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【レシピ付き】福島を味わう懐石vol.3焚合・焼物・蒸し物

復興庁の情報発信事業の一環として、去る2月に福島県で行われた食イベントで提供されたオリジナル懐石料理のレシピを配信する「福島を味わう懐石」。vol.3では、焚合(たきあわせ)・焼物・蒸し物の3品をお届けします。日本料理アカデミーを中心とした福島県内外の料理人が考案した料理には、県産の野菜や会津地鶏、「常磐(じょうばん)もの」と呼ばれるブランド魚介など、地元の産物が随所に用いられています。風評被害に負けじと生産者が丹精した、福島県の食材の魅力も併せてご紹介します。


※復興庁公式サイト「福島の今」内「福島を味わう 食文化の結びPROJECT in福島

文:中本由美子 / 撮影:綿貫淳弥

目次

田中良典さん(京都・嵐山『京料理 鳥米(とりよね)』六代目)

昭和57年生まれ。高校卒業後、金沢の料亭で修業し、平成16年、実家の『京料理 鳥米』(明治21年創業)を継ぐべく料理長に。現在は代表取締役。「日本料理アカデミー 新規事業開発プロジェクト委員会」委員長、「京都料理芽生(めばえ)会」副会長、「京都魚菜鮓商協同組合」青年会 副委員長。今回の食イベントでは「焚合」を担当した。

左(ひだり) 聡一郎さん(京都・宇治『京・宇治・抹茶料理 辰巳屋』八代目)

昭和53年生まれ。20歳で料理人を志し、神戸・金沢での修業を経て、平成21年、実家である江戸末期創業の『辰巳屋』に。30年、代表取締役となる。「京都料理芽生会」副会長、「日本料理アカデミー」会員。今回のイベントでは焼物を担当。

田中宏典さん(京都・嵐山『桜宿膳料理 嵐山錦』若主人)

昭和61年生まれ。大学卒業後、『たん熊北店 二子玉川店』で修業。平成24年、実家に戻り、『桜宿膳料理 嵐山錦』(昭和20年創業)の三代目として研鑽を積む日々。「京都料理芽生会」理事、「京都魚菜鮓商協同組合」所属。今回のイベントでは蒸し物を担当した。

会津地鶏と福島県産の野菜や湯葉で仕立てた焚合

福島食材を使ったオリジナル懐石料理の向付会津地鶏つみれ いわき産長兵衛(ちょうべえ)里芋 三春産引き上げ湯葉 郡山(こおりやま)産レジェンドほうれん草 矢祭町産針柚子。調理担当:『京料理 鳥米』田中良典さん。

焚合は鶏料理の専門店『京料理 鳥米』の田中さんの担当とあって、主役は会津地鶏のつくね。そこに福島県産の食材を取り合わせ、食べ応えある一品に仕立てた。

100~140日かけて平飼いによって育てられた会津地鶏は、赤みの強い肉質でコクと香りが豊潤。モモ肉を少し多めにしたミンチで仕立てたつくねには、鶏肝を忍ばせて味わいに深みを持たせている。

ごろんと丸ごと盛り付けた里芋は、令和元年秋の水害を生き残った“奇跡の里芋”として知られる、いわき市『ファーム白石』の長兵衛里芋。皮ごと食べられるが、今回は他の食材との調和も考え、土の香りが強くなりすぎないよう、楕円形の形を生かして皮を剥く。下茹でし、弱火で15分ほど煮たら、煮汁に浸けたまま2時間置き、味を含ませている。

三春町『TO-FU Cafeおおはたや』の湯葉は、「ごく薄く引き上げられていて、クリーミーで美味しい!」と田中さん。その持ち味と食感を生かすため、煮汁で煮るのではなく、熱々を注いで2時間ほど浸す仕立てに。

郡山『ニッケイファーム』の「レジェンドホウレン草」は、甘みがしっかりしていて青臭くないのが特徴。こちらもさっと茹で、八方地浸しにして風味を引き出している。

福島県産の野菜オリジナル懐石料理に用いた福島県産の野菜。手前真ん中から矢祭(やまつり)町産の柚子、時計回りに、泉崎村産「ふくふくきくらげ」、郡山産のフキノトウ・菜の花・カブ、鮫川(さめがわ)村産のうるい。細長い芋は甘栄(てんえい)村の自然薯(じねんじょ)。ウドの右が「レジェンドほうれん草」。

会津地鶏つみれ いわき産長兵衛里芋 三春産引き上げ湯葉 郡山産レジェンドほうれん草 矢祭町産針柚子のレシピ

【材料※作りやすい量】

●会津地鶏つみれ
|会津地鶏ミンチ(モモ肉多め)……1.25㎏
|鶏肝……25g
|長芋(すりおろし)……75g
|卵……1.5個
|薄口醤油……90㎖
|濃口醤油……60㎖
|酒……50㎖
|粉山椒……適量
酒・塩・昆布だし……各適量
八方だし※……2.5ℓ

●里芋うま煮
いわき産「長兵衛里芋」…… 16個
煮汁
|カツオ昆布だし……1ℓ
|薄口醤油……70㎖
|みりん……120㎖

●湯葉
三春産引き上げ湯葉……4パック(計360g)
八方だし※……1ℓ

●ホウレン草の浸し
郡山産「レジェンドほうれん草」……2束
八方だし※……400㎖

矢祭町産柚子……適量

※八方だしの割合
カツオ昆布だし:薄口醤油:みりんを11:1:1で合わせたもの

【作り方】

<会津地鶏つみれを作る>

酒と水を同量で合わせ、塩を少し加えた中で鶏肝を軽く洗い、水気を拭く。
ボウルに①と残りの材料を合わせ、しっかりと練ってひと口大に丸める。
昆布だしをひと煮立ちさせて②を入れ、浮いてくるまで下茹でする。
八方だしで③をさっと煮て、鍋ごと氷水に浸けて急冷し、そのまま2時間ほど置く。

会津地鶏のつみれを作る

<里芋うま煮を煮る>

いわき産「長兵衛里芋」は皮をむき、竹串がすっと通るまで酢水で下茹でする。水洗いしてぬめりを取る。
煮汁をひと煮立ちさせて⑤を入れ、紙蓋をして弱火で約15分煮る。そのまま2時間ほど置いて味を含ませる。

<湯葉に下味を付ける>

三春産引き上げ湯葉を食べやすい大きさに切り、バットに並べる。
八方だしを温め、⑦に注ぎ入れ、2時間ほど置いて味を含ませる。

<ホウレン草をお浸しにする>

郡山産「レジェンドほうれん草」を塩茹でして冷水で冷やし、食べやすい大きさに切る。八方だしに30~40分浸す。

<仕上げる>

④、⑥、⑧、⑨を温めて盛合せ、④の煮汁をかける。針切りにした矢祭町産柚子の皮を天に盛る。

「阿武隈メイプルサーモン」の味噌柚庵焼に名産あんぽ柿を添えて

白河産メイプルサーモン味噌柚庵焼 伊達市産あんぽ柿と矢祭町産柚子の巻柿白河産メイプルサーモン味噌柚庵焼 伊達市産あんぽ柿と矢祭町産柚子の巻柿。調理担当:『京・宇治・抹茶料理 辰巳屋』左 聡一郎さん。

阿武隈川(あぶくま)メイプルサーモンは、カナダ原産のニジマスをルーツに、西白河郡の『林養魚場』で生み出された純国産の大型トラウト。那須(なす)の源流に位置する施設で、自然に近い状態で養殖されているので、身が締まっている。

焼き物担当の『辰巳屋』左 聡一郎さんは、「魚体は小ぶりですが、すごく脂がのっていて、繊細な身質」と評し、その脂のりを生かすため、矢祭町の柚子入りの味噌柚庵地に漬けて、ほんのり柚子の香りとまとわせ、しっとりと焼き上げた。

あしらいは、「あんぽ柿」を使った巻柿。全国に知られる福島県伊達(だて)市の特産品だ。鮮やかなオレンジ色の身を開くと、中にはとろりと柔らかな果肉。開いてから軽く風乾し、味噌幽庵焼との繋がりを考えて、矢祭町の柚子の皮をシロップ煮にして芯にして巻く。紐で縛って冷蔵庫で1週間ほどおくと、しっかりと身が締まり、独特の食感になる。

白河産メイプルサーモン味噌柚庵焼 伊達市産あんぽ柿と矢祭町産柚子の巻柿のレシピ

【材料(約20人前)】

阿武隈川メイプルサーモン……1㎏(上身)
塩……適量

●味噌柚庵地
|白粗つぶ味噌……500g
|酒……500㎖
|みりん……200㎖
|薄口醤油……100㎖
|濃口醤油……100㎖
|矢祭町産柚子(輪切り)……適量

●巻柿
伊達市産「あんぽ柿」……5個
矢祭町産柚子……2.5個
シロップ(水:砂糖を2:1で合わせたもの)……適量

【作り方】

<サーモンを味噌柚庵地に漬ける>

粗つぶ白味噌を酒にしっかりと溶き、残りの材料を合わせ、味噌柚庵地とする。
阿武隈川メイプルサーモンの上身を1人前50~55gに切り出す。薄塩をして15分置き、①に30分ほど漬ける。

阿武隈川メイプルサーモンを味噌幽庵地に漬ける

<巻柿を仕込む>

矢祭町産柚子の皮を厚めにむき、細かく刻む。シロップでさっと煮て、そのまま冷ます。
伊達市産「あんぽ柿」の頭と尻を落とし、側面に切り込みを入れて開く。扇風機の風などを当て、軽く乾燥させる。
④で③を包み、巻きすでしっかりと巻いて形を整える。ラップでしっかり包んだ後、ヒモでぐるぐると巻いて縛り、真空袋に入れて脱気し、冷蔵庫で1週間ほど置く。

<仕上げる>

②の汁気を軽く切り、中火から弱火で焼き上げる。途中、味噌柚庵地を塗り足すとよい。
⑥を皿に盛り、⑤を輪切りにして添える。

「常磐もの」のアカムツを主役にした、食感豊かな蕪蒸し

「常磐もの」アカムツの蕪蒸し常磐もの赤むつ 郡山産蕪 百合根 銀杏 泉崎村産ふくふく木耳(きくらげ) 三つ葉 葛あん 山葵。調理担当:『桜宿膳料理 嵐山錦』田中宏典さん。

いわき市で1~6月、9~12月と夏を除いてほぼ年中揚がる「常磐もの」のアカムツ。口の内側が黒いことからノドグロという名で知られる。“白身のトロ”と呼ばれるほど、脂がのっているのが魅力だ。

今回は1.4㎏の大物を使用。「身が柔らかく、味はしっかり。脂もたっぷりとありました」と、蒸し物担当の『嵐山錦』田中宏典さん。薄塩をして一晩置いてから酒を振り、昆布にのせて下蒸し。余分な脂を落とすと共に、持ち味を立たせている。

蕪蒸しの生地に用いたのは、甘みの強い郡山産のカブ。すりおろして、ほどよく水気を切り、メレンゲと合わせることで、「ふわっとした食感に仕上がると共に、カブの甘さを引き立てています」と田中さん。

その生地にコリッといいアクセントを付けるのが、泉崎村の農事組合法人『ひかり』がオーガニック菌床で育てた「ふくふくきくらげ」。さっと煮て、そのまま一晩置き、味を含ませたものを使う。

常磐もの赤むつ 郡山産蕪 百合根 銀杏 泉崎村産ふくふく木耳 三つ葉 葛あん 山葵のレシピ

【材料(20人分)】

常磐もの「赤むつ」……1/2尾(上身400g)
塩・酒・薄口醤油・昆布……各適量
郡山産カブ……5個
卵白……2個分
泉崎町産「ふくふくきくらげ」……50g
煮汁※……1ℓ
ゆり根……1個
銀杏……20個
三つ葉……1束
ワサビ……適量

●葛あん
|カツオ昆布だし……1ℓ
|薄口醤油……25㎖
|みりん……25㎖
|塩……少々
|葛粉……50g

※煮汁の割合
カツオ昆布だし:薄口醤油:みりんを10:1:0.9で合わせ、塩で味を調えたもの。

【作り方】

<常磐もの「赤むつ」の下準備をする>

常磐もの「赤むつ」を三枚におろして上身にし、1人前20gに切る。薄塩をし、冷蔵庫で一晩置く。
①をさっと酒で洗い、バットに昆布を敷いてのせる。酒を振りかけ、スチームコンベクションオーブンを90℃に設定して5~7分蒸す。耐熱容器に盛る。

<蕪蒸しを作る>

ゆり根は鱗片を一片ずつ外し、2㎝大に切る。軽く蒸す。
銀杏は皮をむき、茹でて火を通す。
泉崎町産「ふくふくきくらげ」は2㎝長さの細切りにする。煮汁でひと煮立ちさせ、そのまま冷まし、味を含ませる。
郡山産カブは筋の内側まで厚めに皮をむき、すりおろす。ザルに上げ、半分くらいの重さになるまで水気を切る。
卵白を角が立つくらいまで泡立て、⑥と合わせる。⑤、2㎝長さに切った三つ葉を混ぜ合わせ、塩・薄口醤油で味を調える。
②の耐熱容器に、③を2切れ、④を2粒ずつ入れ、⑦をかける。スチームコンベクションオーブンを90℃に設定し、5分蒸す。

蕪蒸しの手順

<仕上げる>

葛あんを作る。カツオ昆布だしと調味料をひと煮立ちさせる。葛粉を同量の水に溶き、混ぜながら少量ずつ加える。ほどよくとろみが付いたら20秒ほど沸騰させ、粉っぽさを飛ばす。
⑧に⑨をかけ、ワサビを天に盛る。

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