「銀座 小十」のエスプリ

【レシピ付き】皐月を苦しむ!? ――蒸し鮑 肝だれ&稚鮎素麺

2022.05.02
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連載:「銀座 小十」のエスプリ

『銀座 小十』店主の奥田 透さん曰く「5月は献立を考えるのに一番苦しい季節」。春でもない、夏でもない、どっちつかずの食材の端境期。山菜や春野菜、筍はもう終わり。かといって冬瓜や南瓜には少し早く、鱧もまだ使いたくない。数年前までは毎月来るお客さまに「5月だけは来ないでください」と言っていたそうです。そんな5月の献立の苦しみを楽しみに変えて生み出したのが、今年の新作。涼しげなガラスの器に大胆に蒸しアワビを盛り、一皿目から鮮烈なインパクトを放ちます。端午の節供にちなんで菖蒲刀(しょうぶがたな)を添え、皐月の季節感も創出。「揚げるのが一番美味しい」という稚鮎の仕立てにも、奥田流のエスプリが溢れています。


奥田 透(おくだ とおる):1969年、静岡県静岡市生まれ。静岡、京都、徳島で約10年間、日本料理を学ぶ。29歳で地元・静岡に『春夏秋冬 花見小路』を開店。2003年に東京・銀座に移り『銀座 小十』をオープン。2011年、銀座五丁目並木通りに『銀座 奥田』をプロデュース。12年6月同ビルに『銀座 小十』を移転する。13年にフランス・パリ、17年にはニューヨークに『OKUDA』を開店。本物の日本料理を海外で提供するという挑戦を始める。近刊に、『日本料理は、なぜ世界から絶賛されるのか』(ポプラ社)、『献立にみる日本の節供と守破離のこころ 銀座小十の料理歳時記十二カ月』(誠文堂新光社)ほか。

聞き書き:瀬川 慧 / 撮影:大山裕平

蒸し鮑 肝だれ——ひと目で“皐月”を伝え、アワビで魅せる。一皿目から勝負に出ます!

gin0014 a[料理] 蒸し鮑 肝だれ 空豆 青柚子
[うつわ] 市川知也・作 ガラス丸皿

5月といえば、端午の節句。この節目を自分なりにどう表現しようか?と考えて…。まずは第一球目で先制ホームランを狙ってみるか、とチャレンジしたのが、このアワビの一皿です。半透明の厚手のガラスの丸皿に、菖蒲に蓬を巻いた“菖蒲刀”をビシッと置き、その上に蒸したアワビを厚めに切って、ゴロゴロと2つ。そこに肝だれをかけて、空豆で皐月の緑を添えます。

「いらっしゃいませ」とお客さまをお迎えして、最初にこの削ぎ落した料理が運ばれて来たら、この試合は勝ちなんじゃないかなと思っています(笑)。菖蒲刀で節供を匂わせつつ、アワビのご馳走感で、真っ向勝負に出ます。

活けアワビは酒蒸しにして、その生肝でタレを作ります。生で作るのはパワーが全然違うから。肝は蒸してしまうと、圧倒的な持ち味の迫力が感じられなくなるんです。一皿目はインパクトが大事ですから、口に入れた時に、高いトーンで「旨い!」と言わせたいんです。

実はもう一つ、5月には大きなトリ貝という4番バッターもいます。こちらは生と、霜降りまたはさっと炙ったものを盛り合わせ、醤油、海苔、三ツ葉、ワサビと酢橘で和えて甘味を際立たせます。ただし、トリ貝の料理は口開けの一品目としてシャンパンに合わないのが難点。うちでは最初にシャンパンを召し上がるお客さまが多いことを考えると、やはり最初に蒸しアワビをお出しすることにしました。

献立や料理というのは、考えた分だけ、練りに練った分だけ、お客さまには伝わるものです。「アワビをのっけただけ」と思うかもしれませんが、さんざん考えて行きついた仕立てです。“そぎ落とす”という境地に至るまで、突き詰めたか、どうか。シンプルでカッコいい料理はそこが違うと思うんです。

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