【動画レシピ付き】浮き袋のゼラチン質で寄せる「鱧の子煮こごり」
鱧は初夏から出始めて、夏場に産卵期を迎えます。メスはお腹に子を持つため身は痩せていきますが、その鱧の子(卵巣)が実は珍味。大阪・北新地の浪速割烹『さか本』では、この時季、鱧の子を煮こごりにした冷菜が人気を博しています。ゼラチンを加えて作るのが一般的ですが、元大将の坂本靖彦さんは、20年以上前から、浮き袋のゼラチン質を利用して冷やし固めています。「とろんとした食感と優しい口どけ。口の中にふわ~っと旨みが広がる感覚は、ゼラチンで寄せたものとはまったく違うんですよ!」。今回は、そんな『さか本』流のレシピを動画で大公開。
うちの割烹では、鱧は落としではなく、焼き霜造りが人気でした。ご注文くださったお客さんには、『おまけです』と鱧の子の煮こごりをよくお出ししてましてネ。「焼き霜造りを待つ間にどうぞ」と、ちょっと盛ってお勧めする。肝は艶煮にしたり、浮き袋なんかも湯がいてブツブツッと切ってポン酢をかけ、小鉢でちょっとお出しする。昔は、割烹らしいこんなサービスをよくしたものです。
鱧の子は、身を主役とすると、脇役でしょ。百合根や銀杏と卵とじにするなど、おかずみたいな素朴な料理にすることが多いですし、これでお金を取るっていうのが…昔はちょっと違和感があって。ですが、有難いことに、煮こごりが常連の間で“夏の珍味”として評判になり、リクエストが増えたことで品書きにも加えることになりました。
うちでは、鱧の子の煮こごりにゼラチンは使いません。浮き袋にはゼラチン質がたっぷりあるので、これを利用することを思いついたんです。
鱧の子を卵とじにするのに下煮をしておくんですが、浮き袋があれば入れることもあったんですね。ある時、浮き袋を加えた時は冷蔵庫で冷やすとちょっと固まったような状態になるな、と気が付いて。いろいろと試行錯誤して、鱧の子の量に対して8%の浮き袋を合わせると、調度いい加減に固まることが分かりました。
鱧の子と浮き袋をとろ火で約1時間ほど煮ていきますが、ここで丁寧にアクを取ることが大切です。冷やし固めた時に、子や浮き袋が澄んだ煮汁から透けて見えるのが、この煮こごりの醍醐味ですから。また、煮汁は冷たくすると味を濃く感じるので、煮上がりに味を見て、少し薄いかな、と思うくらいに塩梅することも大事。それでも味が足りないなという時は、醤油やみりんではなく、塩だけで加減するといいですよ。味がぐっと締まりますから。
「鱧の子煮こごり」の作り方
① 鱧の内臓から、子(卵巣)と浮き袋を外す。子は筋をキレイに取り、手でひと口大くらいに分ける。浮き袋は金串を中に通して裏返しにし、中に詰まっていた汚れをキレイに洗う。
② 浮き袋を霜降りにする。冷水に取って、粗熱をとり、1㎝幅に切る。
③ 子をしっかりと火が通るまで茹でる。冷水にとって粗熱をとり、ザルに上げる。崩れやすいので、そのまましばらく置いて自然に水気を切る。
④ 一番だし1440㎖・酒360㎖・みりん27㎖・淡口醤油27㎖・砂糖24g・塩2gを鍋に入れて熱する。水気を切った子500gと②の浮袋40g、針生姜3gを加えて、とろ火で約1時間煮る。途中、アクを丁寧に取ること。
⑤ 煮上がりに味見をして、足りなければ塩を適宜加えて味を締める。
⑥そのまま冷まし、粗熱が取れたらガラスの小鉢や流し缶に入れて、一晩、冷蔵庫で冷やし固める。
⑦ オクラを塩茹でし、輪切りにして種を取り、八方地に漬けたものを飾り、振り柚子をする。
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