和食のいろは

【一覧表付き】冬(1~2月)が旬の魚介

2023.01.19
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連載:和食のいろは

2022年は12月初週の和歌山沖の海水温が20℃もあったと話題になりました。その後、気温がグッと下がったことで海の中にもようやく冬が訪れているようです。そんな冬本番の1・2月に旬を迎える魚介を一覧でご紹介します。そして、「辻󠄀調理師専門学校」日本料理主任教授を務めた畑 耕一郎先生と、創業40年の北新地の名割烹『味菜(あじさい)』店主・坂本 晋さんに、代表的な魚介の美味しい調理法も解説いただきます。

畑 耕一郎(はた こういちろう):大阪生まれ。「辻󠄀調理師専門学校」理事・技術顧問。「大阪料理会」会長。TBS「料理天国」やABC「上沼恵美子のおしゃべりクッキング」など多くのTV番組に出演。『プロのためのわかりやすい日本料理』(柴田書店)など著書も多数。


坂本 晋(さかもと すすむ):岐阜県高山市出身。18歳から下呂温泉『吉泉館』で修業し、大阪・北新地の料亭『神田川』へ。割烹『味菜』を開店し、40年が経つ。淀川や大阪湾の地魚に注力しながらも、全国各地から産地直送で旬の食材を取り寄せ、割烹料理に仕立てる。

文:小林明子 / 料理制作:大阪・北新地『味菜』 / 撮影:東谷幸一

冬に旬を迎える魚介の特徴とは?

海に棲む魚類は、水温が下がり始める前にエサとなるプランクトンや小魚をたくさん食べて身を成長させ、エネルギーを蓄えます。

これは、本格的な寒さがくる冬に備えての本能的な行動。だから内臓や身にたっぷり脂肪を蓄えている冬の魚介は美味しいのです。

冬が旬の魚介一覧表

冬が最も美味しい、真鯛

産卵前の春は桜鯛、食欲が旺盛になる秋は紅葉鯛。関西人が愛する白身魚の代表格である真鯛は、春と秋には漁に適した浅めの海域に移動。漁獲量が上がって市場を賑わすため、季節特有の呼び名があります。

けれども真鯛の真骨頂は、栄養を存分に摂って深い海域に移動する冬。ただ、そうなると腕利きの漁師でも釣果を高めるのは至難の業になります。美味しいけれども、簡単には釣れない冬の真鯛はまぎれもない高級魚です。

「寒サバ、寒ブリ、寒シジミ…、“寒”をつけて呼ばれる冬の魚介に真鯛は該当していません。桜や紅葉のように、冬の鯛につけるキャッチコピーのようなものも聞いたことがありません。でも、とにかく真鯛は真冬が一番。かつて、寒ビラメとの食べ比べを仲間うちでした時、寒ビラメのエンガワもすこぶる美味しかったのですが、僅差で真鯛に軍配が上がりました」(畑先生)。

真鯛と言えば、関西では明石。特に鳴門のような流れの速い海域で育つものが上物と言われています。鳴門辺りの海域で揚がる真鯛の尾ビレ近くの骨にはコブのような突起が見られ、通称・ナルトコブやナルトボネと呼ばれます。これは速い流れに逆らって一生懸命尾ビレを動かした証。この真鯛の尾の身は、特に歯ごたえがあります。

造りや蒸し物で旨みを逃さずいただく

削ぎ身や薄造りにし、ワサビ醤油のほか、ポン酢で食べるのも美味しい真鯛。

「春や秋の鯛よりも脂がのっているので、造り身は厚く切り、しっかりと歯応えを楽しみたいものです。つけ醤油も湯がいた肝を加えたり、納豆ペーストを加えたもの、あたりゴマを加えたものもいいですね」(畑先生)。

「鯛は旨みが強い魚です。骨蒸し、潮汁など、真鯛を使うと独特の味が出せます。他の魚ではあの風味は出せませんね」(坂本さん)。

鯛の潮汁 明石の1㎏強の鯛を潮汁に。中骨のアラと頭を昆布と共に煮出し、酒と塩水のみで味付け。「吸い地がにごるので、決して沸かさないこと」が肝要と、坂本さん。

大阪人が愛してやまない、フグ

愛らしい姿かたちに反して、キバのように鋭い歯を持つフグの学名はテトラオドン。「4枚の歯」という意味で、フグ毒のテトロドトキシンもこの学名からきています。

フグの仲間は世界に約100種類。日本近海には約50種が棲んでいて、そのうち22種類が食用にすることを許されています。顔つきが何となく似ているマンボウやカワハギもフグの仲間です。

フグの王様と呼ばれるのはトラフグ。最も美味しいとされていますが、その分、値段も高額です。胸ビレの後方に白く縁取られた黒い模様があるのと、白い尻ビレが特徴。背中と腹部分はザラザラのトゲ状になっています。

近年は養殖が盛んになり、一年中美味しいトラフグを食べることができますが、天然物の旬は12~2月にかけて。主な漁場は山口県や宮崎県、福岡県など西日本が有名ですが、近年は北海道や石川県なども有数の産地になっています。

大阪は日本一のフグ消費地。60%が大阪で食べられているとも言われています。高級料理店はもちろん、大衆的な居酒屋などでもフグが楽しめるのは大阪ならではの光景かもしれません。

「フグ鍋を意味するてっちり、フグの刺身を意味するてっさといった呼び方は大阪発。これは、フグ毒に当たると命を落としかねないことから『弾に当たる』と掛けて、フグを“鉄砲”と呼んだ上方らしいダジャレから生まれました。豊臣秀吉が人々の命を守ろうとフグ食禁止令を出したにも関わらず、隠れて楽しむ人も後を絶たなかったため“鉄砲”の隠語を使うようになったとも言われています」(畑先生)。

てっちりか、唐揚げか

フグはてっさも良いですが、やはりその美味しさを余すところなく味わえるのはてっちり。ただ、食べる際に気を付けたいのが、野菜をあまり炊きすぎないこと。「締めの雑炊が野菜味になってしまうからです。すっきりしたフグの味を楽しむ雑炊を目指すなら、煮立たせないよう、火通りを考えた野菜の切り方が大切です」(畑先生)。

雑炊用のご飯も、冷ご飯をサッと水洗いしてから加えるという方法もありますが、実は炊きたてを入れる方が断然美味しいとか。むしろ注意したいのは、水分量に対するご飯の量。「入れすぎるとサラサラの雑炊ではなく、ねばりの強いものになってしまいます。卵でとじて、半熟の頃合いになったら、小口切りしたネギを散らして熱々を味わいます」(畑先生)。

「フグは白子も絶品。焼くと絶好の酒肴になりますね。店では身の唐揚げもよくお出しします。そぎ切りした身に下味を付け、衣をまとわせるのですが、柿の種を細かく砕いたものをたっぷりまぶして揚げるのも良いですよ」(坂本さん)。

フグの変わり揚げ 柿の種を粉状にして衣にした「フグの変わり揚げ」。「本当は骨周りの身が旨いんだけど、今のお客さんは面倒くさがるので」と、てっさにする上身を分厚く切って、酒と淡口醤油、砂糖少々で下味を付けている。

海のミルク、真牡蛎

近年は夏が旬の岩牡蛎もよく食べられるようになっていますが、やはり牡蛎といえば冬が旬の真牡蛎です。殻がゴツゴツしていて身も大きい岩牡蛎は、クリーミーさを感じさせつつもあっさりとした味わい。一方、真牡蛎は殻も薄く身も小ぶりながら、凝縮されたミルクのような甘みを感じる味わいです。

真牡蛎はほぼ100%が養殖もの。湾内に浮かべたイカダから、穴を開けてヒモを通した殻を海中に吊り下げるイカダ垂下(すいか)式で養殖されています。

初夏に稚貝を採取して翌年の冬に出荷する1年もの。盛夏に採取して、翌年の秋や翌々年の秋に出荷する2年もの・3年ものがあり、生育期間は産地によって異なります。

主な産地は瀬戸内、三陸、伊勢、北海道など。県別では全体の60%以上を占める広島県が多く、宮城県、岡山県と続きます。

生・半生、火を入れても美味な牡蛎

真牡蛎は養殖技術が年々発達し、生でも安心して食べられるようになっています。

「食べ方としておすすめなのは、七輪やコンロにだし昆布を敷き、弱い炭火で剥き身を焼く方法。日本酒を飲みながら、半生ぐらいになった加減で食べるんですが、昆布の旨み、真牡蛎の持つ塩味が相まって良い酒肴になります。松前焼きとも呼ばれていますね」(畑先生)。

「スダチを搾っても良さそうですね。店でも焼き牡蛎を提供しますが、人気が高いのは牡蛎フライ。ソースやタルタル、ポン酢おろし、ダイダイなど、少し酸味のある食材が合うと思います」(坂本さん)。

「牡蛎フライの衣には、トケトゲしいぐらいのパン粉を使ってほしいですね。一般的に、牡蛎のように水分の多い素材には粗挽き、少ない素材には細挽きが合うと思います」(畑先生)。

また、牡蛎鍋と言えば土手鍋。赤味噌にみりんや酒、おろしショウガなどを加えて練り、鍋の縁に土手状に塗り付けます。牡蛎の剥き身とささがきゴボウ、焼き豆腐などを煮て、少しずつ土手の味噌を崩して食べていきます。「焦げて香ばしくなった味噌は白ご飯にのせても旨いし、そのまま酒のアテにもなります(笑)」(畑先生)。

炊き込みご飯もおすすめで、牡蛎の他に、ゴボウやニンジン、椎茸・舞茸などのキノコ類を加えて彩り良く仕上げても。「プロの手法としては、牡蛎の半分を調味汁でサッと炊いてザルに上げておき、残りの半分を米と共に炊き、牡蛎の旨みをしっかり染み込ませます。蒸らしの段階でザルに上げておいた牡蛎を戻すと、見た目も味も抜群の牡蛎ご飯が完成します」(畑先生)。

牡蛎の土手鍋牡蛎の土手鍋。土鍋のふちに焼いた土手味噌を塗り、牡蛎と野菜を炊きながら、その味噌を溶き入れて鍋汁の濃度を調整する昔ながらのスタイルで。

外見に反して味は上品なアンコウ

深海魚のアンコウは、ゼラチン質豊富な身をはじめ、骨と眼球以外は捨てるところがないと言われるほどの魚です。

俗に「西のフグ、東のアンコウ」と称されてきましたが、山口県下関、島根県浜田などでも多く水揚げされるため、最近は関西の食卓にもよく登場します。

アンコウの身は85%以上が水分で低カロリーですが、海のフォアグラと称賛される肝は高カロリー。そして、ビタミンA、ドコサヘキサエン酸なども多く含んでいます。

アン肝が味の決め手

「アンコウはやはり鍋ですね。七つ道具(身・皮・胃・肝・卵巣・エラ・ヒレ)が一度に楽しめます。味付けは醤油ベースのだしに肝を加えるのが一番。昆布の上にアンコウの身をのせて酒蒸しし、火を通した肝をポン酢に溶いたタレをつけて食べると美味しいですよ」(畑先生)。

「身は唐揚げにもします。皮も香ばしく揚げることができます。熱々をアン肝ポン酢で食べるのが良いですね」(坂本さん)。

➡ご紹介した料理のレシピは、「『味菜』の割烹料理 冬(1~2月)の魚介編」で配信。店主・坂本 晋さんの調理指南にご注目を!

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