【レシピ付き】キノコ料理vol.1香茸飯蒸しの名脇役は“甘くない”栗の渋皮煮
10月末に開催された大阪料理会のテーマは「キノコ」。高槻の山奥で営み、“山の料理”を謳う『心根』店主の片山 城(きずく)さんは、希少な香茸を選び、秋らしい飯蒸しを仕立てました。乾燥させることでより風味を増した香茸を佃煮風に煮て、おこわと混ぜ合わせ、シャクシャクとした食感をより鮮やかに。ひと際目を引く立派な栗は、片山流の渋皮煮。その独自の手法に注目が集まりました。
※大阪料理会 公式サイト https://osakaryourikai.com/
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片山 城さん(大阪・高槻|『心根』店主)
1975年、大阪府交野(かたの)市生まれ。高校時代に「旅館をやりたい!」という夢を持ち、大学で法学を学ぶ。法律事務所に1年務めた後、「料理ができなアカン」と、『魚匠 銀平』など居酒屋や魚料理店で約10年修業を積み、2009年に枚方に『心根』を開店。そして2018年に大英断。高槻駅から車で30分の山間部に移転、古民家を改装し、リスタート。地元の山の幸を主とした“鄙(ひな)のもてなし”で人気を博す。
『心根』片山 城さん作 香茸と木の実の飯蒸し
うちは高槻の山奥の料理屋なので、お客様に“山の料理”をお楽しみいただいています。香茸はこの時季、うちでは欠かせない素材。その名の通り、とても香りの強いキノコで、希少な高級食材です。
香茸を混ぜ合わせた飯蒸しに、栗、ムカゴ、銀杏など秋の味覚を合わせ、紅葉を思わせるイクラの醤油漬けを加えています。近くで摘んできた山野草を飾り、より“山の料理”らしく仕上げました。全体を混ぜ合わせて召し上がっていただけたらと思います。
左がセイタカアワダチソウ。花粉症の原因にもなるキク科の多年草だが、「蕾(新芽)が美味しいんです」と片山さん。春菊をワイルドにしたような味わい。右が、秋の季語にもなっている山野草のミゾソバ。「グレープフルーツのような風味が特長です」。
香茸は乾燥させて、より香り豊かに
「香茸は乾燥させるとより香りが増し、独特の苦みが和らぐ」とキノコ名人に教えらもらって以来、うちでは温風乾燥機を使って乾物にし、真空保存しています。
乾燥させる際は、山の香気を生かすため、水洗いせずにそのまま使います。その代わり、一晩水で戻したら、ぬるま湯で数回洗います。これを刻んでから、マグロ昆布だし・砂糖・濃口醤油で煮て、佃煮のようにしています。
飯蒸しに軽く混ぜ合わせ、むっちりとしたもち米と一緒に味わっていただくことで、シャクシャクッとした香茸特有の食感が引き立つと思います。
甘みを抑え、栗らしさを際立たせた渋皮煮
今回、陰の主役というか、ぜひ皆様に味わっていただきたかったのが、栗の渋皮煮です。
新鮮で立派な銀寄栗(ぎんよせぐり)を入手しているのですが、採れたては水分量が多いので、1週間くらい冷蔵庫で寝かせて、水分を飛ばしてから使います。
栗の香りを生かすために、独自のやり方で渋皮煮にしています。2回くらい茹でこぼしてアクを抜いて使う、というのが定石ですが、私は30秒茹でるだけ。その代わり、耐熱容器に入れて毛布でくるみ、ゆっくりゆっくり冷まし、余熱で火を入れていきます。
蜜煮にする際も、火入れは最小限に。かぶるくらいの薄蜜で煮て、1割ほど減ったな、というくらいで火を止めます。甘みを極力抑えることで、栗本来の風味を楽しんでいただけると思います。この火入れだと栗が割れないのも利点。ただ、日持ちはしないので、おせち用の渋皮煮は別の方法にしています。
地浸けは薄味で、素材感を生かす
ムカゴは素揚げにして浸し地に浸けていますが、ムカゴらしい風味を損なわないよう、浸し地はマグロ昆布だしにわずかに塩を加えるだけに留めています、三ツ葉の方は、浸し地に調味料を加えていません。
私は、地浸けする時に浸し地に醤油やみりんで味を付けることはほとんどなく、ごく少量の塩を加えるくらいにしています。素材感を生かしたいという想いが強いのだと思います。
香茸の芳しさが会場全体に広がり、その香りの高さに会員が驚く中、試食と発表がスタート。乾燥の度合いなど多くの質問が集まった。最も関心度が高かったのは、片山さん流の栗の渋皮煮。「茹でこぼしもしていないのに、硬さも渋みもない。栗らしさが強調されている」と絶賛。余熱で火を入れる手法が注目を浴びていた。
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