【レシピ付き】鯛の澄まし椀 㐂川流——『浪速割烹 㐂川』上野 修さん作
法善寺横丁にある『浪速割烹 㐂川(きがわ)』店主の上野 修さんが提案するのは、カツオ節も昆布も使わない吸い地。これまでもエビや甘鯛、クエなどで実践してきたコンソメを、3月の大阪料理会のテーマ食材・桜鯛で仕立てました。アラでだしをとり、卵白と柑橘の酸を使って澄ませる上野流の魚介コンソメには、昆布は欠かせない存在だったのですが…。昨今の真昆布の現状を考え、味噌でうま味を補う方法を考案。随所に細やかなコツが散りばめられたレシピに、会員は強い関心を示していました。
※大阪料理会 公式サイトhttps://osakaryourikai.com/
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上野 修さん(大阪・法善寺横丁|『浪速割烹 㐂川』店主)
1961年、大阪生まれ。19歳で『㐂川』に入店後、『志摩観光ホテル』のメインダイニング『ラ・メール』へ。総料理長・高橋忠之氏にフランス料理を学ぶ。1994年、『㐂川』二代目に。西洋料理の技術や発想、食材を柔軟に取り入れて仕立てる洗練された大阪好みの料理が持ち味。「大阪料理会」運営委員長。
味噌を隠し味にした鯛のコンソメは“カツオ節も昆布も使わない吸い地”がテーマです
僕はフレンチを学んだこともあって、椀種が何であっても吸い地はカツオ昆布だしという日本料理のお椀のあり方に、昔からちょっと疑問を持っていました。フレンチだと仔羊には仔羊の骨でとったソースを合わせるので、鯛のお椀にも鯛のだしを合わせたらいいのでは?と思ったんです。
そこで、いろんな魚介のコンソメ椀を仕立ててきました。底味を決めるのに真昆布は必須だったのですが、天然ものが枯渇しているという危機に直面して、昆布のうま味に頼りすぎていた自分に気が付いたんです。
真昆布は大阪料理の味の要。絶対に必要なものですが、だからこそ、これぞという時に使いたい。そこで、“昆布を使わない”コンソメを模索し始めました。
「和食を科学する 料・理・理・科」の「真昆布だしを科学するvol.2鯛コンソメ編」で、昆布のうま味を味噌で補うという実験をしたのですが、これが思った以上に上手くいきまして。その時のレシピをブラッシュアップしたのが、この一椀です。
鯛のアラと野菜の切れ端や皮などを煮出したら、卵白のコシを切り、うちはスダチ果汁も加えます。強火にかけて素早く沸騰させ、その後はぐっと火を弱めて、卵白がしっかりと固まるまで加熱を続けると、黄金色のクリアなコンソメがとれます。
椀種は、桜鯛の葛叩きと白子豆腐。桜鯛は身が痩せているので、うちでは白子や真子と一緒に使うようにしています。白子豆腐は、白子を裏漉しし、コンソメと葛などを使って煉り上げたもの。この時、だしをとるのに使ったアラから身をせせり出し、胃袋や肝も叩いて合わせると、味にも食感にも変化が生まれます。
白子豆腐にアオサ海苔を練り込んだので、吸い口は香りが主張しない浜防風にしたかったのですが…。生産者が激減しているそうで、手に入りませんでした。それなら逆に、強烈な香りのものを合わせてはどうか?と、黄ニラを使ってみました。甘鯛のコンソメ椀には黄ニラがよく合うのですが、鯛の旨みは繊細なのでどうかな…?と思いましたが、好評で良かったです!
「味噌が入っているとは思えないような、クリアな旨み!」と会員が声を揃えた鯛のコンソメ。その作り方に多くの質問が飛び、上野さんは丁寧に解説をした。「スダチの代わりにトマトの酸味を使ったらどうか?」という意見が出て、畑 耕一郎会長も大いに賛同。上野さんは「いいヒントをいただきました!」と笑顔で返した。
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