【レシピ付き】アイゴと半田素麺の目箒(めぼうき)和え——『懐石料理 雲鶴』島村雅晴さん作
未利用魚の利用促進などの漁業支援も行っている東天満『懐石料理 雲鶴(うんかく)』の島村雅晴さん。7月の発表はSDGsがテーマとあって、島村さんが選んだ食材は、故郷・和歌山でもよく網にかかるというアイゴ。市場に出回ることのない未利用魚です。骨でだしを取り、身は具の主役に。ジェノベーゼパスタのイメージで目箒(バジル)の青々しい香りとトマトのフルーティーな酸味に、コシのある半田素麺を合わせて、夏らしい爽やかな一品に仕立てました。
※大阪料理会 公式サイトhttps://osakaryourikai.com/
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島村雅晴さん(大阪・東天満|『懐石料理 雲鶴』店主)
1977年生まれ、和歌山県出身。北新地『北瑞苑』で9年修業し、2005年に28歳で独立。7年後、東天満に移転。古文書などを読み、日本の古き佳き文化を独学する一方で、科学的アプローチも取り入れる、柔軟で探求心旺盛なお人柄。培養肉の研究開発ベンチャー「ダイバースファーム」、養殖を支援し、海里の環境保全に努める「RelationFish」などを共同経営。
未利用魚・アイゴの“青い香り”を生かして、ジェノベーゼ風の麺料理に
アイゴは楕円形の平たい魚体で、背ビレと尾ビレに毒を持つ鋭いトゲがあります。その上、磯臭い、青臭いと敬遠されて市場に出回ることがない未利用魚です。
ですが、神経〆してすぐに内臓を除くなど適切な下処理を施したら、強い旨みとプリンとした弾力を味わえる魅力的な魚。食材を無駄にしないSDGsの観点や漁業の応援を兼ねて、大阪料理会の仲間たちと運営する会社で大学とアイゴ養殖の共同研究をしていて、店でも愛用しています。
独特の青臭さは、新鮮な鮎にも似たニュアンス。この香りをごまかすのでなく、個性的な美味しさとして私は食べ手に伝えたい。
その提案の一つとして、今回は同じ系統の香りを重ねる手法で味に深みを出しました。
ソースに使っている目箒とは、熱帯アジア原産であるバジルの和名。アイゴもバジルも温暖な気候で育つ。似た環境で育った食材は、自然と相性が良いんですよね。
イメージはジェノベーゼソースのパスタ。オリーブ油を太白ゴマ油に代えることで目帚の香りが引き立って、グッと和の趣が生まれます。
旨みが強いアイゴは骨からとてもいいだしが取れるので、麺つゆに使いました。中骨は捌いてからひと晩置くと、臭みが抜けて美味しさだけが残ります。これを焼いてさらに2時間置き、香ばしいだしを取りました。
アイゴに負けないむっちりとした弾力のある半田素麺に、このアイゴだしの麺つゆを絡めて下味を入れておくことで、味に一体感が出るだけなく、アイゴの存在感をしっかり主張する一皿になります。
身の方も塩をしてひと晩寝かせることで、臭みを抜いて旨みを上げます。プリっとした皮の弾力を生かすために、ウロコを付けたまま使うのがポイント。ウロコを外すと身が途端に柔らかくなってしまうので気を付けてください。
仕上げのトマトは、程よい酸味と甘みで味を引き締める役割。食感や香りも生かしたいので、火入れは最小限に留めました。
今回は冷製でお出ししましたが、季節に合わせて温製でも美味しくできます。アイゴの骨で取るだしも幅広く活用できますので、いろいろ試していただけると嬉しいです。
アイゴを漁業現場で下処理してもらうことは、商品価値を生み出すだけでなく、内臓などを肥料などにも活用しやすくなるという利点もあると説明する島村さん。会員の誰もが、「こんなに美味しい魚とは思っていなかった。イメージが変わった」と驚きを見せ、自然と意見交換も活発に。どこまでを個性ととらえて残すべきかが課題である中、その答えの一つが見つかったと賞賛する声も上がった。
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