大阪料理会

【レシピ付き】鯨のてっぱ真薯(しんじょ)——『小嘉津』早川友博さん作

2019年、日本はIWC(国際捕鯨委員会)を脱退。30年ぶりに、日本近海で商業捕鯨が再開されました。日本の三大捕鯨基地の一つ、和歌山の太地(たいじ)町から近かったこともあり、大阪は昔から鯨肉の集散地でした。「鯨は大阪料理には欠かせない食材ですから、若い人に伝えていきたい」と、曽根崎の和食店『小嘉津(こかつ)』の店主・早川友博さん。テーマ食材として鯨を選び、椀物を仕立てました。「テッパとはどんな部位?」「どんな食感?」と会員は興味津々。真薯のベースとなる自家製すり身も大好評でした。


※大阪料理会 公式サイトhttps://osakaryourikai.com/

聞き書き:中本由美子 / 撮影:福本 旭
早川友博さん(大阪・曽根崎|『小嘉津』店主)

1976年、岐阜県生まれ。ご本人曰く「超田舎育ち」。辻󠄀調理師専門学校を卒業後、大阪・北新地にて昭和27(1952)年に創業した『小嘉津』に入る。2011年、35歳で同店を引き継いで三代目となる。19年に現在の地に移転。華美に走らず、質実な日本料理の正道を行く、生真面目な職人。昔ながらの食材や古い料理にも関心が高い。

手作りのすり身とテッパの真薯に、ニタリクジラの赤身を添えました

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大阪には昔から鯨食(げいしょく)文化がありましたが、国際的に捕鯨への規制が強化されたことで衰退してしまったと聞きます。ですが、大阪の和食にとって大事な食材だと僕は思うんです。

IWCを脱退し、日本近海の鯨が入手できるようになったので、若い人にも鯨の味を知ってもらうチャンスだと思っています。年配のお客様にも「懐かしいねぇ」と喜ばれるので、手に入る限り、僕は鯨を使っていきたい。それで今回は、鯨をテーマに選びました。

鯨は、以前、大阪料理会で教えていただいた、和歌山県太地町の鯨魚加工専門店『重大屋(じゅうたや)』から仕入れています。太地町は昔から捕鯨が盛んで、鯨の町として知られています。

商品の中に、胸ビレをスライスして茹でた「鯨のテッパ(手羽)」があって、面白いなと思って使ってみました。くにゅっと柔らかく、適度な弾力もあって、脂の旨みも味わえるので、真薯のアクセントにしています。

osa0013-3c『重大屋』の鯨のテッパ(手羽)は100g入りの商品が5袋で1800円。同店のHPから購入もできる。

真薯の上には、ニタリクジラの赤身を霜降りして一切れのせました。昨秋、35年ぶりに大阪市中央卸売市場でニタリクジラの生肉が取り引きされたのですが、その赤身を食べてビックリ。めっちゃ美味しかったんです。

うちでは、真薯はすり身から作っています。今はもう廃業されてしまったのですが、とある練り物の専門店で、すり身の作り方を教わって。自家製すると、旨みも食感も全然違うんですよ!

端身など余った部分を冷凍して使っています。フードプロセッサーにかけると、摩擦熱で身が温まってしまうので、凍らせた状態で使う方がいいんですね。凍ったまま出刃で薄切りにして、水溶き葛粉を加え、昆布だしで硬さを調整しています。

osa0013-3d「すり身がふわっとして美味しい!」と大好評。多くの会員から作り方への質問が出た。運営委員の『懐石料理 雲鶴(うんかく)』店主・島村雅晴さんは、連載「和食を科学する料・理・理・科」の「真薯の食感はコントロールできる!?」の回で実験を行った経験から、「塩をしてから冷凍するといい」とアドバイス。早川さん(右)も「その方がよさそうです。やってみます!」と笑顔を見せた。

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