昆布はどうなる?

熟成で深みを増す、蔵囲昆布のハナシ

北前船の寄港地として栄えた北陸の要衝、福井県敦賀(つるが)に創業して150余年。曹洞宗大本山永平寺御用達の“御昆布司(おこぶし)”でもある『奥井海生堂』。その4つの蔵には、昆布の箱がうず高く積まれていました。箱を包むむしろには、平成21年、25年、30年などと記された木札が掛かっています。これぞ、敦賀伝統の蔵囲(くらがこい)昆布を、さらに深めた熟成昆布。今回は、四代目の奥井 隆社長に、昆布の熟成についてのお考えを伺います。

文:団田芳子 / 撮影:東谷幸一

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敦賀伝統の蔵囲昆布とは?

敦賀には、昆布を蔵で寝かせてから出荷する「蔵囲」という伝統の手法がある。

江戸時代、北前船で北海道の昆布が敦賀に到着するのは、雪が降り始める頃だったという。当時は雪の中での運送手段がなく、やむなく蔵に保存し、雪が解け、桜が咲く頃に都へと運ばれた。これが蔵囲昆布の始まりだ。

「一冬、蔵で休ませたことがむしろ良かったんです。昆布の磯臭さや雑味、ぬめりがとれて、結果的に昆布の旨みがより引き出されることになったんですよ」と話すのは、『奥井海生堂』代表取締役・奥井 隆さん。

ところが、交通手段の発達とともに蔵囲昆布の伝統は失われていく。
昆布を囲うことは、在庫を抱えることと同じだ。すぐに換金できるならしたいのは人情。扱い方によってはカビが発生するなどのリスクもある。
「昆布商側の事情から昆布を寝かせずに出荷するようになっていったんです」。

『奥井海生堂』でも、第二次世界大戦の空襲で、奥井家の屋敷ごと昆布蔵も灰になり、蔵囲は一時途絶えたが、四代目・奥井さんが復活を決意。きっかけは、“島物(しまもの)”と呼ばれる素晴らしい利尻昆布に出合ったことだと言う。

「島物は頑丈で繊維質が硬く、見た目にも風格があって立派。厚みがあり、劣化に強く、保存条件が整った蔵で熟成させると、本来の味わいが引き出され本当に素晴らしいだしが取れます。お客様に喜んでいただくためにも、この蔵囲の伝統は復活させなければと思いましてね。今後も守っていきたいと思ってます」。

➡島物の詳しい話はこちら

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