おいしさの科学

熟成魚とは? おいしさのメカニズム

ねっとりした食感や、しっかりしたうま味。熟成させた魚には、鮮魚にはない味わいがあります。その味わいは、どのようにして生まれているのか? 今回は「熟成」シリーズの最終回。魚の熟成のメカニズムを、甲子園大学の釜阪 寛先生に解説していただきます。


釜阪 寛(ひろし)さん:1964年生まれ。神戸大学農学部卒業後、1989年江崎グリコ株式会社入社。菓子開発研究室の焼き菓子チームに3年在籍した後、生物科学研究所で食品の新しい素材・技術開発を行う。健康科学研究所に名称変更した後、カルシウム、主に「お口の健康」の研究に携わる。2022年4月より甲子園大学 栄養学部 食創造学科教授に。同大学の学長である伏木 亨氏と共に食品の嗜好性の研究を行う。農学博士。

聞き書き:阪口 香 / 撮影:高見尊裕 

目次


熟成魚とは

肉と同じく、魚も熟成させると風味が変わります。
魚を締めた後、しばらく時間が経つと死後硬直が起こり、魚体は硬くなります。その後、時間が経過すると柔軟性が戻ってくる。そのタイミングに「熟成」が起こっています。

一般的な熟成方法は、頭と内臓を取って血抜きをし、キッチンペーパーで包み、さらにラップなどで真空に近い状態にして低温で保存。半身で熟成させる場合は皮や背骨も取らず、サクにした場合も同じような手順で熟成が可能です。


熟成魚がおいしくなるわけ

魚を熟成させて起こる味わいの変化は「うま味が増えること」と「軟らかくなること」です。キーワードは、熟成肉でも登場したATP(アデノシン三リン酸)です。

ATPは人を含め、動物、もちろん魚が動く時(細胞の増殖、筋肉の収縮など)に関与する分子です。細胞内に存在し、分解する時に生じるエネルギーで生態活動を支えます。

もう少し詳しく説明すると、ATPとはアデノシンにリン酸が3つ結合している状態で、結合している部分にエネルギーが蓄えられています。この結合が外れる際にエネルギーが発生。リン酸が1つ外れると、ADP(アデノシン二リン酸)に、さらに外れるとAMP(アデノシン一リン酸=アデニル酸)となり、いずれのタイミングでもエネルギーが発生します。

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