和食を科学する料・理・理・科

だしの多様性vol.4玉露だしをクリアに!

江戸前蕎麦の名店『総本家 更科(さらしな)堀井』の堀井良広さんは、vol.3の実験で玉露だしの可能性に開眼。カツオ鯖だしに玉露を加えて常温で4時間抽出すると、グルタミン酸のうま味が加わり、ぐっと深みのあるだしになります。課題は、濁りと渋みが強すぎること。その解決策として、農学博士の川崎寛也先生がアイス・フィルトレーションを提案し、見事に玉露だしがクリアに! 新作「レモン蕎麦豆腐 玉露だしがけ」が完成しました。

文:中本由美子 / 撮影:綿貫淳弥

目次

堀井良広さん(東京『総本家 更科堀井』日本橋高島屋店店長)

1996年生まれ。実家は、寛政元(1789)年に創業した江戸前蕎麦の名店『総本家 更科堀井』。長男は経営、次男の良広さんは料理の道に。立命館大学を卒業後、22歳で京都の料亭『菊乃井』に入店し、日本料理を学ぶ。サラリーマンを経て、2022年に『更科堀井』に入店。翌年、日本橋高島屋店の店長に。明るくポジティブで、研究熱心な29歳。

川崎寛也さん(農学博士)

1975年、兵庫県生まれ。京都大学大学院農学研究科にて伏木 亨教授に師事し、「おいしさの科学」を研究。「味の素㈱」食品研究所エグゼクティブスペシャリストであり、「日本料理アカデミー」理事。「関西食文化研究会」での基調講演でも活躍している。専門は、調理科学、食品科学など。近著に「おいしさをデザインする」「味・香り『こつ』の科学」(柴田書店)、「日本料理大全シリーズ」(日本料理アカデミー)。

玉露だしの濁りと渋みの原因

堀井良広(以下:堀井)
前回の実験で、うちのカツオ鯖だしに玉露を加えた玉露だしにすごく可能性を感じました。ですが、濁りも渋みも強くて…。今回は、この課題を解決したいです!

6つの実験のうち、堀井さんが最も可能性を感じたのは、カツオ鯖だし250mlに玉露12gを合わせ、常温で4時間抽出したもの。『総本家 更科堀井』のカツオ鯖だしの取り方はvol.1参照。

川崎寛也(以下:川崎)
お茶が濁る大きな原因のひとつは、茶葉の微粒子によるものです。渋み成分のカテキンは液体にも溶けますが、細かい茶葉の粉の中や表面にも残っています。ですから、その粉を取り除くと、濁りだけでなく渋みもかなり取れるんです。
堀井:
あまり気にしていなかったですが、確かに玉露には細かい粉がありました。リードペーパーで漉すくらいでは、濁りは取れないんですね。
川崎:
玉露だしにはペーパーを通り抜けるような細かな濁りもあります。そこにはカテキン、カフェイン、たんぱく質、多糖類などが関わることがあるので、リードペーパーだけでは完全に透明にはなりにくいんです。
堀井:
トマトの場合はミキサーにかけてリードペーパーで漉せば、クリアなトマトウォーターが取れますよね。
川崎:
リードペーパーの上に残ったものは、果肉、皮、種のまわりの組織、細胞壁のかけらです。その果肉の層が細かい固形物や赤い色のもとを抱え込むんですね。果肉がフィルターのような働きをすることで、リードぺーパーで漉すだけでも比較的澄ませやすいんです。
堀井:
玉露には果肉がないですよね。どうしたら濁りが取れますか?
川崎:
ちょっと面倒ですが、アイス・フィルトレーション(凍結濾過)をやってみますか。

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