×岩切秀央vol.2【一問一答】つるんと滑らかな陶肌と柔らかな色ムラが生み出す、うつわの新世界
柔らかな歪みのあるフォルムと、淡いベージュの色ムラが美しい肌。岩切秀央(しゅうお)さんのうつわは、一見、川石を思わせるつるりとした肌合いで、ずっと触っていたくなるような滑らかな触り心地と、現代的な軽やかさが特徴です。表面の何とも言えない温かな風合いは、どのような工程を経て生み出されるのでしょうか。『神楽坂 石かわ』店主・石川秀樹さんから5つの疑問を預かって、鹿児島県南九州市の田園風景の中に建つ岩切さんの工房を訪ねました。
Q1:陶芸を志したきっかけは?
1991年生まれ。鹿児島市の出身で、2021年、独立を機に南九州市に移住。自宅兼工房は、古民家再生プロジェクトで再構築されたもの。工房はこの地方独特の“馬屋”と呼ばれる建物にあり、2階はギャラリーになっている。
陶芸に出合ったのは大学の時です。「陶芸はおじいちゃんがするもの」くらいのイメージしかなくて、大学に入ってから、陶芸の先生の個展に行ったら、インスタレーション(※1)とか現代美術系だったので、面白そうだなと思って。それが陶芸を学ぶきっかけになりました。
土の触感も大きかったです。菊練り(※2)の時、土が手に当たる気持ちよさに、子どもの頃の“触覚”で判断する感覚がよみがえってきて、惹き込まれていきました。
一度は卒業して、普通の会社に就職したんですが、半年ぐらいで陶芸をもっと学びたくなって大学院に入り直すことにしました。面接で教授から「何をしたいのか」と聞かれ、あやふやな返答をしたら、「そんな答えだったら、卒業しても迷ったままだよ」と言われて、次の日に陶芸で食べていこうと覚悟を決めました。
ただ、この時、目指していたのはあくまでオブジェで、うつわを作るイメージはありませんでした。
※1 インスタレーション:展示空間を含めて作品とみなす、現代美術の表現手法・ジャンルの一つ。
※2 菊練り:陶土の中の空気を抜くために行う土練りのこと。練り終わった陶土が菊のような形になることから名付けられた。
滑らかなつるんとした肌。よく見ると細かく貫入が入っている。歪みや丸みが手に心地よい茶碗。貫入は、窯から出した後、冷却時に生じるヒビ模様のこと。釉薬と素地の収縮率の違いによって起こる。
大学院に入ると同時に、鹿児島の陶磁器ブランド「ONE KILN(ワンキルン)」の工房にアルバイトで入り、卒業と同時にそのまま就職しました。
石膏(せっこう)型に生地を流し入れる、あるいは圧縮鋳込みでうつわを作るプロダクト系の工房で、仕事が終わってから自分のオブジェの制作に励みました。
その頃、同じ鹿児島の陶芸家・野口悦士さんの作品を見て、うつわの世界にもこんなカッコいい人がいるんだと思って、うつわ作家もいいなぁと思うようになりました。
月額990円(税込)で限定記事が読み放題。
今なら初回30日間無料。
フォローして最新情報をチェック!
会員限定記事が
読み放題
月額990円(税込)初回30日間無料。
※決済情報のご登録が必要です
この連載の他の記事『神楽坂 石かわ』×現代作家
月額990円(税込)初回30日間無料。
※決済情報のご登録が必要です