和食のいろは

【一覧表付き】盛夏が旬の魚介

2022.07.08
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連載:和食のいろは

食欲が落ちやすい夏に好まれるのは、造りや塩焼きに向く魚。なかでも人気なのはアジです。真アジ、ムロアジ、丸アジなど、仲間の多いアジは一年を通して楽しめる魚ですが、温かい水を好む性質があるので、夏は漁獲量も上がります。他、身質が柔らかくなり、甘みが増すタコなど、7・8月が旬の魚介を一覧でご紹介。「辻調理師専門学校」日本料理主任教授を務めた畑 耕一郎先生と、創業30余年の北新地の名割烹『味菜(あじさい)』店主・坂本 晋さんに、代表的な魚介の美味しい調理法も解説いただきます。プロの方も、献立を考えるために、ぜひご活用ください。


畑 耕一郎(はた こういちろう):大阪生まれ。「辻調理師専門学校」理事・技術顧問。「大阪料理会」会長。TBS「料理天国」やABC「上沼恵美子のおしゃべりクッキング」など多くのTV番組に出演。『プロのためのわかりやすい日本料理』(柴田書店)など著書も多数。


坂本 晋(さかもと すすむ):岐阜県高山市出身。18歳から下呂温泉『吉泉館』で修業し、大阪・北新地の料亭『神田川』へ。割烹『味菜』を開店し、30余年が経つ。淀川や大阪湾の地魚に注力しながらも、全国各地から産地直送で旬の食材を取り寄せ、割烹料理に仕立てる。

文:小林明子 / 料理制作:大阪・北新地『味菜』 / 撮影:東谷幸一

盛夏の魚介の特徴とは?

夏に漁獲量が増えるのは、秋の産卵期に向けて沿岸に近づき、せっせとエサを食べる魚です。代表的なのはアジの仲間。程よい脂のりとクセのない味わいが楽しめます。また、必須アミノ酸が多く含まれるため、夏バテしやすい季節に食べたい魚とも言えるでしょう。

食欲が落ちやすい季節だけに、造りや洗いにしてさっぱり味わえる白身系の魚も好まれます。鯛に次ぐ美魚と言われるスズキ、高級魚に位置付けられるコチがその代表格です。

一部の地方では“盆ダコ”と呼ばれて珍重される真ダコも夏の味覚です。見た目にも涼しげな酢の物などに仕立て、酷暑を乗り切りましょう。

盛夏の旬魚介表
 
日本人の暮らしに寄り添ってきた、アジ

アジ科の魚は世界中に分布しており、140種を超えるとも言われています。その中でも“ゼイゴ”と呼ばれるトゲ状のウロコを持つものを、日本ではアジと呼んでいます。よく食べられているのは真アジ、丸アジ、高級魚として知られるシマアジなどです。

暖流に乗って回遊するため、ほぼ一年中出回りますが、産卵前に当たる盛夏が特に旨みが増します。

「アジの造りには、ワサビも良いですが、私はショウガ醤油が合うと思います。酢で〆てきずしにするのも美味しい。焼いてよし、干してよし、昔から日本人の食卓に馴染んできた魚ですね。房総半島辺りでは、叩いたアジに味噌と薬味を混ぜ合わせる郷土料理・なめろうも親しまれています」(畑先生)。

「数年ほど前から料理人の間で話題になっているのは、和歌山の加太辺りで揚がる鬼アジです。40cm前後もの大きさに育った、いわゆる根付き(瀬付きとも言う)の真アジで、滅多に出合えない高級魚です」(坂本さん)。

鬼アジの和え物和歌山で揚がった800gの鬼アジを、粗めの細切りに。大根やニンジン、ミョウガ、大葉の千切り、貝割れ菜と和えて、ショウガ醤油かおろしポン酢で。

大分県の名物“関アジ”などでも知られる根付きアジは脂が乗っていてコクがあります。対して、回遊性のアジは身が締まっている分、脂は控えめな傾向が見られます。

「脂が少なく、味が淡泊な小アジはフライにするのも良いと思います。粗めのパン粉をつけてカラッと揚げ、鬼おろし大根、ちょっと醤油を加えたポン酢をたっぷりかけると、さっぱりいただけますよ」(畑先生)。

スズキの真価は夏にあり

ブリやボラと同じように、成長過程に合わせて名を変える出世魚です。5㎝前後の幼魚をヒカリゴ、1年物をコッパ、25㎝前後に育った2年魚をセイゴ、30~40㎝に育った3年魚をハネ(関東はフッコ)、60㎝~1mぐらいまでの4年物をスズキと呼びます。さらにその上、腹回りが太い大物をハラブトと言いますが、身が最も美味しいのはスズキと呼ばれるサイズです。

精悍(せいかん)な面構えが特徴で、流線型の魚体は鯛にも引けを取らない美しさと表現されることもある、関西での人気が特に高い魚です。

「淡水域や汽水域にも入るため、島根の“宍道湖(しんじこ)七珍”に数えられているスズキは成長や季節によって棲む場所を変えます。食欲旺盛な魚で、食べる物、暮らす所の水質によって味が変わり、水の良い海域でたくさん小魚を食べる夏に最も美味しくなります。近年、養殖が盛んになっているのは、安定した身質が期待できるという背景もあると思います」(畑先生)。

皮が厚く身に弾力があるため、お造りなら、洗い、特に湯洗いにするといいでしょう。また、焼物にも向きます。シンプルに塩焼きの他、酒や醤油などの漬け汁に浸して焼き上げる幽庵(ゆうあん)焼や、味噌焼にするのも良いでしょう。

「味噌との相性も良いと思います。白味噌に蓼(タデ)の葉を刻み入れた蓼白味噌をぽってりのせて、軽く焦げ目がつくぐらいに焼くと美味しいですよ。ゆるめに作った田楽味噌を何度か掛けながら焼くのも良いですね」(坂本さん)。

スズキの蓼味噌焼スズキの蓼味噌焼。切り身に薄塩と酒をして小1時間くらいおき、素焼きで9割ほど火を入れてから蓼味噌を塗って焼き上げる。

高級魚・コチは、だしも美味しい

漁獲量が多いとは言えない、特に大型のものは貴重な高級魚。骨っぽいことから骨(こつ)が訛(なま)ってコチになったとも、公家などが盛装時に持つ木の板・笏(こつ)に形が似ていることからその名が付いたとも言われています。

日照りが続くにつれて動きを活発化させ、エサになる甲殻類や小魚を旺盛に食べる暖水性の魚です。

「最も美味しいのは、カマの部分に隠れている丸い形の頬身。サッと薄味で炊くと得も言われぬ一品に仕上がります」(畑先生)。

透明感のある身はやや硬めなので、薄造りや洗いが向きます。アラからも良いだしが出るので、潮汁や味噌汁にしても良いでしょう。

土用の真ダコは親にも食わすな⁉

日本では、年間約16万トン前後ものタコが消費されています。ちなみに、1世帯当たりのタコ消費量が最も多い都道府県は香川県。僅差ですが、大阪府は第2位です。

瀬戸内エリアの真ダコの最盛期は7~8月。それに合わせて、半夏生(はんげしょう)や夏土用(どよう)といった節目にタコを食べる習慣が全国にあります。大阪では天神祭にも欠かせない食材です。

「兵庫県明石はもとより岡山の下津井などが有名ですが、大阪の泉州でもブランド『泉だこ』などが揚がり、関西では夏によく食べられるようになりました。岡山の日生(ひなせ)辺りも名産地で、シャコや伊勢エビといった、人間にとってもご馳走の甲殻類を食べて育つため、特に味が良いとされています」(畑先生)。

「酢の物も良いですが、サッと酒煎りしてレモンを搾るのも美味しいです。スライスして唐揚げにする、庖丁目を入れてバター炒めにするのもおすすめです」(坂本さん)。

火を入れる時間を長くすれば柔らかくはなりますが、表面の皮がはがれてしまったり、歯ごたえが無くなってしまったりと、タコの持ち味が生かせないことも。キュッと気持ちよく嚙み切れるぐらいの弾力感を残す食べ方が、夏向きと言えるでしょう。

タコの酒煎りタコの酒煎り。糠(ぬか)で揉み洗いしたタコの脚に、深い切込みを入れて一口大に切り、酒で軽く火を通す。叩きオクラをかけて、土佐酢でいただく。

タコの煮物の代表格といえば、柔らか煮。夏には冷たくしていただくのも一興です。畑先生曰く「とある寿司店では、タコが程よい柔らかさになったら一度鍋から取り出して、煮汁を詰めてからタコを戻し入れ、丸1日そのままにして味を含ませていました」(畑先生)。

夏のイカと言えば、剣先イカ

世界で確認されているものは約450種。そのうちの約30種が食用にできるイカは、2つに大別することができます。胴が細長く筒形で、エンペラと呼ばれるミミのような部分が左右にあるツツイカ系。ずんぐりした胴の中に殻状の甲という部位を持つコウイカ系です。

コウイカの代表格、関西で好まれる紋甲イカは身の甘みが増す冬が旬ですが、ツツイカの代表格である剣先イカの旬は夏。産卵のため沿岸に寄ってくることもあり、漁獲量が上がります。

「剣先イカは薄造りにして独特のコリコリ感をショウガ醤油で楽しむのがいいですね。皮に旨みがあるので。そのまま焼くのが旨い!」(畑先生)。

「『味菜』では、芯にレア感を残す程度にサッと炙ります」(坂本さん)。

新鮮な剣先イカが手に入ったら一夜干しに挑戦してみましょう。縮みを抑えるためにフォークなどでところどころに穴を開け、4%の塩水に浸します。活かりけのあるものは25分から30分、活かりけのないものは15分くらいがいいでしょう。風通しの良い所に一晩程度置き、表面が乾いたら完成です。網の上で炙るだけで日本酒を進ませる佳肴になります。

➡ご紹介した料理のレシピは、「『味菜』の割烹料理 盛夏の魚介編」で配信。店主・坂本 晋さんの調理指南にご注目を!

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