和インのマリアージュ

×山菜の天ぷら。青さ、ほろ苦さと調和させる

2021.04.22
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連載:和インのマリアージュ

ワインを楽しむお客さまが増え、和食店にもある程度の品揃えや知識が求められる昨今。とはいえ、イチからワインを学ぶのは大変です。そこで、「和食こそワイン!」という心強い2名の指南役を迎え、すぐにでも実践可能なマリアージュをご提案。 第1回目のテーマは山菜の天ぷら。天ぷらを軸にコースを展開する、堺筋本町『このは』で検証しました。

文:阪口 香 / 撮影:Rina
松岡正浩さん(大阪・千里山|日本料理『柏屋』/エグゼクティブソムリエ)

尼崎市出身。山形大学に進学後、県内のホテルに就職。東京『タテル ヨシノ 芝』にてワインの基礎を覚え、パリ『ステラ マリス』へ。日本料理店『あい田』ではシェフソムリエとして迎えられた。帰国後、和歌山『オテル・ド・ヨシノ』にて支配人を務め、2016年、『柏屋』へ。フランス中心のワインと日本酒を織り交ぜたペアリングを提案。21年、レストランガイド「ゴ・エ・ミヨ」にてベストソムリエ賞受賞。

高橋多弥さん(大阪・肥後橋|ワインバー『Sabor a mi(サボラミ)』/ソムリエール)

大阪市出身。辻調理師専門学校卒業後、料理人としてスタートを切り、サービスへと転身。ビストロ『ラ・トォルトゥーガ』やワインバー『ピュール北新地』などに勤めた後、『豚玉』(現『たこりき』)にて、今吉正力さんからヴァン・ナチュール※の熟成について薫陶を受ける。2018年、『サボラミ』開店。店では、フランス、イタリア、ドイツ、オーストリアのワインを中心に扱う。日本ワインへの造詣も深い。

田中勝美さん(大阪・堺筋本町|日本料理『このは』/店主)

岐阜県出身。日本料理『つる家』で研鑽を積み、2004年、34歳の時に大阪・土佐堀で独立。14年に現在の地に移転し、数寄屋造りの空間に白木のカウンター8席と座敷を設えた。旬の食材をふんだんに使った繊細な料理を提供し、なかでもお客の前で揚げる薄衣の天ぷら、カツオ節とマグロ節でだしを引いた優しい味わいの椀物は名物となっている。自身は日本酒党、奥様・未来さんはワイン担当。

※一般的には、ボルドー液を除く薬剤を一切使わず、有機栽培され手摘み収穫したブドウを使用。天然酵母による発酵で、補酸・補糖を行わず、酸化防止のために用いられる亜流酸塩(SO₂)の使用は極少量にとどめたワイン。フランスの「自然派ワイン協会(AVN)」の「ヴァン・ナチュール」の定義では、許容される合計SO₂の値は、赤ワイン・発泡性ワイン:30mg/ℓ、辛口白ワイン:40mg/ℓ、5g以上の残糖がある白ワイン:80mg/ℓとしている。


油とワインはテッパンの相性

ズバリ、山菜にワインは合うのでしょうか?
松岡正浩(以下:松岡)
今回は天ぷらなので、ワインを選びやすいですね。バターやオリーブオイルなど、油分に合わせるのはワインの得意分野ですから。
高橋多弥(以下:高橋)
そうですね! 基本は何をつけて食べるか、で選べばいいと思います。塩なら白ワイン、天だしなら赤ワイン、がセオリー。素材の山菜に合わせるなら、青い香りと味わいのソーヴィニヨンブランを提供すると、ハズレはないと思います。
松岡:
オレンジワインもよく合うでしょう。白ワイン用のブドウを、赤ワインの醸造法、つまり皮や種子も一緒に醸したものですが、爽やかさと渋味が同居していて、山菜の味わいにピタリとハマると思います。山菜は天ぷらにすると食感や香り、味わいが変わるので、事前に試してみるのは必須。
高橋:
料理とワインが合うかどうかは、実際に口の中で“混ぜてみる”べしです。料理を口に入れて、2~3回噛んだところでワインを口に含んで、さらに咀嚼する。飲み込んだ時に調和していたら、マリアージュしている、ということです。「甘くなった」とか「香りを殺さない」というのも調和と考えてOK。日本人って、食べ物とお酒を同時に口へ入れることに抵抗がある人が多いのですが、ぜひ一度お試しください!

白は干し草、赤は土、がキーワード

今回、マリアージュをお願いするのはこちらの山菜の天ぷらです。

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田中勝美(以下:田中)
味わいの淡いものから強いものの順に、コゴミ、タラノ芽、ウド菜、行者ニンニク、フキノトウです。天然ものだとえぐみが出ますが、今回は栽培ものですので、比較的苦みも穏やかかと。
高橋:
私がセレクトしたのはこちらの3本です。まず、「ペットナット」は仏語の「ペティヤン・ナチュレル」の略。発酵途中のワインをボトリングし、瓶内で完全発酵させた微発泡のもの。優しい泡が、天ぷらの衣に合うのではないかと思って。アルコールも10%と低めです。そして、「ツィツカ」はジョージアのクヴェヴリという甕で発酵させた白ワインで、程よい渋味が山菜に合うかな、と。「玉名」はちょっと濁りのある赤ワイン。これはヴァン・ナチュールに多いのですが、醸造中に清澄や濾過をしないことで残った不純物。それが赤ワインの場合、だしっぽい味わいになるものが多く、その旨みが日本料理のだしに合う。だから、天つゆにも合うと思いました。

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左より、ドイツの『ブランド・ブロス』による微発泡ワイン「ペットナット2019」。ピノ・ブランとシルヴァネールが半々程度。/ジョージアの『ラマズ・ニコラゼ』による白ワイン「ツィツカ ナフシルゲレ2018」。ブドウはツィツカのみ。/『熊本ワイン& Quruto』の赤ワイン「キュベ玉名2020」。ブドウはマスカットベーリーA。仕入れ価格はどれも2000~3000円。

松岡:
まず、ヴァン・ナチュール特有の生命力が、春の香りと合いますね! 「ペットナット」の穏やかな発泡と、余韻に残るほのかな苦みと渋味は、コゴミのように味わいが優しい山菜に向いているかと思います。それ以外の山菜には、もう少ししっかりした味わいのワインの方がいいかと。
高橋:
そうですね。「ペットナット」の場合、コゴミ以外は苦みが口の中に残ります。「玉名」は万能で、程よい土っぽさが、油や山菜の苦みと調和します。天つゆに合わせて、と思いましたが、塩でもイケる!渋みが穏やかなのがいいのだと思います。
松岡:
ですね。赤は、フキノトウのように苦みが強いものに合うのかと思いましたが、コレ1本ですべて通してもいいくらい。「ツィツカ」は…。
高橋:
すみません! ブショネ※でした…。最近はかなり少なくなったと思っていたのに。
松岡:
当たっちゃいましたね(笑)。ワインは、提供する前にグラスでのチェックが必要。湿った段ボールや新聞紙、もしくは塩素のような臭いと、果実味が落ちているかどうかがポイントです。お客さまの前でチェックした場合は、「劣化なので交換しますね」と伝えてスマートに。不快なものですので、「ちょっと嗅いでみたい!」など、要望がない限りはすぐに別のワインをサービスする方がいいですね。

※原因がコルク栓にあるされていたため、語源はフランス語の「ブション(栓)」。コルク樫の加工に使われた薬品やコルクを煮沸消毒する際の塩素などが化学変化を起こしてワインを変質させてしまうと考えられていた。実際には細菌の繁殖が原因のため、スクリューキャップのワインでもブショネの可能性はある。

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松岡:
続いて、私が選んだのはこの3本です。

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左より、オーストリア『ヴァイングート・へーグル』の白ワイン「へーグル シェーン グリューナー・ヴェルトリーナー2019」。/フランス・プロヴァンス『シャトー・ド・ピバルノン』の白ワイン「バンドール ブラン2015」。ブドウはクレレットとブールブラン。/フランス・ボジョレー『ジャン・フォワヤール』の赤ワイン「モルゴン コート・ド・ピィ2018」。ブドウはガメイ。仕入れ価格はどれも3000~4000円。

松岡:
山菜に合わせる際のポイントは、白ワインなら干し草や藁(わら)のようなニュアンスだと考えます。「グリューナー・ヴェルトリーナー」と「バンドール ブラン」どちらにもあり、温暖な南フランス・プロヴァンス産の「バンドール ブラン」の方が、若干重い感じがするかと。赤ワインならやはり土っぽさが必要かと思います。適しているのがガメイ。カベルネ・ソーヴィニヨンやメルローなどのボルドー品種に比べて果実味がほどほど、春らしい抜け感があるので、山菜には合うんじゃないかと。
高橋:
いただきます!…うん、「バンドール ブラン」は干し草っぽい香りが程よいし、味わいのバランスも良く、今回の山菜すべてに合います! 「モルゴン」もすべてに合いますが、特に相性いいのがウド菜の春菊のような青い香り。
松岡:
意外に合わなかったのが「グリューナー・ヴェルトリーナー」。ワイン単体としてはとても美味しいけれど、主張が強く、山菜とマリアージュさせるのは難しいかな。
普段『このは』ではお酒の注文は日本酒の方が多いとのことですが、ペアリングしてみていかがでしたでしょうか。
田中:
店では泡だとシャンパンがよく出ますが、「ペットナット」のように優しい発泡のものが合うとは発見でした。シュワシュワ過ぎるのが苦手な方もいらっしゃるので、コレはいいな、と。あと、「バンドール ブラン」の万能さには驚きました!
高橋:
「ペットナット」のように微発泡のものは、その日のうちに飲み切らないといけないので、取り入れるならボトル売りがいいかと思います!
田中 未来さん:
私は、赤ワインの「玉名」と「モルゴン」が、天ぷらにじわーっと馴染む感じが好きです。とても心地いい。
松岡:
「玉名」は日本で造られているというのもあって、身体にスイスイ入る感じがしますね。「モルゴン」の方は、ワインらしい味わいが好きな方にオススメです。
高橋:
今回ご紹介したワインは購入できるものもありますし、状況によっては在庫切れのものもあります。その場合は、同じような味わいのものをお店や業者の方にお伝えして選んでもらうといいと思います!

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田中勝美さん(右)とワイン担当の奥様・未来さん。グラスで泡1種、白2種、赤1種をラインナップする。

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