上野修三の古典

【レシピ付き】上野流おせち料理、新年を寿ぐ祝いの肴3種

師走も後半になると、多くの和食店ではおせち料理の仕込みに入ります。コロナ禍で、その需要は益々増えており、各店趣向を凝らしておられることでしょう。
「おせち料理は、1年の感謝を込めて縁起のええものを詰めて、神様に供えるつもりで仕立てるもの」と上野修三さん。「三が日いただくわけやから、日持ちすることも条件やな」。今回は、定番のおせち料理とはひと味違う、上野流3品をご紹介します。めでたさのある祝いの肴は、「1月の前菜にも活躍しまっせ」。

上野修三(うえのしゅうぞう):昭和10年、大阪・河内長野に生まれる。ミナミでの修業時代を経て、1965年、『㐂川(きがわ)』を創業。なにわ伝統野菜を発掘するなど、大阪らしい料理を追求し、浪速割烹のカタチをつくる。60歳で開店した『天神坂上野』は伝説の割烹として名を馳せた。現在は、なにわの食文化を綴る随筆家としても活躍。近著に「浪速割烹㐂川のおいしい野菜図鑑」春夏編・秋冬編(共に西日本出版社)がある。

聞き書き:団田芳子 / 撮影:東谷幸一

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烏賊(イカ)巻唐墨の粕漬け——しっとり、ねっちりの一体感を醸す

カラスミは、ボラの卵巣を塩漬けにして、乾燥させたもの。二腹がくっついていることから夫婦円満、また、ぎっしり子が詰まっているから子宝に恵まれるとされる縁起物でもありますな。

高価なご馳走やし、彩りもよくて映えるから、そのままお重に盛り込んでもええけどネ。料理屋が仕立てるもんやから、ちょっとした工夫も必要でっしゃろ。それで40数年前に考えたのが、この酒肴だす。

モンゴイカは柔らかいから、薄切りにしてカラスミをくるっと巻いてネ。そのままでは芸がないし、保存性も考えて粕床に漬けてみたんだす。粕の風味が酒を呼ぶし、旨みに奥行きが出るというのかな。何より粕漬けにすることでカラスミもしっとりして、ねっとりしたイカと一体感が生まれますわな。

粕床には、白味噌と、その半量の田舎味噌を加えると、コクが増しまっせ。ガーゼやさらし、破れにくいキッチンペーパーをかませて漬けるから、1回で捨ててしまうのはもったいない。数の子やらマナガツオなんかを漬けるのに再利用しておくれやす。そうそう、古漬けのタクアンを縦4つくらいに切って漬けるってのも手。コレ、結構乙な粕漬けになりまっせ。

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