大阪料理会

【レシピ付き】鯛と春野菜の燻製仕立て——『法善寺 浅草』辻 宏弥さん作

3月末に開催された「大阪料理会」のテーマは桜鯛。比較的安価な小ぶりのものを上手く生かす方法として、『法善寺 浅草』店主の辻 宏弥さんが提案したのは燻製。試行錯誤の末、素材を直に燻(いぶ)すのではなく、竹皮で包んで間接的に風味を付ける方法を編み出しました。燻煙の殺菌効果も手伝って、花見弁当にも向く、日持ちのする一品が完成。「素材を変えれば、一年中お出しできる」と、大阪料理会の会員たちは、その可能性に大いに関心を寄せていました。


※大阪料理会 公式サイトhttps://osakaryourikai.com/

聞き書き:中本由美子 / 撮影:福本 旭
辻 宏弥(ひろや)さん(大阪・法善寺横丁|『法善寺 浅草』店主)

1978年、大阪生まれ。同志社大学法学部を卒業後、銀行員を経て、『神戸たん熊』で日本料理の世界へ。2011年、昭和12年創業の『法善寺 浅草』に入り、17年、四代目店主となる。持ち前の勤勉さで、スッポン・フグ・鱧料理を得意とする割烹の料理を進化させ続けている。

桜鯛や筍を竹皮で包んでから燻製に。風味よく、日持ちもする一品ができました!

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先日、鮮魚店の方に「1㎏前後の小さな天然の桜鯛は、意外と買い手がつかなくて余っている」とお聞きしまして。お造りにするには少し頼りないサイズですし、産卵期に入って身が痩せているので、焼物や煮物にするとパサついてしまう。何かいい方法はないか?と考えて、ふと燻製にしたらどうかと思い付いたんです。

この時季は、花見弁当のご依頼も多いので、火入れしてから時間が経っても美味しく、安全にいただける手法としても、燻製はいいと思います。燻煙には殺菌効果があるため、食材の保存性も高まります。ベーコンやいぶりがっこなどが、その好例ですよね。

といっても、食材を直接燻製にかけると、香りが付きすぎて、色も少し悪くなります。そこで、春野菜と共に桜鯛を竹皮で包んでから、燻製することにしました。間接的にほどよい風味が付くだけでなく、竹皮に包んだ状態で保存もできる。1日くらいは常温でおいても大丈夫で、味もまったく変わらなかったんですよ。

燻製の香りを楽しんでいただく料理なので、竹皮で包む素材には、余計な味は一切入れていません。筍は糠(ぬか)湯がきしただけ、タラの芽はボイル、空豆も塩茹でにし、八方地などにも漬けていません。

桜鯛は薄塩を当てておき、鯛のアラでとった潮だしで霜降りしています。このひと手間で、驚くぐらい鯛の持ち味がぐっと深まります。これを5分ほど温燻すると、ちょうどいい火入れになって、しっとり仕上がりました。

初めは日持ちのする料理として考えたのですが、一品としてお出しするのもいいのでは?という意見をたくさんいただいたので、いろんな食材で試しても面白いかな、と思っています。竹皮をほどいて食べる、というのもお客様に楽しんでいただけそう。昔のお弁当みたいで、ちょっとワクワクしますよね。

osa0014-1c「燻製の風味が優しくて、ちょうどいい」「鯛がしっとり仕上がっていて、持ち味がしっかりしている」と大好評。酢の物感覚で、と辻さんはゴマポン酢を添えて供したが、「筍を味噌漬けにするなど、下味を付けてそのまま食べさせた方が、燻製の香りが生きる」というベテラン会員からの意見も。畑 耕一郎会長は、「鶏肉や豆腐の味噌漬けなど、素材を変えたら一年中楽しめる仕立て。これは面白い!」と評した。

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