ともあれ、テイスティングを始めてみましょう！

これまで多くの方を指導してきた中で感じることは、半年間、どれだけ頑張っても二次試験当日までに「ワインがわかるようになった」と実感するのは難しいということです。ワインは、それほど簡単に理解できるものではありません。

技術というものは一朝一夕で習得できるものではなく、ある程度、慣れと時間が必要です。修練を続けるうちに、自分の中で自然と整理され理解が深まり、自分のものになっていくという経験を皆さんもお持ちではないでしょうか。
ワインのテイスティングも同様です。数回試しただけで、すぐにそのブドウ品種の特徴が理解できるなんてことはなく、うまくとらえられず、悩む時期を乗り越えた頃になってようやく、なんとなく感じ取れるようになってくるもの。どうしても時間がかかるのです。

また、早い段階から多少なりともワインをテイスティングしてきた方は、二次試験直前で大きく実力を伸ばすことが多いと感じます。
そのため、一次試験対策と並行して、テイスティング対策にも早めに取り組むことをおすすめします。

とはいえ、「どのワインを選ぶべきか」「どのようにテイスティングすればよいのか」がわからない、という方もいらっしゃるでしょう。
そこで今回は、「どのワイン（ブドウ品種）を選べばよいのか」ということについてお伝えします。

出題されたワインから考える、対策すべきブドウ品種-白ワイン-

二次試験対策として、ワインをどのレベルまで理解する必要があるのかを知り、意識しつつテイスティング対策を行うことがとても大切です。ソムリエ試験にかかわらず、相手を知らず戦いに挑むことほど無謀なことはありません。

前回、二次試験のテイスティング対策として、重要な二つのポイントをお伝えしました。

1.ワインのタイプわけ
2.ワインの各コメント（解答）を「用語選択用紙」から選択できるようになること

二次試験のテイスティングはとにかく、この二点に尽きます。ブドウ品種を当てることに注目が集まりますが、ブドウ品種と各コメントの配点にそれほど大きな違いはありません。とはいえ、ブドウ品種を全く意識せずにテイスティングを行うことも適切ではありません。

そして、まず最初に目指すべきところは「1. ワインのタイプわけ」です。目の前にあるワインがどのタイプに分類されるのかを判別できるようになるために意識しつつテイスティングを重ねる必要があります。
「2. ワインの各コメント（解答）を『用語選択用紙』から選択できるようになること」については、ワインのタイプわけがある程度理解できるようになった一次試験終了後から始めても十分に間に合います。

ということで、これまで出題されたワイン（ブドウ品種）について簡単に振り返りながら、この半年間、テイスティング対策として意識すべきブドウ品種についてお伝えします。

2024年の白ワインの出題アイテムは以下の通りです。
・ソムリエ呼称
「リースリング」 ドイツ 2021年
「ソーヴィニヨン・ブラン」 フランス 2022年
・エキスパート呼称
「ミュスカデ」 フランス 2021年
「シャルドネ」 日本 2023年

この並びを見ると、「ミュスカデ」が少々難く思えますが、「リースリング」「ソーヴィニヨン・ブラン」「シャルドネ」の３品種はソムリエ試験的に王道中の王道です。この３品種のみに絞ってテイスティング対策を進めても全く問題ありません。実際、この３品種のいずれかは毎年必ず出題されています。

こちらに準主要品種として日本の「甲州」を加えるだけで白ワイン（白ブドウ）は十分に対応可能です。

近年では、フランス・北ローヌの「ヴィオニエ」やアルゼンチンを代表する白ブドウ「トロンテス」、ブルゴーニュの「アリゴテ」なども出題されておりますが、これらを追いかける必要はありません。出題されるかどうかわからないソムリエ試験的にマイナー品種にまで手を広げる時間や余裕はないはずで、試験対策としては無駄な努力と言えます。何度もお伝えしているように、「ブドウ品種を当てる」ことが目的ではないからです。

ここで、白ワインのタイプわけについて簡単にふれておきます。

白ワインは下記のように分類し、それぞれに対応する主要ブドウ品種を挙げます。

①「白い花や桃のような甘い香り」の華やかタイプ→「リースリング」
②「スッキリ、爽やか柑橘類の香り」の溌剌タイプ→「ソーヴィニヨン・ブラン」
③「樽のニュアンス」のまろやかタイプ→「シャルドネ」
④「全てが控えめで穏やか」なタイプ→「甲州（日本）」
※この分類はあくまでソムリエ試験合格のための考え方であり、一般的なワインテイスティングとは異なる点にご注意ください。

例えば、上記の「ミュスカデ」は「甲州」に近いタイプで、香りや味わい全てが控えめで、特徴的な何かをとらえづらい品種です。このため、甲州をイメージしながらテイスティングコメントを選ぶことで、ブドウ品種を間違えたとしても80～90％程度正解することができます。
また、「アリゴテ」は「スッキリ、爽やか柑橘類の香り」の溌剌タイプの「ソーヴィニヨン・ブラン」をイメージしつつ解答すれば、同様に合格ラインを超えることができます。このアリゴテはソムリエ試験的にかなり難問で、ブドウ品種の正解率は、あくまで想像ですが、数パーセントにも満たなかったのではと私は思っております。

ということで、この４品種の生産国（甲州は日本のみ）や生産者の異なるワインを繰り返しテイスティングし感覚を養ってください。

出題されたワインから考える、対策すべきブドウ品種-赤ワイン-

2024年の赤ワインの出題アイテムは以下の通りです。
・ソムリエ呼称
「シラー/シラーズ」 オーストラリア 2021年　
・エキスパート呼称
「カベルネ・ソーヴィニヨン」 アメリカ 2021年
「サンジョヴェーゼ」 イタリア 2020年

赤ワインの王道品種は上記の「シラー/シラーズ」「カベルネ・ソーヴィニヨン」と、「ピノ・ノワール」です。ブドウ品種の違いなんて全くわからないという方は、最初はこの3品種を集中的にテイスティングしましょう。

この3品種は、外観と香りにおいて比較的わかりやすい違いがあります。
「ピノ・ノワール」は、どちらかと言えば淡い色調と赤い果実の香りが、一方、「シラー/シラーズ」と「カベルネ・ソーヴィニヨン」は、濃い色調と黒い果実の香りが特徴です。
まずは、この違いをしっかり感じ取ることから始めてください。

そして、次のステップとしてイタリアの主要ブドウ品種「サンジョヴェーゼ」と「ネッビオーロ」を加えます。これらのイタリアのブドウは上記の３品種とは方向性が異なり、土着品種ならではの独特の香りと味わいを持ちます。

ということで、赤ワイン（黒ブドウ）は下記の３タイプ5品種を意識します。

① 淡い色調で「赤い果実味」が主体の華やかなタイプ→「ピノ・ノワール」
② 濃い色調で「黒い果実味」が主体の複雑でしっかりとしたタイプ→「シラー/シラーズ」「カベルネ・ソーヴィニヨン」
③ 外観でちょっと違和感…そして、果実味が前面に出ていない、少し土っぽい「熟成」タイプ→「サンジョヴェーゼ」「ネッビオーロ」

この3つ目の熟成タイプは後回しにしても問題ありません。外観で違和感というのは、淡すぎず、濃すぎず、さらに、若々しさが感じられないことが多いという意味です。私は試験中の考え方として、①でも②でもない時に③を疑うという流れが無駄に悩まずに乗り切るコツだと思っております。

この３タイプの違いをとらえることができれば十分、その後、ブドウ品種までたどり着けば最高！というイメージでテイスティング対策を進めてください。

購入すべきワインの価格

最初は1000円代の安いワインでテイスティングを始めてもよいのですが、徐々に3000～5000円くらいで販売されているワインを選ぶようにしてください。安いワインはブドウ品種の特徴がとらえづらく、また、試験に出題されるワインも概ね3000～5000円程度のものが選ばれているからです。

料理人の皆さんであれば、日頃から付き合いのある酒屋があると思います。その酒屋にソムリエ資格を持つスタッフがいる可能性も高いため、ワインの購入について相談してみるのも良いでしょう。
さらに、酒屋によっては、希望の価格帯やブドウ品種、必要な本数を伝えると、ワインを包装して目隠し状態でテイスティングできるように対応してくれることもあります。

なお、ワインをテイスティングする際は、必ず同じ色のワインを3〜4種類並べて「違い」を感じ取ることが大切です。そして、それぞれのワインに対する感想を記録することで、より深い理解につながります。この点については、次回詳しくお伝えします。

▼料理人のためのソムリエ試験対策 他の回はコチラから

Vol.1 概要編
Vol.2 一次試験対策前にすべきこと
Vol.3 一次試験対策の準備と春先までの勉強法
Vol.4 一次試験対策、教本と過去問を利用した勉強法
Vol.5 二次試験対策の準備
Vol.7 テイスティングして書き留める
Vol.8 ワインの酸とアルコール
Vol.9 主要白ブドウ品種の特徴
Vol.10 主要黒ブドウ品種の特徴 その1
Vol.11 主要黒ブドウ品種の特徴 その2