ニュース&トピックス

【レシピ付き】福島を味わう懐石vol.4酢の物・ご飯・水物

日本料理アカデミーを中心に福島県内外の料理人が考案した懐石料理をテーマにお届けする「福島を味わう懐石」。福島食材の風評被害を払拭するため、復興庁が情報発信する事業の一環として行われた食事会で披露された料理の中から、vol.4は酢の物・ご飯・水物をご紹介。相馬(そうま)産北寄(ほっき)貝、郡山(こおりやま)の桃など、全国レベルの特産品がレシピを彩ります。


※復興庁公式サイト「福島の今」内「福島を味わう 食文化の結びPROJECT in福島

文:中本由美子 / 撮影:綿貫淳弥

目次

木村一智さん(京都・島原『島原 乙文(おとぶん)』若主人)

昭和63年生まれ。大学卒業後、スイミングインストラクターとして活躍。25歳で京都の花街・島原で昭和2年に創業した実家の『島原 乙文』に戻り、日本料理の世界へ。四代目となるべく、奮闘中。「京都料理芽生(めばえ)会」理事。今回は酢の物を担当。

園部晋吾さん(京都・洛北『山ばな 平八茶屋』二十一代目)

昭和45年生まれ。大学を卒業後、大阪の料亭で3年修業。天正年間(安土桃山時代)創業の老舗『山ばな 平八茶屋』二十一代目に。「京都料理芽生会」第20代会長。今回は「日本料理アカデミー」副理事長として料理の品書きの構成を担当し、料理人の取りまとめを行った、

磯橋輝彦さん(京都・嵐山『嵐山弁慶』三代目)

昭和46年生まれ。大学卒業後、東京の商社に勤務。嵐山にて料理旅館を営む『嵐山弁慶』(昭和44年創業)の三代目に。「京都料理芽生会」第21代会長を務め、現在は「京都府旅館ホテル生活衛生同業組合」理事長、「日本料理アカデミー」理事。今回は水物を担当。

相馬産の北寄貝を主役に、早春の山菜を添えた酢の物

福島食材を使ったオリジナル懐石料理の酢の物相馬産北寄貝 うど 鮫川(さめがわ)村産うるい 松川浦産ひとえぐさ 土佐酢 黄身酢。調理担当:『島原 乙文』木村一智さん。

「常磐(じょうばん)もの」として知られる福島の海産物。その代表格の一つが北寄貝だ。特に相馬・双葉沖は好漁場として名高く、明治時代から北寄貝漁が行われてきた。

酢の物を担当した『島原 乙文』木村一智さんは、「京都では出合えない大きさで、甘みが強い!」と、相馬産北寄貝に驚いた様子。立派な身質を生かすため、さっと霜降りして、生に近い状態で酢の物に。

北寄貝と取り合わせたのは、ウドやウルイなどの早春の山菜。阿武隈(あぶくま)高原の南部の高地にある鮫川村で育つウルイは、風味が力強い。ウドも相馬産を用いている。

北寄貝と山菜を和えた土佐酢は、『島原 乙文』で常備しているもの。丁寧に火入れすることで保存性を高めた、料理屋らしいレシピだ。この土佐酢をベースにした黄身酢をとろっとかけ、松川浦名産の青海苔「ヒトエグサ」で豊かな磯の香りを添えている。

木村さん曰く「初めはヒトエグサを軽く煮てから添えようと思っていた」のだそう。あまりに風味が鮮烈だったため、水で戻したものをそのまま使ったと言う。

相馬産北寄貝 うど 鮫川村産うるい 松川浦産ひとえぐさ 土佐酢 黄身酢のレシピ

【材料(約20人前)】

相馬産北寄貝……10個分
鮫川村産ウルイ……20本
ウド……1本
松川浦産ヒトエグサ(アオサ海苔)……25g(乾燥)
昆布だし・酢・塩……各適量
土佐酢※1……適量
黄身酢※2……適量

●ウルイの浸し地
|カツオ昆布だし……800㎖
|塩水※3……30㎖
|薄口醤油……30㎖

※1 土佐酢の作り方
水600㎖に昆布を1時間浸け、そのまま中火にかける。沸いたらカツオ節をふたつかみ入れ、煮出してから漉す。このカツオ昆布だしに砂糖650gを加えてひと煮立ちさせ、薄口醤油1.4ℓを加えたらまたひと煮立ち。最後に米酢3ℓを加えてひと煮立ちさせたら、火を止めて、さらに米酢1ℓを合わせる。冷蔵で1カ月保存できる。

※2 黄身酢の作り方
卵黄10個と土佐酢250㎖を鍋に入れ、弱火にかけながら練る。卵黄に火が通り、とろみが付いてきたら、鍋ごと手早く冷ます。

※3 塩水の作り方
4ℓの水に1㎏の塩を溶かし、アクを取りながら30分かけて2升(3.6ℓ)程度の量になるまで煮詰める。

【作り方】

松川浦産ヒトエグサは水に浸して戻す。ザルに上げて水気を切る。
鮫川村産ウルイは1本ずつほぐす。2%の塩水を沸かし、軸から入れて茹で、冷水に取る。浸し地に30分浸し、食べやすい大きさに切る。
ウドは皮をむき、短冊切りにする。2%の塩水に30秒浸けてからザルに上げる。
相馬産北寄貝はむき身にして開き、内臓を取り、ヒモを外す。昆布だしに2%の塩を加え、身とヒモを半生になるように茹で、冷水に取る。水気を拭き取り、細く切る。

相馬産北寄貝の霜降り

②、③、④をボウルで軽く合わせ、土佐酢で和える。

北寄貝とウルイ・ウドを土佐酢で和える

うつわに⑤を盛り、土佐酢を少しかける。さらに黄身酢をかけ、①を添える。

福島の食材で彩る「鰻とろ麦飯」に料亭の香の物を添えて

福島食材を使ったオリジナル懐石料理のご飯・香の物郡山産最高級コシヒカリ「ASAKAMAI 887」 押し麦 天栄(てんえい)村産自然薯 青のり 滝根町産「福うなぎ」蒲焼 白菜 大根。調理担当:『山ばな 平八茶屋』園部晋吾さん、東京『うなぎ割烹 大江戸』湧井浩之さん。

郡山市は、全国でも有数の米どころ。コシヒカリとひとめぼれから厳選された一等米は「あさか舞(まい)」としてブランド化されている。その中でも、「食味値88点以上」「たんぱく質含有量6.1%以下」など厳格な生産基準を満たした最高峰のコシヒカリが「ASAKAMAI 887」だ。

その郡山が誇るブランド米で麦飯を炊き、甘栄村の自然薯をとろろにして取り合わせて「麦とろ」に。調理を担当した『山ばな 平八茶屋』の園部晋吾さんは、「粘りの強い自然薯なのですが、アクが少なくて驚きました」と話す。隠し味に白味噌を加え、同量のだしでなめらかな麦とろ地に仕立てる。

福島県田村市の滝根町で2015年から養殖を始めた『ニューフロンティア』の「福うなぎ」は、東京の名店『うなぎ割烹 大江戸』の湧井浩之さんが自店で蒲焼きに。湧井さん曰く「今回扱ったものは1尾200g以上で立派でした。臭みがないので、きれいな水で育てられているのだと思います」。

白焼きにしてから、少し長めに蒸し、ふっくらと蒲焼きにしている。『うなぎ割烹 大江戸』では秘伝のタレを使っているため、今回の鰻のタレのレシピは園部さんが考案。併せて、自家製の白菜と大根のレシピも公開してくれた。

郡山産最高級コシヒカリ「ASAKAMAI 887」 押し麦 天栄村産自然薯 青のり 滝根町産「福うなぎ」蒲焼のレシピ

【材料(約25人前)】

郡山産最高級コシヒカリ「ASAKAMAI 887」……7合
押し麦……3合
青海苔……適量

●麦とろ地
|天栄村産自然薯……正味1㎏
|白味噌……50g
|とろろだし※1……適量
滝根町産「福うなぎ」……6尾
鰻のタレ※2……適量

※1 とろろだしの作り方
カツオ昆布だし1ℓに薄口醤油50㎖・塩6gを加え、ひと煮立ちさせて冷ます。

※2 鰻のタレの作り方
みりん・酒・濃口醤油・たまり醤油を7:1:3:1で合わせ、ひと煮立ちさせて冷ます。

【作り方】

<麦飯を炊く>

押し麦と郡山産最高級コシヒカリ「ASAKAMAI 887」を合わせて洗い、たっぷりの水に2時間浸けてから炊く。

<麦とろ地を作る>

天栄村産自然薯の皮をむき、すりおろす。

甘栄村産自然薯をすりおろす

すり鉢にとろろだしを少し入れ、白味噌をすり延ばす。②を加え、とろろだしを少しずつ注ぎ入れ、混ぜ合わせる。とろろだしは自然薯と同量が目安。

甘栄産自然薯の麦とろ地

<「福うなぎ」を蒲焼きにする>

滝根町産「福うなぎ」を背開きにし、串を打って炭火で白焼きにする。
④を20~25分蒸してから、鰻のタレをかけながら蒲焼きにする。

<仕上げる>

うつわに③を1人前量入れ、青海苔を振る。⑤を適宜切り、うつわに盛る。①を茶碗に盛り、白菜と大根の漬物を添える。

白菜と大根の漬物のレシピ

【材料※作りやすい量】

●白菜の漬物
白菜……1/2株
塩……適量(白菜の2%量が目安)
糸目昆布(切り昆布)……適量
タカノツメ(輪切り)……適量

●大根の漬物
大根……1本(約1㎏)
砂糖……220g
酒……45㎖
米酢……45㎖
塩……35g

【作り方】

<白菜の漬物を作る>

白菜は8㎜幅に切り、密閉袋に入れる。2%量の塩を加え、糸目昆布・タカノツメと合わせてよく揉み、冷蔵庫で2日漬ける。

<大根の漬物を作る>

大根は皮をむき、縦半分に切る。さらに横半分に切り、密閉袋に入れる。残りの調味料を入れてよく揉み合わせ、冷蔵庫で2日漬ける。

フルーツ王国・福島らしいデザートにワインジュレをかけて

福島食材を使ったオリジナル懐石料理の水物福島産ももふる白桃「ゆうぞら」 郡山産「ふくはる香」 せとか ワインジュレ 矢祭(やまつり)町産振り柚子。調理担当:『嵐山弁慶』磯橋輝彦さん/『京料理・寿司 松廣』北倉滉大さん。

福島県はフルーツ大国。とりわけ桃は全国の20%の生産量を占める。多くの品種が作られているが、収穫時期は初夏から9月中旬と長くはない。

そこで『ももがある』では、旬の時期に収穫した桃を年中楽しめるよう、瞬間冷凍に。ぎりぎりまで収穫せず、甘みをしっかりと引き出した産地特有の「樹成り完熟桃」を使い、「ももふる」として商品化している。

そのままシャーベットとして味わえるが、今回は、しっかりとした食感の品種「ゆうぞら」を解凍してデザートに。福島のオリジナル品種のイチゴ「ふくはる香」、せとかと盛り合わせた。

黄色に染まったジュレは、白ワインがベース。口に含んだ瞬間、柚子の香りが立ち上るよう、矢祭町の柚子の皮をたっぷりと加えている。

福島産ももふる白桃「ゆうぞら」 郡山産「ふくはる香」 せとか ワインジュレ 矢祭町産振り柚子のレシピ

【材料(約15人分)】

福島産ももふる「ゆうぞら」……4袋(480g)
郡山産「ふくはる香」・せとか・チャービル……各適宜

●ワインジュレ
|水……500㎖
|煮切り白ワイン……500㎖
|砂糖……340g
|粉ゼラチン……22g
|矢祭町産柚子……適量

【作り方】

<ワインジュレを作る>

水と煮切り白ワインを鍋に入れてひと煮立ちさせ、砂糖を加えて溶かす。
粉ゼラチンを水でふやかし、①に加えてよく混ぜる。ひと煮立ちさせてアクを取る。
②を容器に入れ、冷蔵庫で冷やし固める。
③をザルで漉してなめらかな液状にする。矢祭町産柚子の皮をすりおろして混ぜ合わせる。

ワインジュレを漉し、柚子皮を加える

<仕上げる>

福島産ももふる「ゆうぞら」を解凍する。郡山産「ふくはる香」、せとかを食べやすい大きさに切る。
うつわに⑤を盛り、④をかけ、チャービルを飾る。

フォローして最新情報をチェック!

Instagram Twitter Facebook YouTube

この連載の他の記事ニュース&トピックス

無料記事

Free Article

おすすめテーマ

PrevNext

#人気のタグ

Page Top
会員限定記事が読み放題!

月額990円(税込)初回30日間無料。
※決済情報のご登録が必要です