今月の和菓子

4月の和菓子――蹴上のつつじ

花鳥風月を表現し、添える菓銘で趣きを深める和菓子に“意匠の技”あり。そんな伝統の技とモダンな感性が冴える西陣の菓子司『千本玉壽軒(せんぼんたまじゅけん)』三代目・元島真弥さんに、菓銘の由来や発想の着眼点についてお教えいただきます。第1回目は、4月の絶景を移したきんとんから。

文:小林明子 / 撮影:岡森大輔

「京都市民が愛する、花の名所をきんとんで表現しました」。

若葉の合間からピンク色の花が一斉に顔を出すつつじ。そんな晩春の絶景を、あん玉の周りに、色を付けて裏濾ししたそぼろ状のあんをまぶす“きんとん”に初めて映したのは20年近く前のこと。

春の題材の代表格は桜だが、モチーフとして使える期間はそう長くない。後継になる対象が無いかと思案していた時、4600本ものつつじが咲き誇る「蹴上(けあげ)浄水場」の前を通りかかる。丸く刈り込まれた樹形や花色のあでやかさに圧倒された元島さん。その時に得た情感を注いで「蹴上のつつじ」を作りあげた。あえて地名を添えた菓銘には、名所の眺めを思い描いてほしいとの意図が込められている。

ひとつの菓子に使う色味は4色が限度だと元島さんは考えている。多すぎると印象が散漫になるからだ。春の色である萌黄色をベースに、最も濃い花色のそぼろ3つでセンターにラインを作り、その両側に薄めのピンク、白あんをそれぞれ2つずつ置いて、全体のバランスを取っている。春らしい華やかな仕立てだ。

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