新神戸『但』、8月昼の「甘味コース」の献立の立て方【後編】料理内容
「甘いもん」と「しょっぱいもん」を行き来しながら、味覚に心地よい起伏を描く新神戸『但』の「甘味コース」。【後編】では、8月の主役、モモを生かした甘味(かんみ)、そして、牛すき焼き丼やすり流し、鴨料理、蕎麦など、実際のコース内容を追います。果物はその場で剥き、かき氷は氷の状態を整えるところから。できたてを旨とする割烹の思想を甘味にも生かし、一皿ごとに驚きとおいしさを生み出す店主・足立純哉さんの仕事をご紹介します。
足立純哉さん:1977年、兵庫県豊岡市生まれ。30歳で料理の世界へ入り、11年修業。神戸の名割烹『玄斎』や肉割烹で経験を積み、2018年6月に独立した。夜のコースは旬食材を贅沢に使い、最後には肉料理と兵庫県養父市の希少米「いのちの壱」の炊き立て、さらに目の前で作るかき氷とわらび餅を提供。締めまでこだわる姿勢が支持されている。昼は、完全予約制で「甘味コース」または「引き立てのお出汁と炊き立てご飯とそのお供」を提供する。
甘味を、割烹スタイルで
『但』の「甘味コース」では、果物を板場で切り、調味し、その場で仕上げる。甘味でありながら、その仕事ぶりはまさに割烹だ。
その原点にあるのが、修業先『玄斎』店主・上野直哉さんから聞いた「料理は、できた瞬間から一秒ずつ味が落ちていく」という言葉。修業を重ねる中で、できたてのおいしさを追求してきた足立さんにとって、料理人としての大切な軸になった。
さらに背中を押したのが、製菓教室を営んでいる母親の何気ないひと言だった。「わらび餅は、できたてが一番おいしいんやで」。その時、「割烹の技術や考え方で甘味を作ったら、おもしろいんじゃないか」と思ったという。
実際、コース中には「そこから始めるのか」と驚かされる場面が少なくない。かき氷なら、シロップに使うモモを目の前で湯剥きするところから。わらび餅は、本わらび粉に水や砂糖を合わせ、煉り上げる工程から見せる。
「フレッシュな色、フレッシュな味わいを楽しんでいただきたいので。その場で剥いて、その場で仕上げるのが一番なら、多少時間がかかってもやりますね」。
その仕事は、結果として食べ手にとって格好の“見せ場”にもなる。「そうやって作るんだ」と工程を見つめるうちに、これから口にする一皿への期待も膨らんでいく。
また、個体ごとに糖度や香りが異なる果物を見極め、その日の気温や湿度まで考えながら味を微調整できるのも、割烹で培った技術があればこそ。あらかじめ完成させた菓子を供するのではなく、目の前の素材と、その日の空気に合わせて味わいの着地点を探る。
食べるその瞬間に、おいしさのピークを持っていく。それが、『但』の「甘味コース」だ。
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