和食のいろは

鱧(はも)の骨切りを京都『祇園 川上』に学ぶ

「夏の魚」の王者・鱧。7月に京都で行われる祇園祭は「鱧祭」と呼ばれるほど、開催期間中、京都の料理屋ではたくさんの鱧料理が食べられます。その調理には、「骨切り」が欠かせません。今回は、『祇園 川上』店主の加藤宏幸さんに、「なぜ、骨切りが必要なのか?」「骨切りの前に行う下処理とは?」をうかがい、その熟練の技をご披露いただきました。

文:阪口 香 / 撮影:ハリー中西

目次


なぜ、鱧は骨切りが必要なのか?

『祇園 川上』でも、7月はコース8品に対して3品は鱧料理を提供します。骨切りは、調理直前に。お客さまの前で行うのですが「シャリッ、シャリッ」という音を聞いて、みなさま「夏が来たなぁ」と改めて実感されますね。

『祇園 川上』店主・加藤宏幸さん加藤宏幸さんは、1968年生まれ。1986年に『祇園 川上』へ入社し、4年修業した後、「ホテルオークラ」へ。京都・三条の日本料理店『河しげ』にて経験を積んだ後、32歳の頃、再度『祇園 川上』へ。11年前より、二代目として店を取り仕切る。

多くの魚は三枚におろし、大きな骨を取り除いた後、小骨は骨抜きで抜けばいい。しかし鱧は血合骨と皮の際にある皮下埋没骨が複雑に繋がっていて、簡単には抜けません。中骨、腹骨以外に脇骨、枝骨といった細い骨が多数あり、この皮下埋没骨を断ち切らなければ食べられないため、皮ギリギリまで深く庖丁を入れる「骨切り」が必要となります。

鱧の骨切りは、一寸に25本⁉

ウチが使うのは、『水口商店』の鱧。届いたらすぐに水洗いをしてぬめりを取り、捌きます(➡鱧の捌き方はコチラ)。

鱧と鱧を捌いているところ

保管するのは、電源を入れていない状態の冷蔵庫。氷を入れ、8~10℃に保った空間で寝かせておきます。こうすると庫内が乾燥しないので、身がしっとりとした状態を保てる上、死後硬直もゆるやかになります。

骨切りは「一寸(約3cm)に25本」なんて言葉がありますが、死後硬直が始まっている魚ならまだしも、『水口商店』の鱧は活け締めし、活かっている状態。なかなか難しいんですよ。それでもなるべく細かく骨切りをしてますね。皮1枚を残して身の部分だけを小幅に切っていきます。

鱧の骨切り

骨切りした鱧は、いろんな料理に

ウチは、至って王道でシンプルなものを好まれるお客さまが多いので、一番人気は湯引き(落とし)。とは言っても、旨みを強く感じていただけるように、ウチは水に落とさず、温かい状態で提供します。

他、鱧の頭を焼いてだしをとった吸い物や、卵でとじる柳川仕立てなど。焼き物も、鮎から鱧に。だしに醤油・酒・みりんを加えたタレをかけ焼きにし、焼き物として出します。鱧に脂がのってくると、特に美味しいんですよ。

注文があったら提供するのが鱧フライで、これも好評。パン粉をつけて揚げ、塩やウスターソース、辛子醤油で召し上がっていただきます。長年来られている祇園町の方がお好きな一品ですね。

鱧(はも)のレシピ

「WA・TO・BI」内の鱧の料理レシピはコチラ


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