【レシピ付き】銀餡(ぎんあん)の意味・由来
銀餡(ぎんあん)とは、だしに色を付けないように調味し、葛粉や片栗粉でとろみをつけたものです。蒸し物や煮物、揚物などに、とろ~りかければ、寒い時季、そそる一品に。ではなぜこの薄い色を「銀」と呼ぶのか? 銀餡(ぎんあん)を美味しく作るコツは?「辻󠄀調理師専門学校」日本料理主任教授を務めた畑 耕一郎先生に解説いただきました。
畑 耕一郎(はた こういちろう):大阪生まれ。「辻󠄀調理師専門学校」理事・技術顧問。「大阪料理会」会長。TBS「料理天国」やABC「上沼恵美子のおしゃべりクッキング」など多くのTV番組に出演。『プロのためのわかりやすい日本料理』(柴田書店)など著書も多数。
銀餡(ぎんあん)とは
薄色の艶(つや)やかな餡に光が当たるとキラッと反射します。それが銀色に輝いて見えることから、銀餡(ぎんあん)と言われています。
だしを調味してとろみを付けるのですが、だし素材は、合わせる料理によって工夫します。
昆布とカツオから取った一番だしはもちろん、煮干しで取ったもの、魚のアラなどからとっただし汁や野菜だしでもいいです。
調味には塩や薄口醤油を使うのが通常ですが、酒を入れてクセを和らげたり香りを付けたり、みりんや酒などで甘みを加えてもOKです。
濃口醤油などで調味して色が濃く付くと、「鼈甲餡(べっこうあん)」と呼ばれるものになります。
京都『瓢亭』の大根餅は、鼈甲餡と銀餡の中間くらいの美味しそうな色合いで。アゴだしと一番だしを合わせ、醤油は白醤油・薄口醤油・濃口醤油の3種を合わせている。ブリ・カラスミ・クレソンと共に(撮影/内藤貞保)。
とろみは、片栗粉より少々高価になりますが、 葛粉を使うとサラッと仕上がり、舌触りもいい。多めに入れて粘度を強くしてもいいですよ。
銀餡(ぎんあん)を料理に使う効果
料理に餡(あん) かけると冷めにくい…といいますが、正直に申し上げると、その効果はそれほど高くないと思います(時間を置かずに食べることをおすすめします)。
それよりも、味を補い、食材 をまとめるという効果の方が大きい と思います。
例えば、下味を淡く付けた 白身魚の蒸し物にかけて充分な喰い味 にしたり、茶碗蒸しにかけて出すなど。前述したように調味や粘度の強弱で、好みの料理に仕上げることができます。
また、煮汁で割ってとろみをつけた餡は共餡(ともあん)と言います(例えば、大根をだしで煮て、その煮汁に葛粉で とろみをつけたものなど)。素材とあんに旨みが増し、一体感 が出ますよ。
「大阪料理会」で東大阪『旬菜 喜いち』店主・板倉誠司さんが披露した「蟹淡雪蒸し」。メレンゲを加えたふわふわの茶わん蒸しに、野菜とカニから取っただしに薄口醤油とみりんで調味し、水溶き葛粉でとろみを付けた銀餡(ぎんあん)をかけて。
銀餡(ぎんあん)の作り方とコツ
- ①
- 調味しただしを 火にかけ、沸いたら一旦、火を止める 。
- ②
- ①を静かにかき混ぜながら、水と葛粉(片栗粉)を1:1で合わせたものを少しずつ糸をひくように加える。
- ③
- 極弱火にかけ、2分ほど静かにかき混ぜる。
作り方はいたってシンプルですが、ちょっとしたコツがあります。
まず、調味しただしを一度沸騰させること。これによって水溶き葛粉や片栗粉を入れた時に、粘りが出ます。
次に、水溶き葛粉や片栗粉を入れる時は、ダマにならないよう、火を止めるか、ごく弱火にして混ぜること。この時にガシャガシャと混ぜると気泡がにごり状になってなかなか消えないので、あくまでも静かに。
最後に、とろみを安定させ、さらにデンプン臭を飛ばすため、ごく弱火で静かに混ぜながら煮ます。
餡に、三ツ葉や菊菜(春菊)などの青菜、木ノ芽・山椒・紫蘇・柚子・ショウガの搾り汁などの香味を加えてもいいですね。
銀餡(ぎんあん)のアレンジ
だしにかき玉子やカニ身、みぞれ(大根おろし)などを加えてとろみを付けたものは、それぞれ「かき玉入り銀餡(ぎんあん)仕立て」「カニ身入り銀餡(ぎんあん)仕立て」「みぞれ入り銀餡(ぎんあん)仕立て」と言い、食欲を刺激し、料理を華やかに演出します。
ご飯の上にふわとろの玉子焼きをのせ、カニ身入りの銀餡(ぎんあん)をかけると、日本料理風の天津飯になりますよ(笑)。
基本を押さえた後、いろんなアレンジを試してみてください。
京都『即今藤本』のコースの締めに出していた、カニの玉子餡かけ御飯(撮影/下村亮人)。
フォローして最新情報をチェック!
会員限定記事が
読み放題
月額990円(税込)初回30日間無料。
※決済情報のご登録が必要です
この連載の他の記事和食のいろは
月額990円(税込)初回30日間無料。
※決済情報のご登録が必要です