鱧(はも)の捌き方を京都『祇園 川上』に学ぶ
京都の『祇園 川上』は、花街の粋人たちに愛される板前割烹。コース料理は歳時記や界隈のしきたりに因(ちな)んで提供されます。二代目の加藤宏幸さんは、「華美に走ることなく、質実の味を守る」という先代の考え方を踏襲し、日々の献立を組み立てます。7月は、「祇園祭は鱧祭」と言われるだけあり、鱧料理は欠かせません。この間、1日に捌く数はなんと20~30尾とか。そんな加藤さんに、鱧の捌き方を教えていただきました。
京都で愛される鱧(はも)
『水口商店』の鯛や鱧は、日本一だと私は思っています。他の鱧をそれほど知っているワケでもありませんが、皮が柔らかくて、身の味がしっかりしてる。ウチでは5月の終わり頃から9月末まで、いい鱧が入る時は11月くらいまで使います。京都では『瓢亭』や『菊乃井』などの名だたる料亭さんも、水口さんの鱧を使っています。
水口さんに「こんな鱧をくれ」といった注文は一切しません。先代からの付き合いで、ウチのことを分かってくれているので。サイズは500~600gのものですね。大きすぎると皮も骨も硬くなりますし、他の料理屋もこれくらいを良しとするんじゃないでしょうか。
ウチは二代続く店ですので、祇園の粋筋が長年贔屓(ひいき)にしてくださっています。「祇園祭は鱧祭」と言われますが、7月の1カ月間は鱧を目当てに来られます。カウンター10席、個室は7室という規模で、1日20~30本は捌きます。コース8品中、3品は出しますよ。みなさん、本当に鱧がお好きです。
鱧(はも)の捌き方
鮮度を保つため、鱧が届いたらすぐに水洗いし、お腹を開けて内臓を取り出し、皮のぬめりを取ります。また、他の魚もそうですが、なるべく魚に触る回数は少ない方がいいですね。
まず、頭から尾にかけて表面のぬめりを庖丁の刃でこそげ取ります。金タワシを使う人もいるようですが、タワシの針が刺さることもあるので、庖丁で行う方がいいでしょう。
次は、頭から尾まで、中骨に沿って切り開きます。
この後、中骨を外すのですが、多くの料理人が行うやり方と、「京開き」というやり方があります。どちらがいい、ということはありません。店によってやり方が異なるというだけです。
一般的には、皮を上にして尾の近くに庖丁を入れ、そこから中骨に沿って切り落とします。
「京開き」は、身を上にし、尾を落としてから中骨の下に庖丁を入れ、すくうように外します。
上が、多くの料理人が行う方法で中骨を外した鱧、下が「京開き」で外した鱧。「京開き」の場合は、腰骨が付いた状態なので、この後、庖丁で切り取る。
次に、背ビレ・尾・頭を外し、腹骨を切り落とします。腹骨は、揚げて骨せんべいになる部分ですね。
捌き終えたら、氷を入れた冷蔵庫に入れ、湿度を保ち、冷えすぎないように保存します。温度が低すぎると、身が硬直しますから。
左/尾から頭に向かって、背ビレを外す。右/腹骨を切り落とす。 捌き終えた鱧。 加藤さんと『水口商店』の付き合いは、三代にわたる。「二代目の計則さんには、よく怒られましたよ。冷蔵庫での魚の保管状態とか、魚を持つ位置とか。当代である息子の貴士君、翔平君がお父さんと働けたのは3年くらいなので、僕が計則さんに教えてもらったことを伝えてあげたいと思っています。そして、今の若い料理人たちが、『いつか水口商店の魚を使いたい』と思うような存在になっていって欲しいですね」。
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