【栗レシピ8選】プロの料理人に教わる、ご飯・おかず・デザート
ほくほくとした食感と、滋味深い甘みが魅力の栗。栗ご飯や甘露煮、渋皮煮はもちろん、日本料理では、蒸す、焼く、揚げる、裏漉ししてあんにするなど、さまざまな調理法でその持ち味を引き出します。今回は、日本料理店の料理人に教わった栗レシピ8品をご紹介。もち米と合わせた飯蒸しから、甘鯛との蒸し物、栗味噌を使った肉料理、渋皮煮を生かした甘味まで。栗の甘みや香り、食感をどう料理に生かすのか、プロならではの工夫とともにお届けします。
栗の旬と「栗名月」
秋に旬を迎える栗は、日本の歳時とも深く結びついてきました。その一つが、旧暦9月13日の夜に月を愛でる「十三夜」。2026年は、10月23日にあたります。
十五夜が「芋名月」と呼ばれるのに対し、十三夜は、収穫期を迎えた栗を供えることから「栗名月」とも呼ばれます。日本料理でも栗は、秋の訪れを伝える大切な食材。ご飯や蜜煮だけでなく、八寸、蒸し物、焼き物、甘味など、献立のさまざまな場面に取り入れられてきました。
今回ご紹介する料理にも、栗を食材としておいしく仕立てるだけでなく、その色や形、香りによって季節を表す、日本料理ならではの工夫が見て取れます。
栗を使ったご飯レシピ
「調味だし」でもち米の味わいを引き立てる「丹波栗の飯蒸し」——京都『二條 みなみ』
撮影/竹中稔彦
栗ご飯とはひと味違う、もち米を使った「飯蒸し」。京都『二條 みなみ』の南 建吾さんは、大粒の丹波栗ともち米を別々に蒸し、提供する直前に合わせます。
栗は小さく切ってから蒸すと風味が抜けてしまうため、一粒大のまま約20分蒸し、薄塩をしてから切り分けます。一方、もち米は水ではなく、マグロ昆布だしに塩と薄口醤油を加えた「調味だし」に一晩浸してから蒸し上げます。途中で調味だしを回しかけることで、もち米に香りとほどよい塩味を重ねていきます。
仕上げは、提供する分だけ栗ともち米を合わせて、もう一度蒸し器へ。約3分温めることで栗の香りがもち米へふわりと移り、滋味深い秋の一品となります。
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栗を使ったおかず・料理レシピ
栗尽くしで仕立てる「栗いが揚げ」——『さか本』坂本靖彦さん
撮影/福本 旭
いが栗に見立てた秋らしい揚げ物「いが栗揚げ」。一般的には真薯地などに素麺をまとわせて“いが”を表現しますが、『さか本』元大将・坂本靖彦さんは、栗尽くしで仕立てます。
団子に使うのは、塩蒸しにした栗と甘露煮。塩蒸しの栗が持つほくほくとした食感と素朴な味わいに、甘露煮のしっとりとした甘みを重ねます。甘露煮の蜜がつなぎになるため、余計な材料を加える必要もありません。
表面には、生栗を細く針打ちにしてびっしりと。160℃の油で揚げれば、外側は栗せんべいのようにパリパリと香ばしく、中はほっくり、しっとり。「蒸す」「煮る」「揚げる」という3つの加熱法によって、一口の中に異なる栗の表情が現れます。
皮をむく途中で割れた栗を団子に活用できるのも、この料理の知恵。栗を余すことなく味わう一品です。
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直火の香ばしさを重ねる「焼き栗と銀杏の蜜煮」——京都『瓢亭』
撮影/内藤貞保
栗料理の定番の一つである蜜煮。『瓢亭』15代当主・髙橋義弘さんは、栗を茹でるのではなく、鬼皮付きのまま直火で焼いてから蒸し、蜜煮に仕立てます。
焼く目的は、香ばしさをまとわせること。栗の座を少し切り落とし、鬼皮が真っ黒になるまで強火で焼き、渋皮の跡をあえてところどころ残します。
もう一つのポイントが「酒蜜」。一般的な水と砂糖の蜜ではなく、煮切った酒に砂糖を溶かしたものを使います。同じ酒蜜で何度も栗を煮るうちに飴色になり、栗の風味とコクを蓄えた「栗蜜」に。焼き栗の香ばしさと、栗蜜のふくよかな甘みが重なり、出来立てならではのおいしさを感じられます。
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割れ栗も渋皮も生かせる「栗あんと栗塩の牛肉炭火焼き」——京都『瓢亭』
撮影/内藤貞保
栗をむけば、形が崩れるものもあれば、渋皮も残ります。それらを捨てず、一つの料理へと生かすのが、『瓢亭』の「栗あん」と「栗塩」です。
栗あんには、形の不揃いな栗を活用。茹でて裏漉しし、八方だしや酒、塩とともに煉り上げます。栗を茹でる水をひたひたに留め、栗の味を水へ逃がしすぎないのがポイント。さらに、上記の「蜜煮」に使った「栗蜜」を加えることで、濃厚さとコクを補います。
一方の栗塩は、捨ててしまいがちな渋皮を活用。油でカリカリになるまで揚げ、細かくすって塩と合わせます。ほろ苦さと燻したような香りが、脂のある牛肉の旨みを引き締め、まったりとした栗あんのアクセントに。
栗あんは焼き魚に、栗塩はジビエなどにも。栗を主役として見せるだけでなく、料理を引き立てる“調味料”として使う発想が光ります。
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栗をウロコに見立てた「甘鯛丹波蒸」——『さか本』坂本靖彦さん
撮影/福本 旭
丹波揚げや丹波蒸しなど、料理名に「丹波」を冠した料理には、丹波の名産である栗が使われます。
坂本靖彦さんの「甘鯛丹波蒸」は、脂ののった甘鯛と、ほんのり甘い栗を合わせた蒸し物。目を引くのは、薄くスライスした栗を甘鯛のウロコのように重ねる仕立てです。
甘鯛は塩をして身を締め、7割ほど下蒸し。そこへメレンゲを塗り、生栗のスライスを一枚ずつ重ねて、さらに強火で約5分蒸します。栗に火が入る頃には、甘鯛もしっとりとした仕上がりに。
仕上げにかけるのは、葛を引かないさらりとした美味だし。全体を品よくまとめます。
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栗味噌、蜜煮、蒸し栗を一皿に盛った「牛肉の栗味噌炭火焼 栗三種仕立て」——東京『和氣 旬』
撮影/大山裕平
焼き栗を使った栗味噌、栗の蜜煮、そして蒸し栗。東京『和氣 旬』宮原 瞬さんは、3つの仕立てで栗の持ち味を重ね、牛肉の炭火焼きに秋の趣を添えます。
栗味噌は、殻付きの栗を炭火で焼いて香ばしさを加えます。鬼皮と渋皮をむいたら、だしとみりんで炊き、あえて粒感を残してペーストに。白味噌を合わせ、牛肉に塗りながら炭火で焼き上げると、白味噌の発酵香と栗の香ばしさが重なり、牛肉の味わいに奥行きが生まれます。
そこに栗の蜜煮を添え、仕上げには蒸し栗をたっぷりとすりおろして。さまざまな調理法を取り入れることで一つの素材から異なる香り、甘み、食感を引き出した“栗三種仕立て”です。
▶「牛肉の栗味噌炭火焼 栗三種仕立て」の詳しいレシピはこちら
栗を使ったデザート・甘味レシピ
薄口醤油が隠し味の「和栗のかき氷」——東京『くろぎ』
撮影/公文美和
秋の和栗を、モンブランを思わせるかき氷に。東京『くろぎ』黒木 純さんは、蒸して裏漉しした和栗をたっぷり使い、濃厚でありながら軽やかな甘味に仕立てます。
和栗クリームは、和栗のペーストに豆乳、練乳、生クリーム、黒蜜を合わせてなめらかに。さらに薄口醤油を少量加えるのが『くろぎ』流です。醤油の塩味を利かせるのではなく、コクとほのかな和の香りを加えることで、栗の甘みを引き立てます。
氷の中には小豆、和栗クリーム、練乳を忍ばせ、さらに氷を重ねて、和栗クリームと渋皮煮を。食べ進めるにつれて味が重なり合い、最後には一つのデザートとしてまとまる構成です。
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実、葉、枝まで味わう「能勢栗のお汁粉」——大阪『能勢 日本料理 新』
撮影/東谷幸一
栗の実だけでなく、葉も枝も一皿に。大阪『能勢 日本料理 新』中井 建さんが仕立てるのは、能勢の里山の恵みを映した栗の甘味です。
主役となるお汁粉には、能勢栗の渋皮煮を使用。重曹を使って丁寧にアクを抜き、三温糖と黒糖を使ったシロップで少しずつ甘みを含ませます。甘さはあくまで控えめに。仕上げの濃口醤油がほのかな香ばしさを加え、栗本来の素朴な甘みを際立たせます。
合わせるジェラートには、栗の枝と桜チップで燻した牛乳と生クリームを。さらに、栗の葉を蒸して乾燥させ、焙煎して煮出した「栗の葉茶」をゼリーに仕立てます。
温かい栗のお汁粉に冷たいジェラート、つるりとしたゼリー。温度や食感のコントラストとともに、実、葉、枝、それぞれが持つ栗の香りを味わいます。
▶「能勢栗のお汁粉」の詳しいレシピはこちら
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