京都『飯田』の美学

温もりの冬至

松葉ガニにフグやウニ…。一年の締めくくりに相応しい豪華食材に心が躍る12月の献立。けれど「何より大切にしているのは、“温度感”です」と飯田さん。
調理法だけでなく、時流を意識した床の間の室礼や、美味しい温度を意識した器選びなど、飯田流冬のもてなしをご紹介します。

文:川島美保 / 撮影:岡森大輔

心温もる室礼

年の瀬が迫る12月。「今年だけの特別」と床の間に飾る掛け軸の絵は、紅白のバラ。「平安時代頃に中国から伝来したという赤いバラに、長春花と呼ばれるものがあるんです。コロナ禍の今を冬の厳しさに、終息を春の訪れに例えて、春を待ち望む気持ちとかけています」と飯田さん。

加えて二輪を結ぶ赤い糸を指し、「人と人の絆を改めて大切に感じた一年でしたので。さらに紅白の色使いには“交わり”や“温かい心”という意味合いがあるんです」。

座敷に掛けるのは臨済宗の僧侶が描いた、行列を成す托鉢(たくはつ)僧の絵図。「京都ではお馴染みの光景ですが、愛嬌のある絵柄が和むでしょう?」。

気忙しく疲れも溜まりがちな季節に、少しでも温かい気持ちになってもらえたらという想いを込めている。

a寄り付きの掛け軸は菊池契月(けいげつ)作。明治時代後期から昭和中期に京都を拠点に活躍した日本画家。

b個室の掛け軸は臨済宗の僧侶・井沢寛州(いざわかんじゅう)作。雅号は泥龍窟(でいりゅうくつ)。左には「すべてが学びの場である」という意味を持つ「歩々是道場(ほほこれどうじょう)」、右には「たくさんの恵みに支えられながら生きていくことの有難さ」という意味を持つ「一鉢千家飯(いっぱつせんけのはん)」と書かれている。どちらも禅語のひとつ。

c趣を変えて、カウンターに飾るのは額縁に収めた紀元前の矢尻。「“光陰矢の如し”をイメージして、あっという間に過ぎた一年を表しています」。

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