1660年創業の奈良『今西酒造』が新蔵「三輪伝承蔵」をオープン。「三輪の歴史・文化・風土・技を伝承し、“町”を醸す」
『今西酒造』といえば、「三諸杉」や「みむろ杉」、近年は「菩提酛(ぼだいもと)」で醸す日本酒でも名を馳せる蔵。挑戦を続ける14代蔵主であり社長の今西将之さんが新たに設立したのが「三輪伝承蔵」です。場所は「三輪明神 大神(おおみわ)神社」すぐそばの参道。2025年4月6日、朝10時から鏡開きが行われ、振る舞い酒が提供されました。蔵の役割、そして、今西さんの想いをお伝えします。
日本最古の神社といわれる「大神神社」。本殿をもたず、ご神体は三輪山そのもの。境内には大物主大神(おおものぬしのおおかみ)の化身、白蛇が棲む「巳の神杉(みのかんすぎ)」と呼ばれる古杉があり、巳年である今年は特に参詣の人々で賑わっている。
『今西酒造』14代蔵主で社長の今西将之さんは、「巳年に、必ずオープンしたかったんです」と、完成した「三輪伝承蔵」を眺める。「日本酒の神様が祀られる大神神社の参道脇。こんなにいい場所はないでしょう!」と晴れやかだ。
左/オープンの午前10時。「三輪伝承蔵」前には、大勢のお客が集まり、今西さんの挨拶に聞き入った。右/振る舞い酒を提供する今西さん。今西さんは同志社大学商学部卒。現「株式会社リクルート」に入社し、TOPセールスとして多数の賞を受賞。先代の急逝に伴い、2011年より家業に入る。酒造りの抜本的改革を行い、酒質向上を実現。数々のコンペティションで表彰されるまでに蔵を成長させた。醸造哲学は「清く、正しい、酒造り」。
蔵からは、入る前から清廉な香りが漂う。内外にたっぷりと吉野杉が使われ、深呼吸するだけで心地がいい。外装は神社や穀物倉庫を造るための木造建築技術・板倉造り、内装は校倉(あぜくら)造り。また、屋根の軒先はテコの原理で軒先を支える桔木(はねぎ)構造を採用するなど、宮大工の技が結集している。
左/木造平屋建ての「三輪伝承蔵」内。物販も充実。右/天窓が付いており、自然の光が取り入れられる。
贅沢な造りは材木商の街であるこの土地の強みだが、今西さんがこの蔵にかけた想いの表れでもある。
「お酒を造るだけでなく、三輪の歴史や文化、風土を次世代に伝えたい。そして、人と人の縁を結び、町の彩り、賑わいを生み出す場所にしたいんです」。
そのため、「三輪伝承蔵」で製造・販売されるのは、奈良県産米を菩提酛造りで醸し、吉野杉の木桶で仕込んだ「三諸杉」のみ。菩提酛とは、室町時代に奈良市・正暦寺で創醸され、現在普及している速醸酛や生酛系酒母の原型だ。もちろん、仕込み水には三輪山の伏流水を使う。
店内からはガラス越しに木桶と甑(こしき)が眺められ、タイミングが良ければ仕込みの様子を見ることもできる。木桶は本店に比べて小さめのサイズ。「ゆくゆくはスタッフのアイデアによる、チャレンジングな酒造りもできるようにできれば」という構想も秘めている。
オープニングに合わせ、「三諸杉 三輪伝承蔵仕込み 無濾過生原酒」が新発売。酒米は山田錦、精米歩合は60(青ラベル:2750円)と65(白ラベル:2200円)。エチケットには、三輪と深い縁をもつ「杉×蛇×兎」をモチーフにした紋が描かれている。
「三諸杉」らしいきれいな甘みと、杉樽の爽やかな風味が特長。精米歩合65はやや深みのある味わい。60は、クリアな甘みがスーッと続く。ずっと飲んでいたいと感じる味わいだ。販売は搾り立ての無濾過生原酒をメインに、火入れしたものも陳列する。
店内のカウンターでは、スタンディングでお酒と小皿メニューが楽しめる(30分制)。「伝承蔵セット」は、お酒(90ml)+和らぎ水で660円~。「三輪セット」は、お酒(90ml)+和らぎ水+酔い小皿一品で1045円~。
この日、訪れた多くのお客も前後に「大神神社」を参詣していた。三輪の魅力を、日本酒をきっかけに知り、感じ、また訪れる。「皆さまと一緒にこの蔵を育てていくことで、我々の“真の酒造り”が完成すると思っています」と今西さん。日本酒だけでなく、町も醸す——『今西酒造』の新たな挑戦が、歴史・文化の前進の一歩となるかもしれない。
【住所】奈良県桜井市三輪元馬場方552
【電話番号】0744-42-6022
【営業時間】10:00~17:00
【定休日】不定休
【HP】https://imanishisyuzou.com/miwadenshou/
【Instagram】https://www.instagram.com/mimurosugi_official/
【Facebook】https://www.facebook.com/mimurosugi?locale=ja_JP
フォローして最新情報をチェック!