のように長いことから、「針魚」「細魚」という字を当てるサヨリ。日本海、太平洋、瀬戸内と広く生息しています。

伝統的な寿司ダネとしても知られているように、生食向き。とはいえ、生そのものにはわずかに鉄っぽさがあるというか、少しクセを感じますので、塩〆や酢〆にするのが美味しい。とりわけ、昆布〆がいいですね。

持ち味が繊細ですから、カツオ節の旨みを加えた煮切り酒と合わせるなど、割り醤油(土佐醤油)でお勧めしたいところ。煎(い)り酒もよく合います。

昆布〆や酢〆は、和え物にするのも手です。木の芽味噌、黄身酢、おろし和え、辛子酢味噌…。菜の花やウルイなど旬の野菜や山菜と和えてお出しすると、春らしい先付や突き出しになります。

真骨頂は、やっぱり真鯛

「腐っても鯛」という言葉がありますが、魚の王様といえば、やっぱり真鯛です。日本一と呼び声高い明石や鳴門のある瀬戸内海では、春になると産卵のため真鯛が浅瀬に集まってきます。これを“乗っ込み”と言います。

3~4月、メスの真鯛は体が美しい桜色になります。そして、オスの身体には花びらのような斑点が。これが、春の真鯛を「桜鯛」「花見鯛」と呼ぶ所以(ゆえん)です。

真鯛は、旨みの充実した魚ですから、生でよし、焼いても煮てもいい。焼き物なら、塩焼きの他、淡いタレ焼きにすると持ち味が際立ちます。木の芽やフキノトウなど、春の香りを添えてもいいですね。焼き物に向くのは、脂ののっているカマから腹にかけて。背は繊維が硬く、火を強く入れるとパサついてしまいます。

煮物は、あら炊きを置いて他にはないでしょう。鮮度のいい状態で入手しにくかった昔は、濃い味でしっかり煮た黒光りするようなあら炊きがいいとされましたが、今はその逆。活きのよさを生かして、淡い味付けで、さっと煮付けたいですね。

桜鯛のあら炊き熱湯をかけて霜降りした後、昆布だしに薄口醤油、酒、砂糖とみりん少々で煮付けた『割烹 味菜』のあら炊き。「脂ののった鯛ならば、砂糖はなくても甘く煮上がりますよ」とは大将の坂本 晋さん。

シラウオは天ぷらが一番

体長10㎝程度の小さなシラウオは、汽水域や河口域に棲息しています。島根の宍道湖(しんじこ)、茨木の霞ケ浦(かすみがうら)などが、よく知られる産地です。
シラウオと混同されがちなシロウオは、素魚と書いて、こちらはハゼ科。踊り食いが有名ですね。

シラウオもシロウオもクセのない、淡い味ですから、シンプルに食すのが一番。玉締めもいいですが、薄衣の天ぷらには敵いません。菜種油や綿実油など、揚げ油も軽いものを選び、さっと揚げて塩でいただくのがいいでしょうね。春らしくいただくなら、桜塩もおすすめです。桜の花の塩漬けを乾燥させたものですが、簡単にレンジで作ることができますよ。

梅との相性もいいので、梅煮にしたり、梅酢に漬けたりして、ほんのり赤く染めてお出しするのも、和食店では定番です。その姿は、春の季語にふさわしい、風情のあるものです。
それから、手間はかかるのですが、これは旨い!と思うのが、一夜干し。たて塩の後、7~8尾を目刺しして、生干しに。軽く炙ってお出しすると、凝縮した旨みが楽しめます。

春は貝の季節

貝類は初夏に産卵を迎えるものが多く、身が肥えて食べ頃となるのは3~4月。とりわけ、アサリ、バカ貝(アオヤギ)、ミル貝など二枚貝が盛りとなります。その代表格といえば、ひな祭りの献立で主役を張るハマグリです。さらに、この時季の和食の献立を彩るイカ・タコの代表格も合わせてご紹介します。

桃の節句にはハマグリ

ハマグリの貝殻は一対になっているため、他の貝と合うことがないとして、夫婦円満を表す縁起物とされます。一生添い遂げられるような男性に出合えることを願って、桃の節句にはハマグリを食すようになったのでしょう。

ハマグリはいいだしが出ますので、潮汁にすると、その持ち味が存分に楽しめます。昆布だしで口が開くまでさっと煮たら、すぐに取り出すこと。潮汁は、ハマグリの身のジューシーさが損なわれたら台無しです。

また、「その手は桑名の焼き蛤」という諺(ことわざ)でも知られるように、焼き物にすると真価を発揮します。ただ、そのまま焼くと開いた瞬間にせっかくの旨みが流れ出てしまうことが多い。料理屋であれば、焼く前に殻を開けて身の厚いところに庖丁を入れ、殻に戻すというひと手間を加えていただきたいですね。酒をポトッと落として焼き上げたハマグリは、えも言われぬ美味しさです。

焼きハマグリこの日、『割烹 味菜』に届いた桑名のハマグリは1個120g。「そのまま殻が真黒になるまで焼くのが美味しいのですが、見た目が悪いので」と、殻から外して酒を振り、七輪で焼き上げる。

ホタルイカと、イイダコ

富山湾のホタルイカ、瀬戸内海のイイダコ。どちらも、春の訪れを告げる海の幸です。

ホタルイカは、泳ぎが入ればしゃぶしゃぶというのも手ですが、茹でて和え物に、というのが定番です。ポピュラーなのは、ワケギや菜の花など春野菜と合わせたぬた。ショウガや辛子を加えた醤油でシンプルに食べるのもいいですね。
ホタルイカはワタの美味しさが肝ですから、軽く潰して食べた方が断然旨い。ニンニクと炒めるのが最強なのですが、和食であれば、ニラと合わせたり、和え衣に少しニンニクを忍ばせたりしてもいいでしょうね。

イイダコの「イイ」は卵ですが、火を通すと見た目も食感も白飯に煮ていることから、「飯」という字を当てます。足や胴の身の柔らかさと、卵のプチプチとした歯ざわりを生かすなら、やや甘めにさっと煮付けること。火を通し過ぎると身は硬く、卵はパサパサになってしまうので要注意です。飯だけを霜降りにして、和え物にするというのも手ですね。品のいい一品ができますよ。

【まめ知識】春の魚は秋も旬?

 “裏旬”という言葉をご存知ですか?

昔から魚介の最盛期とされるのは、漁獲高の多い季節でした。産卵前で浅瀬に集まるなど、漁獲しやすい時期は大量に出回るため、この時季を旬としていました。

ですが、多くの魚介には、味の面では、こっちの季節の方がいい、この頃も負けていないという時期があります。これを、もう一つの旬として“裏旬”と呼びます。これは、ちょうど旬とされる季節の真反対であることが多いですね。

例えば鯛ならば、春の桜鯛はやや淡味で品がよく、秋の紅葉鯛は脂がのっていて旨みが豊か。カツオも旬が二度あります。晩春から初夏にかけて珍重される初ガツオは、タタキ造りや腹皮を湯引きにした銀皮造り。秋の戻りガツオは魚体が大きいので皮も分厚く、脂がのっていますから、焼霜造りがいいですね。サワラは、秋口はまだサゴシと呼ぶ幼魚ですが、こちらはきずし(酢〆)に向いています。

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