大阪料理会

【レシピ付き】筍饅頭 鳴門仕立て——『旬菜 味空-みそら-』筒井宏樹さん作

ムスリム(イスラム教徒)は世界の人口の約4分の1を占めています。しかし、ムスリムが食せるハラール(ハラル)料理には厳しい規制があるため、日本では対応可能な飲食店が限られています。『旬菜 味空-みそら-』店主の筒井宏樹さんは、ムスリムの方々にも和食を楽しんでいただきたいと、2023年から始まった「一般社団法人ムスリムフレンドリー国際協会」の「ハラール対応調理師講習修了証」を取得。初の発表となった今回、筍饅頭をハラール対応料理に仕立てました。会員から多くの質問がなされ、ハラールへの関心の高さが伺えました。

※大阪料理会 公式サイトhttps://osakaryourikai.com/

聞き書き:中本由美子 / 撮影:福本 旭
筒井宏樹さん(大阪・千鳥橋|『旬菜 味空-みそらー』店主)

1978年、愛知県西尾市生まれ。高校卒業後、調理師派遣やケータリングなども行う大阪・港区の日本料理『菜花野(なかの)』に就職。2016年、『旬菜 味空-みそらー』を開店。「食の都・大阪グランプリ」に7回入選(第2回は和食・日本料理部門優勝)、19年にはグランド・チャンピオンに輝いた。「庖寿会調理師紹介所」会長、「一般社団法人大阪府日本調理技能士会」理事。「大阪料理会」には23年より参加。

ハラール対応の入門編「ムスリムフレンドリー」の範囲で仕立てた筍饅頭です

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妻の実家が『菜花野』という料理屋を営んでいるのですが、イベントやケータリングも手掛けていて、万博向けのハラール対応の弁当を作る計画をしているんです。それで僕もハラールについて勉強しようと思いました。

現在、日本には、できる範囲でムスリムの方々に配慮ある料理やサービスを提供しようという「ムスリムフレンドリー」という基準があります。ハラール対応調理師講習セミナーなども活発に行われ、日本の環境に合わせたハラール対応が進められています。

うちではハラール対応調理師講習を受け、修了書を得ましたので、今回はハラール対応の日本料理を仕立ててみました。

日本のお料理は、ムスリムの方にも大変喜ばれています。魚は天然物、牛肉はハラール屠畜した国産牛を使用し、血が滴(したた)り出ないように調理すればお出しできます。豚だけは絶対にダメで、豚肉など非ハラール食のものに用いた庖丁やまな板、食器などを使うことも厳禁。アルコールもNGなので、今回は調理酒やみりんを使わずに仕立てました。

春の日本料理には筍が欠かせません。そこで今回は、筍饅頭を作りました。うちでは、糠(ぬか)は使わず、昆布だしで筍を茹でています。この茹で汁には筍の風味が溶け出ているので、捨てるのはもったいないと思って、昆布を足し、さらに追いガツオをしてだしを引きました。酒精・アルコールの記載のない淡口醤油と塩で味を付け、筍をしっとりと煮ています。

この筍を粗みじん切りにして、ゆり根と山芋の生地に加え、色づく程度に植物油で揚げています。この時季に出てくる生ワカメのあんをかけて、鳴門仕立てとしました。ワカメの風味と塩分に負けないよう、吸い地の一番だしは濃いめに引き、筍の煮汁で味を付けて一体感を出しています。

osa0025-3c「ハラール料理は制限が厳しすぎて…」と、ほぼ全会員が今まで尻込みしてきた様子。今回の発表には皆、興味津々で、熱心に筒井さんの話を聞き、多くの質問が飛んだ。「筍の存在感が少し弱かったけれど、饅頭生地はふわっとしていて、ワカメのあんともよく合っていた。ハラール対応で、これほどきっちりとした日本料理ができるということがよく分かった」と、畑 耕一郎会長が総括した。

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