大阪料理会

【レシピ付き】ガシラペーストと干し筍の強飯——『割烹くぼた』久保田 博さん作

釣り名人の西天満『割烹くぼた』久保田 博さんが提案する魚介料理は、大阪料理会で常に注目の的。今回は、小さなガシラ(カサゴ)を有効活用した独創的な一品を披露しました。ウロコと内臓以外は、骨も皮も使ってペーストに。もち米を加えて炊いたご飯で巻き、棒寿司のように仕立てました。寿司ネタに見立てたのは、久保田さんの故郷・熊本の保存食・干し筍。シャクシャクとした食感と独特の風味に、多くの会員が関心を寄せていました。

※大阪料理会 公式サイトhttps://osakaryourikai.com/

聞き書き:中本由美子 / 撮影:福本 旭

目次

久保田 博さん(大阪・西天満|『割烹くぼた』店主)

1977年、熊本県球磨(くま)郡生まれ。北新地『味菜(あじさい)』で3年の修業を経て、オランダの『ホテル オークラ アムステルダム』、東京や西宮の和食店で腕をふるう。再び『味菜』に戻り、2010年、『割烹くぼた』を開店。九州の食材を大阪料理会で紹介するなど故郷愛あふれる人情家。大阪料理会きっての釣りキチとしても知られる。

小さなガシラを丸ごとペーストにして強飯で巻き、故郷の干し筍と棒寿司風に

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ガシラは年中釣れるんですよ。造りにして旨い大物を狙うのですが、体長20cm以下、200~300gの小さなガシラばかり釣れることがあるんですね。底物なので、釣り上げると内臓が出てしまうためリリースできないし、一尾ずつ捌くのも大変。そこで、ペーストにすることを思い付きました。

どんな魚にも特有の風味があるでしょう。身だけを使ってペーストにしても、その個性が生かされないので、骨も皮も使いました。捨てるのは内臓とウロコだけです。

osa0028-1c兵庫の香住(かすみ)で久保田さんが釣り上げたガシラ。300g以下の小さなものが20尾以上。これを用いてペーストを作ったという(画像提供:久保田 博)。

ウロコを取って内臓を出したら霜降りし、酒と水に浸して約3日、営業中は蒸し器を別の料理に使うこともあるので、入れたり、出したりしながら、計24時間くらい蒸しました。

あとは骨ごとブレンダーにかけ、濃口醤油や赤酒などで味を付け、少し汁気が残るくらいまで煮詰めたら完成です。僕は熊本出身なので、調味に赤酒を使っています。酒とみりんの両方の役割を果たしてくれる上、弱アルカリ性なので魚の身が締まることなく、ふっくら仕上がる利点もあるんですよ。

このガシラペーストを強飯(こわいい)と合わせて棒寿司のようにしました。強飯と言っても蒸すのではなく、炊飯器で炊いたものですけどネ。まとまりが出て、なおかつ口の中でほぐれるように、もち米とうるち米を2:1で合わせています。

寿司ネタのように上にのせたのは、干し筍です。これも故郷の名産で。小さい頃は、筍のシーズンが終わると、どこの家でも茹でた筍を干していました。旨みがぎゅっと凝縮していて、独特の歯ごたえもあって、美味しいものです。水で戻したら、水を変えて茹でます。これを薄味で炊きました。炊く前に軽く揉むと柔らかく炊き上がりますよ。

冷やした銀あんをかけてお出しするのですが、木の芽の香りがよく合うので、大きな葉も添えました。5月末になると山椒の葉も立派に育つでしょう。そのリアルな旬味を楽しんでいただけたらと思います。

osa0028-1d「味噌味を付けようかとも思いましたが、醤油ベースにしてシンプルにガシラの持ち味を引き出しました」という久保田さんの試みが好評を得た。「ガシラは骨が硬くて身が少ない難しい魚。それを骨ごと食べさせる工夫をしたのが大阪的で素晴らしい」とは、ベテラン会員のコメント。「ガシラの風味が生かされていて、干し筍の食感ともよく合っている。飯蒸し風に温かく提供するのもアリだし、強飯を寿司飯にしてもいい」と畑 耕一郎会長も言葉を重ねた。

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