昆布はどうなる?

真昆布の産地の景色が変わった!?

大阪の『こんぶ土居』四代目・土居純一さんが天然真昆布の収穫を手伝うため、北海道は函館市の旧南茅部(みなみかやべ)地区を訪れ始めたのは、2004年から。ここ10数年で、海の中も、陸の上も、産地の景色は様変わりしました。江戸時代には朝廷への献上昆布を産する地でしたが、年間700tを超えていた天然真昆布の生産量は、今や一桁に。その衝撃の事実の裏に何があるのでしょうか? 今回は、土居さんの語る産地の話をお届けします。

文:団田芳子 / 画像提供:こんぶ土居

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日本一の昆布の産地・南茅部

日本の昆布の約90%が北海道産だが、場所によって産する昆布の種類は異なり、採取場所によって品質に大きな違いがある。

「だし汁の清澄さ、味わいの上品さから、最高級の昆布」と、『日本昆布協会』に定義されている真昆布は、道南・函館沿岸が産地だ。なかでも、白口(しろくち)浜、黒口浜、本場折(ほんばおり)浜は、道南3銘柄と呼ばれ、高級品とされている。

さらに白口浜の中でも川汲(かっくみ)浜や尾札部(おさつべ)浜の昆布が最高級品として、江戸時代から朝廷や将軍家に上納される“献上昆布”に指定されていた。
その白口浜真昆布を産するのが、函館市・旧南茅部地区だ。
ところが南茅部の天然真昆布は、2014年を最後の豊作年に、2015年より激減している。

「単年の不作年はこれまでもありましたが、明らかに今までと違います。主産地の南茅部で700tあった収量が、一桁になっているんですよ」。
真昆布を主力に扱う『こんぶ土居』の四代目・土居純一さんは嘆く。

「大昔から最高級品に指定されてきた“献上昆布”の別名もある昆布です。日本独自の伝統食文化の大切な要素がなくなりつつあるのです」。

2022年の旧南茅部町域の天然真昆布の生産量比は、なんと0.3%になるだろうと予測されている。二年養殖もので1.6%。大半を促成(一年養殖昆布)が占めているのだ。
「天然に限定したデータは、これまでほとんど世に出ませんでした。消費者は、昆布はスーパーでも売ってると思っていますが、それらはほぼ促成の養殖昆布なんです」。

料理屋で食べ手を感動させるだしの旨みは、促成養殖昆布では出せない。
大切な天然真昆布は、なぜ採れなくなったのだろう。

kon0003b平成14(2002)年7月の南茅部の漁港でのスナップ。船には溢れるほどの天然真昆布が。

kon0003c採取した昆布の根元を切り落とし、天日干し(地干しともいう)に。かつては、7~9月の晴天の日に、南茅部地区のそこここでこんな風景が見られたという。今は機械乾燥が主になり、養殖昆布はほとんど天日干しをしないという。

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