おいしさの科学

食品の色のチカラ

食品には、3つの機能があるとされています。ひとつは栄養、次に美味しさ、さらに健康の維持や向上に関するもの。この「健康の維持や向上」に食品の色の成分が関わっていて、身体の酸化を防ぐ抗酸化作用があると言われています。今回はあまり知られていない、食品の色についてお伝えします。


釜阪 寛(ひろし)さん:1964年生まれ。神戸大学農学部卒業後、1989年江崎グリコ株式会社入社。菓子開発研究室の焼き菓子チームに3年在籍した後、生物科学研究所で食品の新しい素材・技術開発を行う。健康科学研究所に名称変更した後、カルシウム、主に「お口の健康」の研究に携わる。2022年4月より甲子園大学 栄養学部 食創造学科教授に。同大学の学長である伏木 亨氏と共に食品の嗜好性の研究を行う。農学博士。

聞き書き:阪口 香

目次


体の酸化を防ぐ、食品の「色」

今年の夏は酷暑と言われるほど暑く、強い紫外線を浴びた方も多かったのではないでしょうか。また、暑ければキンキンに冷えたビールやスパークリングワインが美味しいですし、アイスクリームも食べたくなりますね。暑いというだけでストレスも溜まりますし、ストレス発散のためにタバコを吸われる方もいらっしゃるかと思います。

今、挙げた行為や状況、すべて体の酸化を促します。活性酸素が発生し、細胞にダメージを与え、シワが増えるなどの老化や、最悪、ガンや動脈硬化、生活習慣病の原因になると考えられているんですね。

上記のタバコを吸う、お酒を飲む、ストレスが溜まる、紫外線を浴びる、脂質を取り過ぎる…というのは体に悪いイメージがある方も多いとは思いますが、この酸化、実は私たちが酸素を吸っているだけでも進んでしまうものなのです。

「どうしようもないじゃないか!」……と、ツッコミが入りそうですが、今回のテーマである「食品の色」に含まれる成分には、酸化を防ぐ力があるのです。

食品の基本的な3つの機能

ここ30年ほどの研究から、食品は3つの機能に分類されると考えられるようになりました。

●一次機能——栄養に関する機能
炭水化物、脂質、タンパク質、ビタミン、ミネラルなどの栄養素のこと。

●二次機能——感覚や嗜好に関与する機能
味覚や風味など、美味しさに関わること。

●三次機能——身体の生理機能を調節する機能
健康の維持や向上に関与。生態防御や疾病予防、老化制御、体調制御に役立つ。

食品の色が関係するのは、主に三次機能。さまざまな抗酸化物質が含まれ、摂取することで活性酸素を消去し、老化やさまざまな病気のリスクを低下させることが期待されています。

食品の色に含まれる化学物質「フィトケミカル」

食品にはさまざまな色があり、特に野菜の中には色鮮やかなものが多いですね。トマトやパプリカの赤、カボチャの橙(だいだい)、トウモロコシの黄、ナスの紫……。色ごとに(または色によっては複数種の)成分をもち、期待される効果・効能があります。この、植物に含まれる化学物質は「フィトケミカル」と呼ばれています。

フィトケミカルは、植物が紫外線や昆虫、菌などの有害な存在から身を守るために作り出した成分。色素や香り、辛味、苦味、アクなどが含まれていることが多いです。現在、明らかになっているフィトケミカルの種類は数千と言われています。今回は、その代表的なものを見ていきます。

とは言え、フィトケミカルは「どれだけの量を摂取したらいい」という指標はありません。サプリメントもありますが、特定の種類を多量に摂取するのではなく、できるだけ多くの種類を少しずつ摂取し、バランス良く摂取するのが好ましいと考えられています。
※栄養面(一次機能)では、1日の成人1人当たりの野菜摂取目標を350g(カリウム、食物繊維、ビタミンの量から算出)、果物は200gと厚生労働省が設定している。

ナスとトウモロコシの料理撮影:塩崎 聰

フィトケミカルの「水溶性」と「脂溶性」

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