和食のいろは

【レシピ付き】『味菜』の割烹料理 冬(1~2月)の魚介編

海水の温度がぐっと下がり、脂の旨みをたくわえる1~2月の魚介。その中から、真鯛、トラフグ、牡蛎と主役を張れる素材を選び、割烹『味菜(あじさい)』の店主・坂本 晋さんに和食の基本調理を学びます。王道の潮汁、土手鍋に、フグはちょっと面白味のある変わり揚げ。大阪ならではのアイデアが光る仕立てにご注目を! 創業40年の割烹を率いる坂本さんの、素材の力をストレートに引き出す仕事は必見です。

坂本 晋(さかもと すすむ):岐阜県高山市出身。18歳から下呂温泉『吉泉館』で修業し、大阪・北新地の料亭『神田川』へ。割烹『味菜』を開店し、40年が経つ。淀川や大阪湾の地魚に注力しながらも、全国各地から産地直送で旬の食材を取り寄せ、割烹料理に仕立てる。

文:中本由美子 / 撮影:東谷幸一

澄んだ「鯛の潮汁」の極意とは?

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鯛の旨みをストレートに楽しめるのが、潮汁の醍醐味。ですから、やはり天然の真鯛を使っていただきたいですね。昔から「目の下一尺」と言って体長40㎝以上、1.5㎏級の真鯛が最上とされていますが、今日は明石で揚がった1㎏強。このサイズでも充分美味しいですよ。

潮汁は、お椀に注ぎ入れた時に、汁が澄んでいることが大事です。この汁が濁っていると、雑味が出てしまっている証拠ですから。

澄んだ潮汁に仕立てるためには、下処理が大切。うちでは、食べやすいように切り分けた頭と、中骨から潮だしを取ります。まず、しっかりめに粗塩をして、臭みを取り除き、塩の旨みを浸透させます。霜降りをしたら、血合いなどをきっちり掃除しましょう。口当たりが悪くなるので、ウロコは残さないように気を付けてくださいね。

まずは昆布と水をゆっくりと煮出して昆布だしを取り、そこに中骨と頭を入れて煮出します。この時、少し火を強くして、魚の生臭みを飛ばすのですが、絶対に沸かしてはいけません! 一気にだしが濁ってしまいますよ。

頭の身も味わっていただきたいので、旨みが抜けず、プリンッとした食感に仕上がるよう、10分ほどでさっと煮て引き上げます。その代わり、中骨の周りの身には脂の旨みがあるので、少し長く煮出して、こちらは椀には盛らず、だし素材として使い切ります。

真鯛のだしは濃厚で、味わいに奥行きがありますから、味付けは酒と塩のみ。塩気が足りなければ、うちでは塩水を使います。塩カドがない、まろやかな味わいに仕上がりますよ。

【作り方】
<真鯛の下準備をする>
①    真鯛の頭を梨(なし)割り(縦に2等分)にし、カマの部分を切り離す。目と口の間に庖丁を入れ、ひっくり返して切り離す。エラ蓋の身のない端は切り落とし、大きければ2等分にする。
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②    中骨のアラと①に粗塩をしっかりと振り、30分ほど置く。
③    霜降りして水洗いし、血合いとウロコを取り除く。
<潮だしを仕立てる>
④    鍋に昆布と水を入れ、約60℃で40分ほど煮出し、昆布を引き上げる。
⑤    ④の温度を上げて、③を加えて弱火で10分ほど煮る。頭だけを取り出しておく。
⑥    ⑤を5分ほど煮詰め、さらに中骨の旨みを煮出す。
<野菜の下準備をする>
⑦    大根と金時ニンジンをそれぞれ短冊切りにし、さっと茹でる。⑥の潮だしを少し取って酒と塩水※で塩梅し、浸しておく。
<仕上げる>
⑧    ⑤で取り出した頭を⑥に戻して温め、酒で調味し、軽く煮てアルコール分を飛ばす。味を見て塩気が足りない場合は、塩水※で味を調える。
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⑨    お椀に⑧の頭と⑦を盛り、⑧の潮汁を注ぎ入れる。天に木の芽をあしらう。

※塩水…水塩ともいう。粗塩に卵白を混ぜ、クリーム状になったら水を加え混ぜて弱火にかける。アクが浮くたびに取り除き、結晶になる直前まで、5時間程度煮詰める。『味菜』では、塩の代わりに使う。液体なので食材にまんべんなく馴染みやすく、まろやかな味わいに仕上がるのが利点。

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