大阪料理会

【レシピ付き】あかねこづくし——広里貴子さん作

ごちそうプロデューサーの広里貴子さんが、SDGsというお題を受けて今回テーマにした食材は“あかねこ”。なにわの伝統野菜の一つ、毛馬(けま)胡瓜がオレンジ色に完熟したもので、知る人ぞ知る存在です。「市場には出回らず、廃棄されることもある食材ですが、熟れた瓜独特の持ち味があって美味しい!」と、広里さんは幅広い活用法を提案。果肉をすりおろしたかさね寄せのほか、せん切りして毛馬胡瓜のすり流しで和えた涼しげな素麺仕立て、柔らかくなるまで炊いて特製もろみをのせた煮物の計3品を披露しました。


※大阪料理会 公式サイトhttps://osakaryourikai.com/

聞き書き:川島美保 / 撮影:福本 旭
広里貴子さん(大阪・大正|『貴重』)

大阪市出身。ごちそうプロデューサー。辻󠄀調グループ校卒業後、同校の日本料理技術講師を9年間務め、2006年にkicho(有限会社貴重)設立。NHK連続テレビ小説の料理指導や、商品開発、料理講習など広く活躍している。海里の環境保全に努める「Relationfish」取締役兼務。https://www.relationfish.com/

加熱すると美味しい“あかねこ”を、3種の食感で表現しました

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“あかねこ”は、簡単に言うと育ち過ぎた毛馬胡瓜。日が経つにつれ果皮が硬くなると共に、オレンジ色になるんです。大きいものだと全長50㎝ほど。まるで寝そべった猫のように見えることから、赤猫(あかねこ)と呼ばれるようになったと言われています。可愛らしい呼び名ですよね。

種が大きく、皮も果肉も硬いので生食には向かないとされ、サイズも不揃い。市場には出回らず、生産者の間で消費するか、廃棄されてしまう食材ですが、キュウリ特有の青臭さが少なく、加熱することでとろんとした口あたりになって美味しいんです。今回は、皮も種も生かしつつ、見た目も食感も異なる3つの料理を考えてみました。

一つ目は、シンプルな煮物。冬瓜に似たあっさりした味わいなので、白い果肉部分で仕込んだ“あかねこもろみ”で、こっくりした旨みを添えました。このもろみは、野菜に添えてもいいし、焼き魚や田楽にも使えますよ。

二つ目は、皮と実をそれぞれ寒天で異なる硬さにして重ねて寄せ、突き出しにも使える冷菜に。種と生麹、塩と合わせて“あかねこ麹”を作り、塩代わりの調味料として用いました。まろやかな旨みと塩気があるので、肉や魚の下味にも活用いただけると思います。

三つ目は、「あかねこ親子素麺」。果肉部分を使った素麺仕立てです。片栗粉にレンコン粉を同割で合わせた粉をまぶしてからサッと湯がくことで、のど越しも風味もよく仕上がります。あかねこになる前の毛馬胡瓜の青く清々しい香りを生かしたすり流しを合わせました。

味が単調にならないよう、塩玉ネギでさりげなく甘みと旨みを底上げしているのがポイントです。上に飾っているのは素揚げしたあかねこの皮。硬い皮もこうすると、香ばしく、カリカリとした食感に。印象的な薬味になったと思います。

大きすぎたり形が悪かったりするものも、寄せ物や素麺に仕立てれば、気にならなくなります。大粒で使い勝手の悪い種は生麹と合わせることで、10日は日持ちする面白い調味料になる。「捨てない」ことを前提に考えると、いろんなアイデアが湧いてくると思います!

osa0018-3cあかねこには大量の種があり、これをどう生かすか?が課題の一つだったと語る広里さん。見た目美しく夏向きな「あかねこ親子素麺」や、予想以上に旨み豊かな「あかねこもろみ」をぜひ作ってみたいと言う声が上がった。「キュウリ独特の青臭さがなくて食べやすい」という感想が聞かれた一方で、「香りをもう少し残しても良いのでは?」「珍しい食材なので、食材の姿が分かる料理があると、より訴求力が高まるのでは?」という意見も出て、発表は盛り上がりを見せた。

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