【一覧表付き】夏(7~8月)が旬の野菜
夏になると、トマトやオクラ、トウモロコシなど、カラフルな野菜を多く見かけるようになります。野菜自体にも多くの栄養が含まれていたり、身体を冷やす効果が期待できるものもあるので、暑い季節を乗り切るのに一役買います。
そんな野菜の選ぶポイントや、色や濃い味わいを生かす調理法を、「辻󠄀調理師専門学校」日本料理主任教授を務めた畑 耕一郎先生と、創業40年の北新地の名割烹『味菜(あじさい)』店主・坂本 晋さんに解説いただきます。旬の食材一覧表も付いてますので、献立を考える際などに、ぜひご活用ください。
畑 耕一郎(はた こういちろう):大阪生まれ。「辻󠄀調理師専門学校」理事・技術顧問。「大阪料理会」会長。TBS「料理天国」やABC「上沼恵美子のおしゃべりクッキング」など多くのTV番組に出演。『プロのためのわかりやすい日本料理』(柴田書店)など著書も多数。
坂本 晋(さかもと すすむ):岐阜県高山市出身。18歳から下呂温泉『吉泉館』で修業し、大阪・北新地の料亭『神田川』へ。割烹『味菜』を開店し、40年が経つ。淀川や大阪湾の地魚に注力しながらも、全国各地から産地直送で旬の食材を取り寄せ、割烹料理に仕立てる。
2022.07.07配信記事を更新
盛夏の野菜の特徴とは?
太陽をたっぷり浴びて育つ夏の野菜は、βカロテンや各種ビタミン、カリウムなどを多く含んでいます。トマトやキュウリなど、生のまま食べられる野菜も多いので、手軽に栄養が補給できます。
トマトやトウモロコシのように、果物並みに甘い野菜が増えているのも近年の傾向。食卓が甘い味ばかりにならないようにバランスを取ることも必要です。
高温になる日や地域も多いため、露地栽培の葉物は少なくなりがちです。豆類やオクラなどを上手に使い、食欲をそそる献立を考えましょう。
夏(7~8月)が旬の野菜一覧
名前(カタカナ) | 漢字表記 | 別名または同種 |
葉茎菜類 | ||
---|---|---|
ズイキ | 芋茎 | 赤ズイキ、軟白ズイキ、芸濃ズイキ 紅ズイキ、ネイモ(根芋)など多数 |
シロナ | しろ菜 | オオサカシロナ(大阪しろ菜) |
ツルムラサキ | 蔓紫 | パセラ |
モロヘイヤ | シマツナソ(縞綱麻)、タイワンツナソ(台湾綱麻) | |
クウシンサイ | 空心菜 | |
ハスイモ | 蓮芋 | リュウキュウ(琉球) |
果菜類 | ||
オクラ | 陸蓮根、秋葵 | オカレンコン(陸蓮根) |
ニガウリ | 苦瓜 | ゴーヤ |
アマトウガラシ | 甘唐辛子 | シシトウ(獅子唐)、フシミトウガラシ(伏見唐辛子)、 マンガンジトウガラシ(万願寺唐辛子)、 ヤマシナトウガラシ(山科唐辛子)など多数 |
キュウリ | 胡瓜 | |
トマト | 蕃茄 | |
トウガン | 冬瓜 | トウガ、カモウリ(氈瓜・加茂瓜・賀茂瓜) |
トウモロコシ | 玉蜀黍 | トウキビ(唐黍) |
マルナス | 丸茄子 | カモナス(賀茂なす)、ヤマトナス(大和丸なす)など多数 |
ミズナス | 水茄子 | |
豆類 | ||
エダマメ | 枝豆 | ナツマメ(夏豆)、ダダチャマメ(だだちゃ豆)、 クロサキチャマメ(くろさき茶豆)、 クロエダマメ(黒枝豆)など多数 |
香味野菜 | ||
ミョウガ | 茗荷、冥加 | |
オオバ | 大葉 | シソ・アオジソ (紫蘇、青紫蘇) |
新ショウガ | 新生姜 | |
レンコン | ||
レンコン | 蓮根 | ハスネ(蓮根) |
冬瓜は、夏に採れるのに冬の瓜!?
夏が旬にも関わらず、冬の瓜と書くのは、カットせずに冷暗所などに置いておくと冬まで腐らず保存できるから。丸や楕円形、ミニサイズのものも見かけるようになっていますが、いずれも成分の95%が水分。火を入れると透明感が出る涼しげなビジュアルと、淡泊な味わいが夏にぴったりの野菜です。
原産地はインド。日本には平安時代に伝わったようで、意外に古くから親しまれてきた野菜でもあります。
栄養が少ない野菜のように思われますが、カリウムが豊富に含まれ、むくみの解消効果が期待できます。実は、ビタミンCもたっぷりです。
冬瓜の選び方
ずっしりと重みがあり、皮全体に粉を吹いているものを選びましょう。カットされている冬瓜はみずみずしさがポイント。果肉が白く、ワタがキュッと詰まっているものが新鮮です。
美しい翡翠色を生かす調理
椀種にしたり、含め煮にして冷たく提供したり、スッポンと合わせてスープに、と夏の和食の献立には欠かせない野菜です。
薄くて硬い緑の皮は剥かなくては食べられませんが、果肉との間のわずかなグラデーションを生かすことで、料理は美しく仕上がります。
「日本料理では、表皮を薄く剥いて、美しい翡翠色を生かす火入れをします。基本的には味の薄い野菜なので、煮るならだしはやや濃いめに。鶏モモ肉や塩豚など脂気のある食材と合わせるのが良いと思います」(畑先生)。
「私は下処理の際に、皮目に炭酸を摺り込みます。そうすると短時間で柔らかくなるので、美しい緑色がキープできます。大勢をもてなす時には、横半分に切ってスプーンなどでワタを取り除き、そこに春雨やベーコンを入れてゆっくり蒸し上げる料理もおすすめです。冬瓜の果肉と共に具材もすくって盛り付けると場が華やぎます」(坂本さん)。
冬瓜饅頭、味噌だしと青柚子を合わせる冷やし冬瓜。細長く麺状に切り、葛粉を打って茹でた冬瓜素麺も『味菜』では人気。淡泊だからこそ、しっかり手をかけることでご馳走になる野菜です。
『味菜』では、冬瓜でエビと百合根を覆うように成型して蒸し、温かいあんをかけて提供。ショウガを添えて。
だしにもなる! 旨みが強いトマト
楕円形や、黄色に緑色など、近年は形も大きさも様々なトマトが出回るようになりました。フルーツトマトや塩トマトのように栽培方法を工夫する傾向も年々強まっていますが、日本料理には実は使いにくい野菜だと、畑先生は話します。
「ですが、“トマトウォーター”にすると、昆布だしにも負けない旨みがあって、いろんな料理に使えますよ」(畑先生)。
完熟したトマトを湯むきし、半割に。酸味が強くなりやすいので種やゼリーの部分は取り除き、細かくつぶして晒(さらし)などで包みます。これを吊るしておくと、ポタリポタリと澄んだ果汁が滴り、一晩ほどで抽出できます。これがトマトウォーター。一般的なサイズのトマト約3個で100㎖ぐらいは取れます。
麺つゆなどに加えると、フレッシュなトマトの香りがフワッと立ちます。塩や淡口醤油と酢で加減して、白身魚の造りに添えるのもおすすめです。残った果肉は煮込み料理などに生かすと無駄なく使い切れます。
トマトの選び方
丸くて重みのあるものが良品です。お尻から上部に向けて筋が見えるタイプのトマトは、筋がたくさんあるものほど甘いと言われています。青みが残っているトマトは常温に置いて追熟を。すでに完熟しているものはヘタを下にして、冷蔵庫の野菜室で保存しましょう。
果肉を生かした和食の仕立て
「トマトをメインに据えようとすると、どうしても洋風、いわゆるイタリアンな感じになってしまうので、日本料理には難しい食材」と畑先生は話しますが、果肉を和食として調理するなら、強い甘みではなく、独特の酸味や香りを生かした仕立てがいいでしょう。
「湯むきして裏濃ししたトマトを山芋のとろろに混ぜ入れて冷やすと、夏向きの一品になります。味付けは塩だけで十分です」(坂本さん)。
トマトをフードプロセッサーで粉砕し、カツオ昆布だし、大和芋と合わせて。ジュンサイをのせ、夏らしい食感と喉越しの一品に。
「同じような手法ですが、ペースト状にしたトマト果肉を、生の白剥きゴマで練ったゴマ豆腐の上がりに加え、冷やし固めると桜色のトマト豆腐ができます。盛夏の先付や箸休めにピッタリです」(畑先生)。
叩いてよし、揚げてよしのオクラ
明治時代に日本に伝わったものの、昭和50年代になって一般に流通されるようになったオクラは寒さに弱い野菜。日本では鹿児島や高知県で主に栽培されています。実はオクラは英語名。Okraと書きます。
育ち過ぎたオクラは、筋張ったり、苦みが出たりするものもあるので注意。切り口がみずみずしいものを選びます。低温障害を起こしやすい野菜なので、新聞紙などに包んで冷暗所に置き、早めに使い切ります。
「オクラは湯がいて縦割りにし、種をスプーンなどでこそげ取って使います。種には若干の渋みやエグミがあるのでこれを取り除くのと、口当たりを良くするのが目的です。種が気にならない小ぶりサイズは丸ごと揚げてだし浸しに。天ぷらやフライにするのも美味しいですよ」(畑先生)。
茹でてから細かく刻んで粘りを出した、叩きオクラをとろろのように使うのも手。魚介と合わせると、彩りもきれいな一品ができます。
タコの酒煎りに叩きオクラをかけ、土佐酢でいただく一品。
一般的なオクラの長さは約10cm。断面は五角形ですが、沖縄で栽培される「島オクラ」などは長さが20cmもあり、断面は丸です。赤紫色のオクラもありますが、加熱すると緑色に変化します。卵スープや味噌汁の具に彩りを添える野菜としても重宝します。
枝付きで売られていたから、枝豆
枝豆は、青い状態で収穫する未成熟大豆のこと。今はサヤだけを詰めた袋入りが主流ですが、かつては枝付きのまま並ぶことが多かったために「枝豆」と呼ばれるようになったと言われています。近年は枝豆専用の品種開発が盛んで、400種以上もあるとか。10月頃にかけて、山形特産のだだちゃ豆、丹波特産の黒枝豆などが順次出回り、市場を賑わせます。
「大阪では、八尾の枝豆が人気ですね。産地が近く鮮度のいい状態で入手できるので、豆にハリがあって食感もいい。甘みがあるのも特徴ですね」(畑先生)。
「私が子どもの頃は、枝豆のことを畔豆(あぜまめ)と呼んでいました。田んぼの水が流れ出さないよう、堰(せ)き止める意味で畔に植えられていたからです。根が良く広がるので、モグラ除けの目的もあったと聞いています」(坂本さん)。
枝豆は美味しさを左右するアミノ酸と糖分の減少が早く、収穫2日で半減するとも言われています。朝採れの枝豆を購入するため、八尾の直売所に毎年足を運ぶファンが多いのも納得です。
枝豆の選び方
できれば枝付きを。ふっくらしたサヤが万遍なく付いているものを選びます。枝自体が枯れているものは避けた方が良いでしょう。袋詰めされている場合は、サヤがキレイな緑色で、産毛が立っているものを選びます。いずれにしろ、新鮮なうちに茹でることが大切です。
枝豆が生きる料理
「美味しい茹で枝豆を作る第一のコツは、よく洗い、サヤの両端をハサミで切り落とすこと。少し面倒ですが、豆に塩味を染み込ませるための大事なひと手間です。第二のコツは塩分濃度1%ほどの塩水をヒタヒタに張って木製の落とし蓋をし、沸騰してくれば、泡が緩やかに上がる程度の火加減で茹でること。第三のコツは、豆をつまんで食べて火通りを確認! あとはザルに上げて、しっかり湯気を抜いたら完成です」(畑先生)。
茹で時間は豆によって変わるので、途中で硬さを見ます。冷水に落とすと水っぽくなるので、おか上げしますが、その間にも余熱が通るので、やや硬いと思うぐらいで引き上げるのが頃合いです。
『味菜』では、割烹らしく、トウモロコシと合わせたかき揚げなど、ひと手間加えた一品が人気。
「きれいな薄緑色が生かせるすり流しもよく作りますね」(坂本さん)。
枝豆を塩茹でした後、水分を飛ばすために少し強めの塩をし、サヤと豆の薄皮を取ってフードプロセッサーへ。吸地ほどに塩梅したカツオ昆布だしと塩を加えて仕上げる。黄色と白色のトウモロコシのペーストを添えて。
盛夏の葉物
7~8月にかけては露地栽培の葉物が減る季節ではありますが、暑さに強い、南国原産の葉物もあります。ツルムラサキ、モロヘイヤです。どちらも独特のぬめりがあり、カルシウムやビタミン類が豊富。お浸しや汁物に重宝します。
東南アジア原産の空心菜も暑い夏の野菜。葉には少しぬめりがあり、空洞になっている茎の部分は炒め物にするとシャキシャキの食感が楽しめます。多くのβカロテンを含むことでも知られています。
➡ご紹介した料理のレシピは、「『味菜』の割烹料理 盛夏の野菜編」で配信。店主・坂本 晋さんの調理指南にご注目を!
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