和食のいろは

【一覧表付き】春の野菜・山菜・海藻

2022.04.04
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連載:和食のいろは

3・4月に旬を迎える野菜や山菜、海藻などをご紹介。春は芽吹きの季節と言われ、野や山の食材には生命力が漲(みなぎ)っています。冬眠から目覚めた獣(けもの)や虫たちから身を守るため、独特の香りやほろ苦さがあるのも特徴です。特に筍や、フキノトウ、コゴミ、タラノ芽などの山菜は、その代表格。「辻調理師専門学校」日本料理主任教授を務めた畑 耕一郎先生に、それぞれの特徴や選び方、美味しい調理法などをお教えいただきました。

畑 耕一郎(はた こういちろう):大阪生まれ。「辻調理師専門学校」理事・技術顧問。「大阪料理会」会長。TBS「料理天国」やABC「上沼恵美子のおしゃべりクッキング」など多くのTV番組に出演。『プロのためのわかりやすい日本料理』(柴田書店)など著書も多数。

文:阪口 香 /  料理制作:大阪・北新地『割烹 味菜』 / 撮影:東谷幸一

春野菜の特徴とは?

和食の世界では、季節に先駆けて出てくる「はしり」や「旬」の食材を大切にしてきました。特に「はしり」の食材は、季節が移行する中で、いち早く次の季節を感じられるもの。春の野菜や山菜もまた、冬の寒さが残る中、早春の味覚として楽しみます。

春には、新物が出てくるため、新キャベツや新玉ネギなど、「新」がつく野菜が増えます。また、土の中や木々の枝から「芽吹く」食材、山菜・野草などが顔を出します。これらは、芽が成長していく過程で鳥や動物、虫などに食べられないよう、苦みや独特の風味を持っています。

緑色が美しかったり、みずみずしさや歯ごたえがあるなど食感豊かなものが多いのも、溌溂(はつらつ)とした春食材の特徴。五感で季節を感じる春野菜を、献立に加えてみましょう。

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春の花形食材・筍

筍は「古事記」にも記述がみられるように、奈良時代には日本で食べられていた食材ですが、現在手に入る品種の多くは中国からもたらされたものです。

そのうちの一つで、現在最もよく食べられている品種が「孟宗竹(もうそうちく)」。1736年に薩摩藩主・島津吉貴によって琉球経由で日本に入り、以後、各地へ広まったとされ、現在では福岡、鹿児島、熊本、京都などで多く収穫されています。

近畿へは明暦、寛文(1655~1672年)の頃、大阪の豊能郡の人が根株を持ち帰り、三島郡へ。そこから京都の南部や、大阪の河内や和泉(泉州)へと広がりました。現在、料亭や割烹店で珍重されているのが、大阪・貝塚市の東部、和歌山県寄りにある木積(こつみ)の筍。水分と養分をほどよく含んだ粘土質の赤土で育て、土から穂先が出ないうちに収穫します。これは「白子」と呼ばれるほど白い筍で、香りや甘みが強く、繊細な野趣とアクの少なさが特徴。4月中旬から5月までと他所よりも遅く出回ります。

筍の選び方

「朝掘り」のものを、夕方に購入しても意味がありません。鮮度がいい、なるべく昼前には手に入れ、早々に下処理をしましょう。
選ぶのは、土がついているならしっとり湿っているもの。見た目は細いものより、ずんぐり太いもの。節の間が短く、皮がしっかり重なっているものがいいですね。筍は掘った後も成長し、それとともにアクが強くなり、味が劣化します。

筍の下処理

アク抜きは、筍の状態を見て行うことが大切です。
「白子」ほどのいいものが手に入った場合はアク抜き不要。朝のうちに皮を剥き、切りくずや絹皮を茹で、その茹で汁を含ませたクッキングペーパーで筍を包み、ラップをかけて冷蔵庫へ入れておくという方法もあるようです。
だいたいの筍は、皮が黒くなっています。持ち帰ったら、すぐさまアク抜きをすることが、筍を美味しくいただくためのコツです。

➡「WA・TO・BI」では「【プロ向け】筍の茹で方。アク抜きに米ぬかはいる?いらない?」という記事を連載「和食のいろは」にて掲載。筍の下茹での基本を農学博士の川崎寛也先生が解説しています。

筍のアク抜き

また、大根おろしを使用する方法もあります。大根おろしを搾った汁と同量の水を合わせ、1%程度の塩を加えます。そこに皮を剥いて、食べる大きさに切った筍を入れ、1時間~1時間半浸けてから直煮し、先が尖った金串を刺してスッと通ったら、水にさらしましょう。

定番の筍料理

<土佐煮・若竹煮>
「筍は酒飲み」と言われるほど筍と日本酒は相性がいいです。たっぷりの日本酒で美味しく仕上げましょう。アク抜きをした筍を鍋に入れ、カツオ昆布だしにたっぷりと酒を加え、塩・ごく少量のみりん・薄口醤油で持ち味を生かすようにして煮ます。80℃後半~90℃くらいの、小さな泡粒が出るような火加減で。水分が蒸発したらその分だしを足し、味が一定になるようにします。煮上がったら、火からはずし、味を含ませるように自然に冷まします。

カツオ節をレンジで乾燥させ、軽く揉みほぐしながらかけ、木ノ芽を多めに添えたら土佐煮の出来上がりです。

筍の土佐煮3月中旬、『割烹 味菜』の筍は、鹿児島県蒲生町から。その後、福岡の合馬(おうま)産など、産地は北上していく。

若竹煮の場合は、ワカメの硬い筋の部分を取り除き、食べやすい長さに切ってサッと熱湯に通したものを筍に合わせて軽く煮れば完成です。こちらにも、多めに木ノ芽を添えていただきましょう。

筍の若竹煮

<筍ご飯>
下味をつけずに湯がいた筍を切り(穂先や真ん中部分は厚みを持たせた短冊切りに、根の部分や小ぶりな筍はいちょう切りに)、カツオ昆布だしに薄口醤油を加え、ご飯を炊きます。炊き上がる直前に、細く切った絹皮(姫皮とも呼ばれる。筍の先端を切り落とし、外側の皮を除いた内側にある、薄く柔らかい皮)を混ぜれば、食べた時に独特の香りと食感が広がります。

お好みで、油抜きをした薄揚げや、脂が少ない鶏モモ肉を一緒に炊き込んでもいいでしょう。

苦みも美味しい・山菜

5000年以上前の縄文人も口にしていたと言われる山菜。日本最古の歌集『万葉集』には27種もの山菜が登場、奈良時代の人々もさまざまな山菜を食べていたことが伝えられています。

現在では早春から柔らかな風味で食べやすい栽培ものが出回ります。真骨頂は山野で自生している香りや苦みが強いもの。春の訪れを感じさせてくれます。

代表的なのが、フキノトウ、コゴミ、タラノ芽、ウルイ、ウド。
手に入れたら、必ずその日のうちに調理し、いただきましょう。山菜も、筍と同じく時間が経つにつれてアクが強くなります。

山菜の選び方

フキノトウなら、花が開いているものより蕾の状態のもの、コゴミは葉が開く前のもの、タラノ芽は葉の色が美しい緑色で、切り口が新鮮で白いものなど、イキイキとした状態のものを選びましょう。現在では、各地のアンテナショップや道の駅、スーパーなどでも販売されています。また、各地の栽培農家が、こだわりの山菜を販売していることもあるので、チェックしてみましょう。

山菜の下処理

山菜の種類や、その育ち具合、どのような料理にするかによってその方法は変わってきます。

タラノ芽やセリ、コゴミなどは比較的アクが弱いので、塩水で茹でてから水にさらすことで、アクが抜けることが多いですね。
ヤマブキや山ウドなどは、同様にして、アクがまだ気になるようなら、少し長めに水に漬けておくといいでしょう。

フキノトウや成長したワラビは少しアクが強いので、灰汁を入れて湯がくか、湯で茹でたところへごく少量の重曹を加えてしばらく漬けておくといいですね。「かぎわらび」という、上部が鉤(かぎ)の手のように曲がったワラビは、サッと水で濡らして塩を振ってこすり、産毛を取って大きな容器へ。灰をまぶして熱湯を注ぎ、温度が下がったら水にさらします。

定番の山菜料理

<天ぷら>
ウルイやウド、タラノ芽やフキノトウなどは天ぷらにすることで、手間ひまのかかるアク抜きをせずに味わえます。苦みや青々しさが強い山菜は、油分と接することで味わいが穏やかになるんですよ。

通常通り揚げるだけでも美味しいのですが、コゴミやタラノ芽、ウルイなど、少し穏やかな味わいの山菜には、「柿の種」のような醤油あられを使うのもいいでしょう。
まず、醤油あられを袋などに入れて軽く叩いた後、粗い目のザルなどでふるっておきます。そして山菜に卵白をつけ、あられをつけて揚げたら完成です。
カリカリとした食感に、醤油の旨みや香ばしさがプラスされ、一味違った美味しさになります。

山菜の天ぷらおかきは山菜全体につけてもいいが、山菜の持ち味を生かしたい場合は、半分ほどつけるのもいい。空豆を「おかき揚げ」にしても美味しいという。

穏やかに春を告げる・豆

豆は一年中あるものですが、新物が好まれること、美しい緑色が芽吹きのイメージと重なり、「豆といえば春」と結びつく人も多いでしょうね。

中でも空豆は春だけのものです。他、ウスイエンドウやキヌサヤ、インゲン豆などは春から初夏に向けて露地ものが出てきますね。これらの、売り場での目利きのポイントやそれぞれの持ち味を生かす料理をご紹介します。

豆の選び方

サヤにハリとツヤがあって、切り口が新鮮なもの。空豆やウスイエンドウは実入りがしっかりしているもの、キヌサヤは名前の通り「サヤ」を味わうものですから、豆が大きくなりすぎていないものがいいですね。また、「キヌ=絹」というように、皮がシルクのようになめらかなものがいいでしょう。

豆の持ち味が生きる料理

空豆は塩茹でに勝るものなし、です。豆をサヤから取り出し、「おはぐろ」と呼ばれる縁のへこんだ黒い線をつまみ、ちょっとだけ剝がします。その状態で塩水に30分ほど浸けておくと、茹で時間が30秒~1分程度でも、しっかり塩味が入りますよ。
旨みをしっかり効かせたい場合は、まずサヤだけを塩入りの昆布水(昆布を2時間以上浸した水)で茹で、この茹で汁を使って豆を茹でるといいですね。ザルに上げたら水に落とさず、うちわで扇いで冷まします。

空豆の塩茹で

ウスイエンドウは豆ご飯が定番ですね。気をつけていただきたいのが、ご飯に始めから豆を入れて炊かないこと。ご飯と豆は硬さが違いますから、当然、炊き上がるタイミングが違います。
まず、洗った米に昆布とごく薄味の塩水、サヤを入れて炊き始めます。炊き上がる寸前にサヤを取り出し、剥き身にしたウスイエンドウを鍋で塩茹でにし、水分をよくきって熱い状態のまま、炊き上がったご飯に加えます。もしくは、塩茹でして冷まし、薄皮を外したものを炊き上がったご飯に混ぜ込みます。すると風味が一段と良くなります。

キヌサヤは、ひたひたの塩水(塩分0.5%程度)に浸した状態で茹で始めます。そうすると甘みが残るんですね。茹で上がりは、一つ食べて食感をみてみましょう。茹で時間を短くしてシャキシャキとした食感を残すのもアリです。ザルに上げて冷やしますが、キレイな緑色を残したければ、流水で粗熱を取るか、扇いで急冷してください。粗熱が取れたら合わせだしに浸けて味を含ませてからいただくのがよいでしょう。

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