大阪料理会

【レシピ付き】フグの頭と皮を使い切り、てっちりを一椀で表現

鱧とスッポン、フグを専門に商う『法善寺 浅草』の辻 宏弥さん。今回は“フグの使い切り”をテーマに、「余りがちなフグの頭と皮を使って、てっちりを椀物で表現してみました」。フグの飛竜頭(ひろうす)の下にはお粥のペースト。その下には、フグ皮のポン酢漬けが潜んでいます。食べ進めるごとに表情を変える仕掛けが、会員の関心を集めていました。


※大阪料理会 公式サイトhttps://osakaryourikai.com/

文:中本由美子 / 撮影:福本 旭

目次

辻 宏弥さん(大阪・法善寺|『法善寺 浅草』店主)

1978年、大阪生まれ。同志社大学法学部を卒業後、銀行員を経て、『神戸たん熊』で日本料理の世界へ。2011年、昭和12年創業の『法善寺 浅草』に入り、17年、四代目店主となる。持ち前の勤勉さで、スッポン・フグ・鱧料理を得意とする割烹の料理を進化させ続けている。

『法善寺 浅草』辻 宏弥さん作 ふぐ飛竜頭椀 てっちり仕立て

昔から大阪では「フグを食べないと年が越せない」と言われていて、有難いことに師走はてっちりコースが人気です。すると、頭と皮がどうしても余ってきます。大阪料理会でもフグをお出しする会員が多いと思いますので、専門店らしく、この余った部分を使い切れるような一品を考案しました。

今回は、うちで唐揚げなどに使う1.5㎏サイズのフグの頭と皮を使います。トゲのある皮を引くのは大変なので捨ててしまう…という話をたまに聞くのですが、尾の部分にはトゲがないので、皆さんも使いやすいと思って、ここを活用しました。約8尾分で、ちょうど25人前くらいのお椀ができると思います。

フグのだしを要所に使って

フグの頭は酒蒸しにすると、残った蒸し汁がとても美味しいんです。この蒸し汁に約8倍量の昆布だしを合わせ、フグだしとしました。ポイントはしっかり濃厚な昆布だしを引くこと。昆布と共に頭を煮出すより、ずっと濃厚なだしが取れるんですよ。

今回は、吸い地だけでなく、お粥を炊いたり、フグ皮に下味を入れたりと、このフグだしを要所に使っています。

フグの飛竜頭とフグ粥で“てっちり”を表現

てっちりをヒントにお椀を考えたので、フグの身や豆腐を味わい、その後、雑炊へという流れを作ろうと思いました。だしを取った後の頭の身をほぐして豆腐を合わせ、飛竜頭にしています。

生地には、木綿豆腐と絹ごしのちょうど間くらいの「嵯峨豆腐」を使いました。もちっとした食感がほしかったので、レンコンのすりおろしを加えています。

雑炊は、フグだしで炊いたお粥で表現。てっちりは白菜も一緒に炊くので、うちではお粥に白菜の風味を付けて炊いていますが、今回は“フグの使い切り”をテーマにしているので、要素を搾って、シンプルにフグだしだけで炊いています。

椀物にするので、吸い地と混ざりやすいように、お粥はペーストにしました。椀に敷いてから飛竜頭をのせ、吸い地を注ぎ入れると二層になって見た目もきれいに仕上がったと思います。

フグの皮をあしらいと味変に

椀種の飛竜頭には、ひと目でフグを使っていると分かるように皮をあしらいました。トゲのない尾の部分の表皮を湯引きし、飛竜頭のサイズに合わせて切り出し、フグだしに一晩漬けて下味を入れています。

切り出した残りの表皮は、ポン酢漬けにしています。
以前、名古屋の有名なフグ専門店『可ん寅(かんとら)』さんで、てっちりをいただいた時、雑炊と共にフグ皮の湯引きのポン酢漬けが供されて、すごく美味しくて感動したんです。

フグ皮は水分をよく吸うので、ポン酢に漬けるとしっかりと吸収して、きれいな琥珀色になります。これをお椀のアクセントにしようと考えて、椀の底に忍ばせました。食べ進めると最後に出てきて、味変になると思います。

お粥ペーストとフグだしが二層になった吸い地、フグ皮で包んだ飛竜頭が美しいと好評を博した。「食べ進めるとお粥が雑炊を思わせ、最後にフグ皮のポン酢漬けが出てくるストーリー性がいい」というコメントが多々。ベテラン会員からは、「お椀ではなく、蒸し物にしてもよいのでは?」というアドバイスも。

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