11月の献立づくりに役立つ記事|海老芋・カニ・アマダイ・炉開き【和食・日本料理】
紅葉が深まり、暦の上では冬を迎える11月。日本料理では、松茸など秋の食材が名残を迎える一方、海老芋やカニなど冬の味覚が登場し、献立も晩秋から初冬へと移り変わっていきます。また、茶の湯では「茶人の正月」ともいわれる炉開きの時季。料理や器にその趣向を取り入れるのも、この月ならではです。WATOBIでは、旬の食材を生かした料理やプロならではの調理技術はもちろん、歳時を料理に映す工夫や、人気料理店が実際にどのように11月の献立を組み立てているのかも紹介しています。今回は、11月の献立づくりに役立つ記事をテーマ別にご紹介します。
11月の炉開き。「茶人の正月」を料理で表現する
11月は、茶の湯で「炉開き」が行われる時季。5月から10月まで使っていた風炉から、畳に切られた炉へと移り、新たに火を入れます。特別な節目であることから「茶人の正月」とも表現され、料理屋でも献立や器にその趣向が取り入れられます。
大阪『本湖月』では、炉開きの月に合わせて、秋草が描かれた華やかな秀衡(ひでひら)椀を煮物椀として使用。椀種もカニ身をホタテのすり身でまとめた真丈と豪華にしながら、あしらいはすっきりとさせています。器も料理も華やかにしすぎず、引き算することで品よく見せる考え方は、祝いの料理を組み立てる際にも参考になります。
撮影/竹中稔彦
京都『飯田』では、子孫繁栄の象徴であるウズラの雑煮をいただく習わしを一ひねり。椀種にウズラを使いつつ、銀杏をもち米と炊いて「銀杏餅」に。雑煮を思わせる仕立てにすることで、歳時をさりげなく料理に映しています。
撮影/岡森大輔
行事そのものを料理で再現するのではなく、その意味を汲み取り、食材や器、仕立てに取り入れる。11月の献立に季節を映すヒントになりそうです。
▼大阪『本湖月』の「深まる秋を映す、“華”と“侘び” の器」の記事はコチラ
▼京都『飯田』の「色使いで描く錦秋」の記事はコチラ
海老芋がおいしい季節。プロに学ぶ秋冬の料理
撮影/内藤貞保
晩秋から冬にかけて旬を迎える海老芋。きめ細かな身質と、ねっとり、むっちりとした食感、ほのかな甘みが持ち味で、煮物はもちろん、揚げ物などにも展開できます。
京都『瓢亭』では11月頃から1月頃まで海老芋を使い、昔ながらの仕事を踏まえた「蒸し煮」と、唐墨と柚子を忍ばせた「海老芋コロッケ」の2品を紹介しています。
煮物では、煮汁の中で長時間炊くのではなく、八方だしに浸した海老芋を90℃で蒸して火を入れ、そのまま一晩置いて味を含ませます。煮崩れを防ぎながら形よく仕上げるための工夫です。
一方、コロッケは海老芋をオーブンで焼いて香りと甘みを引き出してから裏漉し。唐墨の塩気と柚子の香りをアクセントにしています。同じ海老芋でも、火入れを変えることで異なる魅力を引き出しています。
撮影/内藤貞保
▼京都『瓢亭』の「海老芋の煮物」と「海老芋コロッケ」のレシピはコチラ
さらに「料理理科」では、海老芋を煮崩れさせず、味を含ませるための火入れを実験。50~60℃で下蒸ししてから高温で火を入れる方法を検証しています。低温帯での加熱が組織や甘みにどう影響するのかを知れば、感覚だけに頼らない調理につながります。
撮影/香西ジュン
▼「煮崩れさせない海老芋の炊き方は?」の記事はコチラ
11月から始まるカニの季節。冬の味覚を献立に
11月になると、日本海側ではズワイガニのシーズンが始まり、日本料理の献立にも冬らしさが増していきます。カニはそのままでも存在感のある食材ですが、調理法や合わせる食材によって、甘みや旨みの印象は大きく変わります。
大阪『美味旬菜 みずどり。』が提案するのは、ズワイガニと白子を組み合わせた「カニチャーハンの白子あん」。カニ身を使ったチャーハンに、だしの中でタラの白子を溶き、葛でとろみをつけたあんを合わせます。
ポイントは白子の火入れ。約60℃のだしの中で白子を溶きほぐし、ダマや分離を防ぎます。濃厚なカニと白子に、スダチを使ったポン酢で酸味を添えて味を変化させる構成も、冬の料理を重たく感じさせない工夫として参考になります。
撮影/東谷幸一
▼大阪『美味旬菜 みずどり。』の「カニチャーハンの白子あん」のレシピはコチラ
京都『而今 平たて』では、冬の京都でお馴染みのカブラ蒸しに、コッペ蟹を合わせます。甘みのある聖護院蕪のすりおろしに、卵白とカニの胴のほぐし身を加え、カニの甲羅に内子や脚身と共に盛って蒸し上げます。仕上げには、カニの殻から取っただしのあんをかけ、外子を添えて。あえて銀杏やキクラゲなどを加えず、カニとカブに要素を絞ることで、冬ならではの出合いを際立たせています。
撮影/高見尊裕
▼京都『而今 平たて』の「コッペ蟹のカブラ蒸し」のレシピはコチラ
大阪『翠』では、ズワイガニを造り、炭火焼き、しゃぶしゃぶ、天ぷらなど仕立てを変え、それぞれに合うワインを検証。生のカニにはミネラル感のある白、香ばしく焼いたカニにはタンニンを感じるオレンジワイン、だしの旨みが加わるしゃぶしゃぶにはピノ・ノワールなど、調理法によって相性のよいワインも変わります。カニの強い旨みや甘みを、ワインの酸や香り、渋みでどう引き立てるか。カニ料理とワインのペアリングを考えるヒントを紹介しています。
撮影/太田恭史
▼「ワイン×カニ。強い旨み・甘みを酸で引き立たせる」の記事はコチラ
秋冬の甘鯛を味わう。焼く・蒸す・締めものに
京都で「グジ」とも呼ばれ、古くから珍重されてきた甘鯛。WATOBIには、焼物や蒸物、締めのご飯物まで、甘鯛の持ち味を生かしたさまざまな料理があります。
京都『浜作』の「グジの若狭焼」は、一般的な若狭焼とは異なり、身をしっとりと仕上げるのが特徴です。皮目から炭火で焼き、7割ほど火を入れたら返して身を焼き、最後の火入れはグジの頭と昆布から取った「若狭地だし」で約15秒。調味料を塗り重ねるのではなく、魚そのものの旨みを生かしただしで最後の火入れをすることで、上品な味わいに仕上げます。
撮影/Rina
▼京都『浜作』の「グジの若狭焼」のレシピはコチラ
秋らしい景色を料理に映すなら、北新地『さか本』元大将・坂本靖彦さんの「甘鯛丹波蒸」も参考になります。塩をして身を締めた甘鯛を下蒸しし、メレンゲを繋ぎにして薄切りの栗を鱗のように並べ、再び蒸し上げます。脂ののった甘鯛に栗のほのかな甘みを重ねた、11月らしい一品です。
撮影/福本 旭
▼大阪『さか本』の「甘鯛丹波蒸」のレシピはコチラ
京都『杢兵衛(もくべえ)』では、造りや椀物に使ったグジの頭まで生かして、焼きおにぎりのだし茶漬けに。頭をしっかり焼いて香りを高め、身をカブ菜漬けと共にご飯へ混ぜ込みます。原木ナメコとカキノキダケの自然なとろみを生かしたキノコだしをかけ、イクラを添えれば、晩秋の食材の贅沢なご飯ものになります。
撮影/東谷幸一
▼京都『杢兵衛』の「グジ焼きおにぎりのだし茶漬け」のレシピはコチラ
人気日本料理店に学ぶ、11月の献立の立て方
11月は、暦では冬を迎えますが、体感としてはまだ晩秋。紅葉が深まり、松茸が名残を迎える一方で、カニをはじめとする冬の食材が登場します。さらに、暖かな日もあれば急に冷え込む日もあり、料理の温度にも気を配りたい時季です。
京都『衹園さゝ木』の11月の献立会議では、まさにその難しさが話題になります。
スタッフから「寒くなってきたので、温かい玉締めから始めたい」という案が出る中、大将・佐々木 浩さんが着目したのは、11月の気温の振れ幅。冷蔵庫から出したような冷製でも、冬のような熱々の料理でもなく、「常温の先付」を提案します。そこに温かいあんをかけるなど、晩秋から初冬へ向かう時季に合う温度を探ります。
食材の移り変わりも重要です。11月前半は名残の松茸を生かし、月半ばからはカニへ。秋本番の「錦秋」をテーマに、八寸では紅葉の景色を表し、お椀には甘鯛を。焼き物には脂がのった鰻を選び、鉢物ではキノコをたっぷり使った料理を考えます。
そして『銀座 小十』では、カニのシーズンだからといってカニだけを主役にせず、伊勢海老、赤ムツ、キンキ、天然鰻なども取り入れます。季節の目玉食材だけに頼らず、さまざまな旬を組み合わせることでコース全体の魅力をつくる考え方です。
11月の献立では、「今、何が旬か」だけでなく、秋から冬へと季節がどう動いているのかを捉えることも大切です。食材、温度、器、色彩、そして料理の強弱。名店の献立には、移ろう季節を一つのコースに落とし込むためのヒントがあります。
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