大阪料理会

【レシピ付き】クログチ燻し 梅酢庵仕立て——『割烹くぼた』久保田 博さん作

「大阪料理会」では釣り名人として知られる西天満の『割烹くぼた』店主・久保田 博さん。今回は、4月頭から大阪湾でよく釣れるというクログチをテーマ食材に選びました。市場にはほぼ出回らない未利用魚なので、会員は皆、「食べたことがない」と興味津々。「ほどよく脂があって、造りにしても美味しい。特に皮と身の間に旨みが多いので、タタキ風にしました」。清涼感のある梅酢あんをかけ、冷菜として勧める、夏らしい一皿です。


※大阪料理会 公式サイトhttps://osakaryourikai.com/

聞き書き:中本由美子 / 撮影:竹中稔彦
久保田 博さん(大阪・西天満|『割烹くぼた』店主)

1977年、熊本県球磨(くま)郡生まれ。北新地『味菜(あじさい)』で3年の修業を経て、オランダの『ホテル オークラ アムステルダム』、東京や西宮の和食店で腕をふるう。再び『味菜』に戻り、2010年、『割烹くぼた』を開店。九州の食材を大阪料理会で紹介するなど故郷愛あふれる人情家。大阪料理会きっての釣りキチとしても知られる。

大阪湾で釣った未利用魚・クログチの旨みを凝縮させ、清涼感あるタタキ風に

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定休日には、仕入れと称して必ず釣りに行っています。うちの割烹でもお出ししていますが、大阪料理会の皆さんにも食べていただこうと、発表する料理には「自分の釣った魚を使う」と勝手に決めています(笑)。

今回は、大阪湾の中深海で獲れたクログチ。シログチはすり身など加工に使うようで、すごく安価で市場に並ぶのですが、クログチはほとんど見ることがありません。でも、体長が30㎝以上のものだと脂がのっていて、結構美味いんですよ。特に皮と身の間に旨みがあるので、タタキ風にしてみました。

釣り上げたら、締めて2~3日熟成させています。比較的水分の多い魚なので、薄塩をして脱水シートに1~2晩挟み、味を凝縮させるといいと思います。

クセのある魚ではないですが、少し香りが欲しかったので、皮と身の両面を炙った後に10秒ほど燻しています。煙の香りが強く付きすぎると、えぐみが感じられるので、炎に当てる感じで極短く。ほんのりと燻製香をまとわせています。

初夏らしい仕立てを、と考えて、梅酢あんを合わせました。銀あんをベースに、実家で漬けた塩っ辛い梅干しを叩いて合わせ、梅酢と甘夏の果汁で清涼感と甘み、玉味噌でコクを加えました。クログチにしっかりと絡むよう、さらに大根おろしも加えています。

食感もプラスしたいな、と思って、干し筍のきんぴらと、土佐酢に漬けた切り干し大根を添えました。干し筍は、僕の故郷の熊本の特産品なんですよ。大きく育った筍を薄切りして下茹でし、天日で干すのですが、アクもなく香ばしくて美味しい。うちでは自家製しています。

ちなみに赤カブの酢漬けは、梅干し同様、うちの実家で作ったもの。彩りに、と添えたんですが、食感もあって、いいアクセントになりました。

osa0015-1c「初めて食べた!」という会員が大半で、クログチの特徴や扱い方などの質問が後を絶たなかった。ベテラン会員からも好評で、「燻製の香りと梅や甘夏の風味がよく合う」「柑橘による丸さのある酸味が良かった」「クログチがもちっとしているので、干し筍などの食感のアクセントが利いている」という感想が聞かれた。

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