おいしさの科学

「コクがある」=「おいしい」のか? 「コク」の正体を探る

飲食をしている時に「コクがある」と表現することがあります。「おいしい」という感情の範疇で使われるイメージがありますが、どのような味わいかをうまく説明できる方は少ないのではないでしょうか。よく使われるものに、カレーやシチュー、チーズ、コーヒーやココア、ビールなどがありますが、これらすべてに共通する味わいはありません。今回は、普段、私たちが何をもって「コク」と表現しているのか、文献や資料から探っていきます。


釜阪 寛さん:1964年生まれ。神戸大学農学部卒業後、1989年江崎グリコ株式会社入社。菓子開発研究室の焼き菓子チームに3年在籍した後、生物科学研究所で食品の新しい素材・技術開発を行う。健康科学研究所に名称変更した後、カルシウム、主に「お口の健康」の研究に携わる。2022年4月より甲子園大学 栄養学部 食創造学科教授に。同大学の学長である伏木 亨氏と共に食品の嗜好性の研究を行う。農学博士。

聞き書き:阪口 香 

目次


「コク」って何?

『広辞苑 第六版』(岩波書店)で「こく」を調べますと、

こく【酷】①(本来、中国で穀物の熟したことをあらわしたところから)酒などの深みのある濃い味わい。

と記されています。

「深みがある」「濃い」「じっくり煮込まれた」といったイメージで使われることが多く、カレーやラーメン、乳製品を食べた時や、ビールの中でもホップの香りが効いた芳醇なもの、コーヒーやビターチョコレートを思わせるスタウト(黒ビール)を飲んだ時につい、口にする表現です。

CMやテレビ番組で用いられることもあり、ある程度共通の認識を持っている味の感覚。しかし、今なお「コク」を科学的に説明することは難しいとされています。 ではどのような要素が揃えば我々は「コクがある」と感じるのか?それは「おいしさ」につながるのか? 資料に当たって考えてみたいと思います。

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