「銀座 小十」のエスプリ

【レシピ付き】“本能が求める春”をテーマに――平貝春菜づくし&春の土瓶蒸し

2022.03.01
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連載:「銀座 小十」のエスプリ

3月の献立の最初の料理は、『銀座 小十』で18年間供し続けている店主・奥田 透さんのスペシャリテ「平貝春菜づくし」です。多種多彩な春野菜と山菜、平貝をたっぷりと盛り込んだ一品は、春が一番好きな季節という奥田さん曰く「動物の本能を呼び覚ます料理」。続く二品目には、海の春を伝える二枚貝のハマグリの新作「春の土瓶蒸し」を。それらは単に旬の素材を主役にした料理にあらず。冬から春へと移ろう中で、体が求めるものをまずは供す。コースの“掴み”となる二品には、奥田さんのこんな想いが込められています。


奥田 透(おくだ とおる):1969年、静岡県静岡市生まれ。静岡、京都、徳島で約10年間、日本料理を学ぶ。29歳で地元・静岡に『春夏秋冬 花見小路』を開店。2003年に東京・銀座に移り『銀座 小十』をオープン。2011年、銀座五丁目並木通りに『銀座 奥田』をプロデュース。12年6月同ビルに『銀座 小十』を移転する。13年にフランス・パリ、17年にはニューヨークに『OKUDA』を開店。本物の日本料理を海外で提供するという挑戦を始める。近刊に、『日本料理は、なぜ世界から絶賛されるのか』(ポプラ社)、『献立にみる日本の節供と守破離のこころ 銀座小十の料理歳時記十二カ月』(誠文堂新光社)ほか。

聞き書き:瀬川 慧 / 撮影:大山裕平

平貝春菜づくし——冬眠から覚めた動物が食(は)む野の草のイメージです

a[料理] 平貝春菜づくし(平貝、菜の花、コゴミ、タラノ芽、ヨモギ、ワラビ、筍、水菜、空豆、ホワイトアスパラガス、ウルイ、芹、宮古ゼンマイ、ツクシ、ウド、木の芽)
[うつわ] 平貝殻、備前焼平皿

一年のスタートは、春です。人間界だけが一番寒い冬の一月をスタートとしていますが、本来、動物や生物など命あるものは、暖かくなってから行動を始めます。冬眠から覚めた肉食動物が最初に食べるのは、野の草だそうです。野草の苦みとえぐみによって、休めていた胃を調え、デトックスをしてから肉食に戻ります。われわれ人間もまた動物である以上、春からスタートするのが自然なのではないでしょうか。

一方、海の中では二枚貝が旬を迎えます。赤貝、ミル貝、平貝、アサリ、ハマグリなどは6月、7月に産卵をしますから、その前のこの時季は栄養を蓄えていて一番美味しい季節です。エキスたっぷりのハマグリの潮仕立てやアサリの味噌汁を飲むことで体が浄化され、活性化していきます。

こうした春の象徴としてお出しするのが、「平貝春菜づくし」です。これはいわば「動物としての本能を呼び覚ます料理」ですから、あまりこじんまり表現したくはないのです。器として平貝の大きな貝殻を用いますが、これが自然界にあること自体が驚異でしょう。どんな絢爛な蒔絵や螺鈿(らでん)を施した器でも敵わない、古の自然なままの美しさ、エネルギー、パワーが集約されていると私は思います。

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